インフルエンサー起用は“情報の連鎖反応”も意識した設計を
SNSから新たなコマースの潮流も生まれる今、フルチャネル×フルファネルで施策を展開するには、SNSで発信力や影響力をもつクリエイターの活用も欠かせない。田中氏はファネルごとに適切な仕掛けを施す上で「彼らを次の三つのタイプに分けて捉えるべき」だと語った。
- エンターテイナー:バズるコンテンツを制作・発信できる影響力のある人
- インフルエンサー:ブランド・商品のペルソナ(ターゲット層)と合致し、消費者にもクリエイターにも参考になる情報を発信できる人
- アフィリエイター:消費者に最も近い存在として、購買の決め手になりやすい情報を提供してくれる人
「アプローチできるファネルや消費者層が異なるクリエイターをどこにアサインするかは、非常に重要です。各ファネルで適切なクリエイターをアサインできれば、情報の連鎖反応にも期待ができます。
重要なのは、単にクリエイターを活用するだけでなく、カスタマージャーニーを意識したブランドコミュニケーションの設計です。たとえば、インフルエンサーにTikTokやInstagramで取り上げてもらい、認知を獲得したところで興味をもった消費者が見た比較メディアに商品情報が掲載されているか。後日、同一カテゴリーの商品をAmazonで購入しようと思った際に検索一覧のトップに出てきて、存在を思い出して購入に至るといった導線が描けているかといったように、あらゆるパターンを想定した施策展開が欠かせません」(田中氏)
セール時に売上最大10倍の事例も AMCが後押しするフルチャネル×フルファネル戦略
Amazonの売上アップに欠かせないブランドキーワードの検索ボリューム増。そのゴールにたどり着くには、Amazonのアルゴリズムを踏まえつつ、特定のチャネルに固執しない幅広いアプローチが必要だとここまでの説明で理解できただろう。その上で、田中氏はAmazonを起点に売上創出とデータ収集を行う意義を次のように説明する。
「Amazonはもはや、ただの“売り場”ではありません。購買の決定打となるカスタマーレビューや動画配信プラットフォーム『Prime Video』を有するメディアであり、近年は『Amazon Marketing Cloud(AMC)』を核とする統合データプラットフォームに進化しています。そして、あらゆる小売のデータを統合して分析できるAMCは、フルチャネル×フルファネル戦略を描く上で大いに役立ちます」(田中氏)
ここで、GROOVEが支援したあるスキンケア・ヘアケア商材の事例が紹介された。同ブランドはAMCを用いた分析により、AmazonDSP広告経由購入の既存顧客率が高いことが発覚。いわゆる“もったいない出費”であることが明らかになり、外部施策を含めた広告予算の再配分を行った結果、Amazon Prime Day、ブラックフライデーといった大型セール時の売上が最大で10倍にも跳ね上がったという。
「AMCオーディエンスを活用すれば、Amazonに限らず自社のもつシグナルと紐づけたカスタムオーディエンスの作成やクロスチャネル分析も可能です。感覚的にではなく、データに基づいたユーザー行動の可視化と把握ができますので、ぜひこの究極のAIを突破口として活用してみてはいかがでしょうか。
私は著書『【超完全版】Amazonビジネス大全 「ゼロ」から年商1億円の最短ルート』(KADOKAWA)やYouTube『たなけんのEC大学』でも情報発信をしています。Amazon研究をさらに深めたいという方は、ぜひご活用ください」(田中氏)

