今はビジネスの分岐点 既存業務のエージェントフロー化が成否を分ける
藤原 「どのチャネルでどう売ったら勝てるのか」という問いに対する答えは、やはり「自社理解を深めましょう」とお伝えしたいですね。上手に狙いを定められたところが最終的な結果にもつながります。
師橋 とはいえ、新たなビジネスモデルや商材が誕生したと思ったら、すぐに各社が追随してくるので、事業者にとっては大変な時代ですよね。アメリカほどD2Cが発展しないのは、日本人の「安心をお金で買う」風潮によるところもあると思います。新たなカテゴリーを開拓しても、大手が参入した瞬間にシェアが逆転してしまう……これも市場の原理原則ではありますが、もどかしいなと思う部分もあります。
藤原 R6Bでは大手のShopify構築案件も増えていますか?
師橋 直近は特に増えていますね。日本でも大企業がShopifyを採択する事例が増えているので、今後もこの流れは続くと見ています。
ただ、TSIの事例のように事業の屋台骨となる部分にShopifyを採用するケースはまだ少ないです。アメリカでは既に、実店舗を数百店展開するような上場企業でShopifyを使っている事例がたくさんあります。日本とは基幹システムに求める役割が異なるため、移行の難易度の違いはもちろんあるのですが、アメリカはITマッチョな印象ですね。日本は1990年代に人事、会計まで包括した基幹システムを構築している企業が多いので身動きが取りづらく、結果的に新しい企業のほうが有利になりつつあります。

藤原 システム相関図があれば、既存システムとShopifyの切り分けポイントが見つけられますが、それすらない企業もありますからね。
師橋 慣れているシステムから抜本的に仕組みを変えるのは、社員の心理的負担も多いため、組織として判断が難しい部分もあるのだと思います。ただ、いずれもいつかはやらないといけないことです。なので、僕らは冷めたスパゲッティが絡み合ったような要件を一つひとつ紐解いて、新しいものに置き換えていく作業をお手伝いしています。
藤原 日本の今の経営スタイルだと、Shopifyのエンタープライズ事例がより表に出てこないと「得体の知れないもの」からの脱却は難しいかもしれませんね。案件の規模が大きいと年単位での開発になるので、本当は早めに動いて知識を蓄えたほうが良いのですが。
師橋 そうですね。
藤原 あと、僕はAIを取り入れることを前提とした設計を今すぐにでも始めないといけないと思うんです。今から準備しても、2030年のあるべき姿には間に合わないぐらいだと考えています。
従来は「歴史が長い企業のほうが先行者利益を得やすい」といわれていましたが、これだけテクノロジーの進化が速いと、収集したデータの量でしか差がつかないなと思うんです。しかも、刈り取り型の広告施策に終始していたら単なる属性情報しか集まらない。これだと他社と差別化できるデータにはなりませんし、後発で顧客一人ひとりと関係を築くブランドが出てきたら、あっという間に逆転されてしまいます。意味のあるデータを集めて活用するためにも早急にチャレンジすべきだと思うのですが、師橋さんのお考えはどうですか?
師橋 ECとAIの相性はとても良いので、できるものから一刻でも早くAI搭載のものに置き換えることをおすすめしたいですね。サーチ、レコメンド、CRM、アナリティクスあたりが着手しやすいと思います。SKUや売上規模が大きいブランドほど、結果にもつなげやすいです。
あと、これまでの日本の働き方は「システムを自社のフローに合わせる」「人海戦術でなんとかする」といった思考が主だったように感じるのですが、AIと協働するこれからの時代はエージェントフローに合わせにいくべきだと思います。ShopifyやCRMツールのKlaviyoは完全にその発想で、型を決めてフローを作ればその業務についてはほぼ自動化が可能です。そうすると、極論一人でもEC運営ができるようになるんですよ。
AIエージェントが台頭する初期に、いかにこうしたビジネスの組み立て方に適応できるかが今後数年の大きな分岐点になるなと思います。このチャンスを生かせれば、後発でも中小のマーチャントでも市場をひっくり返せるので、そういった意味では夢のある時代だと捉えています。
藤原 日頃の仕事からAIファーストにしていくことは、とても大事ですね。
