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ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

ECzine Day 2025 October レポート(AD)

[事例あり]ファンダムがブランドを救う EC成長鈍化から脱却するため今見直すべきOMO・SNS戦略

 EC市場は今「成熟期」といえるタイミングに差し掛かっている。これは、物販系BtoC-EC市場規模の増加率が前年比3.7%(経済産業省調べ)と、近年に比べて鈍化している点からも明らかだ。こうした成長過程で生まれる「壁」とどう向き合うべきか、2025年10月9日開催の「ECzine Day 2025 October」で株式会社フューチャーショップ 取締役 マーケティング部 ゼネラルマネージャーの安原貴之氏がアクションのヒントを提示した。本稿では「ファン」「オムニチャネル・OMO推進」といったキーワードとともに、セッションの様子をレポートする。

価格競争に巻き込まれないブランド構築 “ファン”を作る三つのポイントを整理

 コロナ禍に急速に拡大した日本のEC市場。この時期に新規でECサイトを立ち上げた人も、読者の中にはいるのではないだろうか。そこから早数年が経ち、市場は「成長期」から「成熟期」へと移り変わった。行動制限があった数年間の反動で、今やブランドやECサイトの“競合”は物販事業者ではなく、「コト消費」を扱う事業者にまで広がっている。

消費者の財布を取り合う相手が競合他社だけではない点を自覚しなければならない。そういった状況だと私は考えています。そんな環境下で、最も安易ですが危険な選択肢が『価格競争』に巻き込まれることです。価格を下げる施策自体は容易ですが、それはブランド毀損と収益性の悪化を自ら招くことになります」

株式会社フューチャーショップ 取締役 マーケティング部 ゼネラルマネージャー 安原貴之氏
株式会社フューチャーショップ 取締役 マーケティング部 ゼネラルマネージャー 安原貴之氏

 この負のスパイラルに入りこまないよう、安原氏が提案するのは「“ファン”を基盤としたビジネスモデルを構築すること」だという。フューチャーショップでは「ECにおけるファン」の定義を次のように説明している。

「ECにおけるファン」の定義
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「まず当てはまるのは、高い顧客生涯価値(LTV)をもつユーザーです。単発もしくは特定の商品のみの購入ではなく、長期間にわたって継続的に商品購入をしていただけているか。新商品にも関心をもっていただけているか。これらに当てはまるユーザーは、ブランドの安定した収益基盤となる貴重な存在です」

 第二の定義として挙げられたのは「ブランド・アドボカシー(推奨)を自発的に行うユーザー」だ。安原氏は「これは非常に強いマーケティングとなる」と強調する。

「今の時代は、ブランド側から発信する情報よりも、購入者が自ら語る体験談のほうが信頼性が高く、質の高い新規顧客獲得にもつながりやすいです。実際に、皆様もレビューの収集など取り組まれているのではないでしょうか」

 そして第三の定義は「コミュニティへの参加」である。ファン度が高まれば、ブランドが企画するライブ配信やイベントなどの催し物にもポジティブな反応を示し、主体的に参加したり他の顧客とコミュニケーションを図ったりといった連鎖反応が生まれる。これはブランドへの帰属意識を強固なものにするだけでなく、「商品企画やサービス改善といった、成長につながるフィードバックを得る場としても機能する」と安原氏は補足する。

 こうした熱狂的なファンがコミュニティ化し、経済活動の中心となるシステムは既に「ファンダムエコノミー」と名付けられている。この経済圏に所属する“ファン”は、商品の価値を価格だけで捉えず、ブランドがもつ世界観やそこから紡がれるストーリーへの共感、自身が商品やサービスを使うことで得られる体験などトータルで評価、選別する。

「企業からすれば収益性の維持、売上成長、ブランド価値向上のすべてを実現できるため、今後“熱狂的なファン”をどれだけ増やしていけるかは、非常に重要な課題になると考えています」

ファンダム構築・成長をドライブさせる鍵は「OMO」と「SNS」

 ファンダムの構築を目指す上で欠かせない要素として、安原氏は「OMO」と「SNS」を掲げた。フューチャーショップでは、実店舗とECサイトのポイント共通化、会員データ統合を実現できるソリューション「futureshop omni-channel」を提供。2025年9月時点で136ブランド、店舗数にして2,376店舗が同ソリューションを活用し、OMOの推進に取り組んでいるという。

「コロナ禍で導入ブランド数が約130%増加しました。興味深いのが、導入ブランドのカテゴリーの変化です。2019年度はアパレルが8割以上を占めていましたが、2024年度は食品・スイーツや、ペットショップ(その他に含む)など、これまで実店舗を中心にビジネスをされていたお客様からのご相談・導入が増えてきました。これには消費者行動の変化もあると考えています」

オムニチャネル・OMOに取り組む企業の増加
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 トランスコスモスが発表した「オムニチャネル利用実態調査2024」によると、今やスマートフォン利用率は全世代で80%超、70代のSNS利用率も約60%となっており、今や全世代でデジタルでの接点が重要である様子がうかがえる。ここで鍵となるのが、「来店顧客とデジタルでつながるきっかけをどう作るか」だ。

「ECサイトのお客様とは、購入時の会員登録でデジタル接点を作りやすいですが、実店舗に来店されたお客様には『デジタルでつながるための仕組みと施策』が必要です。仕組みがなければ、せっかく来店してできたつながりが絶たれ、機会損失が起きてしまいます」

自社EC売上高が前期比176.1%に バッグ専門店「SAC’S BAR」の改善施策

 ここで安原氏は、futureshop omni-channelを活用してOMO改革を実現した株式会社東京デリカの事例を紹介。同社はバッグの専門店「SAC’S BAR」をはじめとする複数のブランドを全国600店舗以上に展開しており、ECサイトも並行運用していたが、「顧客情報や購買体験の分断」という悩みを抱えていた。

「お客様がECサイトで商品を見て実物を確認したいと思っても、実店舗の在庫状況がわからない。実店舗とECサイトの販売施策が連動しておらず、お客様から見たら同じ『SAC’S BAR』というブランドであるにもかかわらず、体験に一貫性がない。東京デリカ様はこうした点を課題とされていました」

 そこで同社は、futureshop omni-channelを使って自社ECを起点とした会員情報とポイントプログラムの統合を実施。フューチャーショップは、「会員情報・ポイントの統合」「店頭在庫表示と店舗受け取り(BOPIS)」「リアル店舗EC」といった三つの主要施策を支援し、自社ECサイトの売上高を前期比176.1%に引き上げることに成功した。

東京デリカのOMO改革
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「EC成長率が全体的に鈍化する中での前期比176.1%は、脅威的な結果だといえるでしょう。背景としては、単に会員情報とポイントプログラムの統合をするだけでなく、在庫統合による実店舗とECサイトの情報連携やスマートフォンアプリの構築など、お客様がデジタルを起点に自発的にブランドとつながれる仕組みを整えたことにあります。こうした取り組みこそが、この事例の大きなポイントです」

顔出しなしでも数万円の手帳が売れるライブコマース アシュフォードの“愛され施策”とは

 ECにおけるファンの定義の三つ目に挙げられた「コミュニティへの参加」。顧客に自然な形でファンダムへの参画を促しつつ、売上にもつなげられる施策として特に有効なのが、ソーシャルコマースだ。安原氏はInstagramライブおよび、フューチャーショップが提供する専用ライブコマースプラットフォーム「Live cottage」を活用して対話型販売とファンコミュニティ形成に取り組む株式会社アシュフォードの事例を紹介した。

「同社が展開するシステム手帳はカテゴリー特性上、昔から多くの熱狂的なファンが存在しています。その状況と同社が蓄積してきた専門知識を生かし、インタラクティブなコミュニケーションを行っているのがこの事例の大きな特徴です」

アシュフォードの対話型販売
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 「ライブ配信=顔出し」のイメージが強いかもしれないが、同社は商品にクローズアップするためあえて顔出しをせず、声と手のみの出演で配信を展開している。「ファンだからこそこだわるポイント」を熟知したスタッフが、コメントに答えながら革の手触りやリングの開閉音、リフィルをめくる際の紙の質感といった五感に訴えかける情報を提供。開発秘話など「ここだけの話」も盛り込みながら丁寧な交流を図ることで、強いつながりと売上の創出につなげている。

「アシュフォード様の配信で特徴的なのは、コメントが『企業とお客様の質疑応答の場』ではなく、『ファンも含めた意見交換の場』になっている点です。

 たとえば、配信中に購入検討者が『この製品が気になっている』とコメントをしたら、実際に商品を愛用しているファンが『この手帳は非常に使い勝手が良かった』『自分は今○年使っていますが、味が出てきて経年変化も楽しめますよ』といったリアルな感想を投稿してくれます。同社のシステム手帳は数万円と、ライブコマースで販売するには高価格帯の商品ですが、こういった“熱量ある推奨”が新規顧客の後押しとなり、購入につながっているのです。ファンコミュニティの作り方が非常に上手な事例として、ぜひ参考にしていただければと思います」

ブランドの未来を左右する「デジタルコマーススキル」はどうやって身につく?

 安原氏は、東京デリカとアシュフォードの共通点として「デジタルコマーススキルの高さ」を挙げた。これは、フューチャーショップが支援する他の成功事例を見ても共通する項目で「ツールを導入する」だけではなく「使いこなす力」のことを指すそうだ。

「ECサイト運営で成果を出すには、サイトのUI/UX改善や施策実施、結果のデータ分析、改善計画の立案といった、地道なPDCAサイクルを日々回し続ける必要があります。ビジネスの成長スピードを加速させるため、ところどころ専門家からアドバイスをもらったり、外部委託したりといったケースもあると思いますが、丸投げしてしまうとデジタルコマーススキルは身につきません。一連のプロセスを社内で回す“自走体制”の確立こそが、今の組織に求められることだといえます。フューチャーショップでは、仕組みからこうした自走を支援しています」

futureshopは「自走」を支援します
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 たとえば、futureshopシリーズに導入されているレイアウトエンジン「commerce creator」は、ページの構成要素一つひとつを「パーツ」として扱い、ノーコード・ローコードでのサイト改善を実現している。この他にも、フロントオフィス・バックオフィス問わずEC運営に必要な機能を網羅(連携サービス含む)する拡張性の高さや、ワンクリックで分析を実現する「reports機能」の搭載、年間316回開催されるラーニング・プログラムなど、あらゆる角度からEC担当者が自ら組織やサイト運営をけん引できる仕組み作りに貢献。EC立ち上げ・リニューアルから運用フェーズの隅々まで支援する様子をアピールし、安原氏は最後にこう締めくくった。

「ラーニング・プログラムでは、P-MAXやTikTok活用など、トレンドも取り入れた知識習得の機会を提供しています。フューチャーショップでは、EC構築だけでなく周辺領域のサポートまで含めて有益なサービスを提供しておりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせいただけますと幸いです」

futureshop導入検討中の方へ Webミーティングから気軽に相談してみませんか?

 フューチャーショップでは、導入検討事業者や導入提案予定の制作会社を対象に、自社ECの悩み・課題・提案内容を踏まえた相談実施の場「Webミーティング」を設けています。経験豊富なプランナーがデモや事例を交えながら説明しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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提供:株式会社フューチャーショップ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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