ファンダム構築・成長をドライブさせる鍵は「OMO」と「SNS」
ファンダムの構築を目指す上で欠かせない要素として、安原氏は「OMO」と「SNS」を掲げた。フューチャーショップでは、実店舗とECサイトのポイント共通化、会員データ統合を実現できるソリューション「futureshop omni-channel」を提供。2025年9月時点で136ブランド、店舗数にして2,376店舗が同ソリューションを活用し、OMOの推進に取り組んでいるという。
「コロナ禍で導入ブランド数が約130%増加しました。興味深いのが、導入ブランドのカテゴリーの変化です。2019年度はアパレルが8割以上を占めていましたが、2024年度は食品・スイーツや、ペットショップ(その他に含む)など、これまで実店舗を中心にビジネスをされていたお客様からのご相談・導入が増えてきました。これには消費者行動の変化もあると考えています」
トランスコスモスが発表した「オムニチャネル利用実態調査2024」によると、今やスマートフォン利用率は全世代で80%超、70代のSNS利用率も約60%となっており、今や全世代でデジタルでの接点が重要である様子がうかがえる。ここで鍵となるのが、「来店顧客とデジタルでつながるきっかけをどう作るか」だ。
「ECサイトのお客様とは、購入時の会員登録でデジタル接点を作りやすいですが、実店舗に来店されたお客様には『デジタルでつながるための仕組みと施策』が必要です。仕組みがなければ、せっかく来店してできたつながりが絶たれ、機会損失が起きてしまいます」
自社EC売上高が前期比176.1%に バッグ専門店「SAC’S BAR」の改善施策
ここで安原氏は、futureshop omni-channelを活用してOMO改革を実現した株式会社東京デリカの事例を紹介。同社はバッグの専門店「SAC’S BAR」をはじめとする複数のブランドを全国600店舗以上に展開しており、ECサイトも並行運用していたが、「顧客情報や購買体験の分断」という悩みを抱えていた。
「お客様がECサイトで商品を見て実物を確認したいと思っても、実店舗の在庫状況がわからない。実店舗とECサイトの販売施策が連動しておらず、お客様から見たら同じ『SAC’S BAR』というブランドであるにもかかわらず、体験に一貫性がない。東京デリカ様はこうした点を課題とされていました」
そこで同社は、futureshop omni-channelを使って自社ECを起点とした会員情報とポイントプログラムの統合を実施。フューチャーショップは、「会員情報・ポイントの統合」「店頭在庫表示と店舗受け取り(BOPIS)」「リアル店舗EC」といった三つの主要施策を支援し、自社ECサイトの売上高を前期比176.1%に引き上げることに成功した。
「EC成長率が全体的に鈍化する中での前期比176.1%は、脅威的な結果だといえるでしょう。背景としては、単に会員情報とポイントプログラムの統合をするだけでなく、在庫統合による実店舗とECサイトの情報連携やスマートフォンアプリの構築など、お客様がデジタルを起点に自発的にブランドとつながれる仕組みを整えたことにあります。こうした取り組みこそが、この事例の大きなポイントです」

