新興ブランドでも活路あり Z世代の「試したい」欲求にメーカーはどう応えるべきか?
Z世代の「新商品を試したい」という強い欲求は、新興ブランドや新商品にもヒットのチャンスが生まれる一方で、「ブランドにとっては、アウェアネス(認知や知識)をどう取っていくかが課題となる」と説明する川鍋氏。Qoo10では、双方を引き合わせるため、新商品をわかりやすく知らせる仕組みを大きく分けて三つ用意している。
- サンプルマーケット(レビュー獲得):話題の商品や新商品のサンプリング機会をQoo10が提供。任意であるにもかかわらず、9割以上のユーザーが自発的なレビュー投稿を行い、クチコミから新たな購買を創出。現在、施策実施まで2~3ヵ月待ちとなるほどの人気施策となっている。
- Mega Debut(新興ブランド支援プログラム):毎週火曜日の午前10時に更新される新規オープンブランドの紹介ページ。Qoo10が選定した4ブランドに対し、ブランドストーリーの紹介やライブコマース実施など、露出の機会を提供。掲載後のブランドの平均PVが26倍に増加するなど、大きな成果を得ている。
- メガ推し(注目新作紹介):Qoo10が、厳選した新商品をアプリ内のメインバナーに表出したり、単独ライブ配信を実施したりといったプロモーション支援を実施。現在トライアル的な取り組みとして行われているが、2025年7月から9月にかけてメガ推しのプログラムに参加したmedicubeは、600万以上の商品ページPV、10万以上の販売件数を獲得したという。
ただし、売り場都合の一方的な情報発信だけではコミュニケーションとして成立しない。Qoo10はその点も意識し、ユーザーに「My Place」と思ってもらえるような双方向型コミュニケーションができる場を東京・渋谷に用意している。
「ライブコマースは、これからより伸びていく分野だと思いますが、Qoo10は2024年2月から専用の配信スタジオ『Qoo10 Live Studio』を構えています。ここでポップアップを実施することもあります。
ライブコマースは実施するだけでは意味がなく、いかに拡散・リーチするかが肝です。そのため、Qoo10ではSNSによる情報拡散やリアルタイム同時放送を行い、2025年9月のメガ割時期には500万人以上の視聴者数を獲得しました。視聴者からの質問にリアルタイムで答えるなど、小さな働きかけ一つひとつが売上につながる非常にエンターテインメント性の高い場だといえます」(川鍋氏)

ソーシャルからリアルにも広がるコミュニケーション BeReal.にも注目か
TikTokで「#メガ割」が付与された投稿が2.8万件、再生数23.5億回(2025年7月20日時点)を記録するほど、多くの人々に認知されているQoo10のセール施策「メガ割」だが、こうしたムーブメントの多くは「ソーシャル起点、ユーザー発信で行われてきた」と語るeBay Japan合同会社 戦略マーケティング室部長のモラーノ絢香氏。近年は、こうしたつながりのさらなる強化に向け、ファンダムマーケティングの多様化を進めているという。
「2024年12月には、新たなSNSアプローチとして『BeReal.』のアカウントも開設しました。また、スポーツイベントや音楽フェスティバル、学園祭や学生向けビジネスコンテストへの協賛など、カルチャーを作り出す場に自ら出向く活動も行っています。集まった意見は、集合知として今後の施策に生かしていきたいと考えている次第です」(モラーノ氏)
