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次なる顧客体験へ 大手企業の目線

ブランド個別の最適化から全体最適へ ネスレ日本が語るファーストパーティデータ活用と組織改革の現在地

年間約数千万円分の売上創出につながる“メール施策のアプデ”とは

━━お二人の担当業務は、大企業であれば業務が縦割りになりがちな領域かと思います。現状、一緒に業務を進めていくことはあるのでしょうか?

陣内 たとえばキャンペーンなどの応募フォームを作成する際、守安さんのチームとブランドチームと「どういった項目をどのタイミングで取得すると、体験を損なわずに最適なデータを取得できるか」といった議論をします。

 フォームはファーストパーティデータを取得する重要な部分なので、やりたいこととできることを洗い出して、サイトとデータ収集の連携が取りやすい形を探らなければなりません。かつては私たちのチームとブランドチームがそれぞれ考えていたため、役割が重複していましたが、今は協業することで自分の仕事が明確になり、「ここから先はCRMのチームも交えて話をしよう」と相談するきっかけも掴みやすくなりました。

守安 ネスレ日本は、飲料メーカーの中では比較的ファーストパーティデータを多く収集できている企業だと思います。それでも、個別最適だった時代はブランドごとに取得量や粒度が異なっていて、ヌケモレがないようにするにはサイト設計から連携する必要性を感じていました。今は戦略的に施策を行える体制が整いつつあるので、ここから理想的なデータ収集や施策の横展開がしやすくなると期待しています。

━━もし、既に形になったファーストパーティデータ活用施策があれば教えてください。

守安 ネスレ通販のトップページのコンテンツの出し分けとカート放棄メールは、ファーストパーティデータの収集が進んだことでできた施策です。

 多くのブランドを扱うネスレ通販では、スワイプするごとに案内されるブランドやキャンペーンを変化させ、閲覧性を高めています。従来はどのお客様にも同じ順番でコンテンツが表示されていましたが、購入履歴など収集したデータを活用して、お客様に最も関連するコンテンツを最初に表示する仕様に変更しました。これによって、トップページから各ブランドのカテゴリーページへの遷移率が改善できています。

ネスレ通販のトップページ改善事例
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守安 また、カート放棄メールも全体最適の流れが進む中で実現できた施策です。メールによるフォローを実施して、既に年間約数千万円分の売上創出につながる見込みの成果が見えています。新規顧客の獲得が難しい時代なので、こうした一つひとつのフォローが重要になってくるなと実感しました。

━━複数あるブランドの意向を汲んだ上で統一化を図るのは、やはり大変ですか?

陣内 ブランドごと、チャネルごとに担当者がいるため、ミッションが異なるステークホルダーの多さに大変だなと思うことは確かにあります。「効率化」だけを謳うと、ブランドとしての個性を出したいといった意見が当然出てくるので、私は「どんなメリットがあるのか」をしっかり伝えようと意識していました。

 たとえば、Web&Experience&Search部では、CMSの共通化とセキュリティ上アップデートが必要だったページの整理を2023年に行い、1万1,000ページほどあったコンテンツを約5,000にまで減らしています。このときも、「ページを減らす」と聞くと不安を覚える人がいると考え、トラフィックの少ないページをなくすことで検索の最適化につながる点を強調しました。

 また、「CMSが新しくなる」と事実だけを伝えると、仕事を覚え直さなければならないとマイナスに捉えられるケースもあります。そこで、CMSを共通化することで発注先を統一でき、コスト削減につながる点や、情報連携がスムーズになることでかえってブランドごとの差別化がしやすくなる点を丁寧に伝えました。ブランドに誇りをもつ担当者へのリスペクトは大前提として、業務にプラスの効果をもたらすための働きかけだとわかってもらえるコミュニケーションは大事だと思います。

守安 ブランド担当者は、ブランドに誇りをもってやりたいことを考えていますし、そこへのリスペクトは常に忘れてはいけないと思っています。守りたいことと、デジタルやITの力を借りて最適化すべき項目をすり合わせるのは苦労が絶えない部分でもありますが、現場との関係を深めながらこれからも進めていきたいです。

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AI時代のキャリア構築・業務改革に必須なのは“推進力”よりも“傾聴力”

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/17196 2025/10/02 07:00

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