“店舗受取”をロイヤルカスタマー増のフックに 売上・利益はすべて店舗に紐づく
巨大な店舗網をもつ企業がEC展開を進める際、実店舗との対立構造に陥らないかどうかは大きな懸念点としてよく語られる。ファミリーマートは、ファミマオンラインの売上すべてが店舗の売上・利益になる仕組みを構築。ユーザーが店舗受取・指定先配送どちらを選んでも登録しているお買い物店舗の売上として計上されるため、店舗スタッフも前向きにファミマオンラインの利用促進に向けた告知・宣伝を行ってくれる環境が作れているそうだ。
「全国約1万6,400店舗にいる約20万人のスタッフに、ファミマオンラインの利用につなげるエンジンになってもらえることは非常に心強いです。今後も、そのパワーを新たなビジネスの原動力としていけたらと思います」
ファミマオンラインのローンチに向けては、「既存のインフラやスキームとの連携を意識して環境整備を進めてきた」と振り返る近藤氏。丁寧な施策実施により、開設初年度にして数々の成果や発見を得られているという。
「ファミマオンラインのサービス開始後、同サイトの利用をきっかけに約20万人のファミペイ会員が増えました。これは全体の約11%を占める割合で、既にファミマオンラインも会員獲得の入口として機能していると捉えています。
また、ファミマオンラインでは店頭受取にも対応していますが、商品受取のために来店したお客様の約3割が、他の商品も一緒に購入しているとわかりました。併買によって客単価は約2倍に増え、月間来店回数も約13回、非利用ユーザーと比べると約2倍の数値です。優良顧客群の発展へ寄与しています」
「チャレンジするほうのコンビニ!」をスローガンに掲げるファミリーマート。近藤氏はここまでの成果を踏まえ、デジタルコマース事業展開の今後の方向性を次のように示した。
「店頭というコンビニならではのタッチポイントを生かしながら、話題性のある商品を作ってファミマオンラインそのものの認知や利用意向を高めつつ、売上の核となるギフト需要への対応も進めていきたいと考えています。
また、全国に店舗があるファミリーマートだからこそできる知られざる逸品や文化を紹介する取り組み『ご当地ファミマ』企画も構想中です。売場としては、プライベートブランドやナショナルブランドの商品拡張、パーソナライズなオファーや施策ができる環境を構築した上で、将来的にはマーケットプレイス型のECビジネスも検討したいと思っています」
既存チャネルとの融合や、相乗効果を発揮できるスキームと協力体制の構築は店舗規模が大きくなればなるほど困難を極める。しかし、うまく歯車が噛み合えば、事業をドライブさせる大きな可能性を秘める挑戦であることが、ファミリーマートの事例からも理解できるだろう。有するアセットをデジタルとどう結合させるか、どうすれば相乗効果を発揮できるのか。多くの課題と向き合った結果生まれた、新たなビジネスモデルと顧客体験の展開に今後も目が離せない。
