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石川森生氏と探る、これからのECとビジネススキルの磨き方

アパレル販売員から本部スタッフへ TSI岸氏が語る未経験の案件との向き合い方とスキルの会得方法

変化するアパレルの花形職種 OMO時代の販売員は“語り部”に?

石川 OMOの話になったので、販売員経験のある岸さんから、デジタルが身近にある時代のキャリアの描き方や、店頭で働く上でもつべき視点についてもお聞きしたいです。

 今の時代、しっかりと売れる店舗を作らないと退店リスクが高まっていますし、店舗のあり方は今後も変わっていくに違いありません。販売員に対しては「ただ商品を売るだけじゃなく、“語り部”になりましょう」と伝えたいですが、彼らのモチベーションを高めるには本部が優先順位を明確にしたり、給与体系やインセンティブ設計の見直しをしたりと、変化する環境に合わせた最適化をしないといけないと思うんですよね。「よしなにやってよ」と店舗に任せるのは、伝えるメッセージもバラバラになってしまいますし、ブランドとしても良くありません。

石川 OMOを本気で推進するなら、評価制度のような枠組みは当然ながら、販売員へのリスペクトが必須ですよね。本部から現場へ指示を出す、命令するといった上下関係が生まれてしまっている企業もゼロではないですが、そもそも店頭から売上が生まれていなければマーケティング施策もシステム投資もできないわけですから。

 本部が“顧客目線”だけじゃなく“店舗目線”をもっていないと、今後はよりしんどくなると思います。店舗とECをつなげるのは、そもそもは企業側の都合です。もちろん、それによって店舗の利便性が上がってお客様にとっても便利になるからやるのですが、「何ができたらお客様にとっても店頭にとっても良いか」は机上で考えるだけではいけません。実際、販売員に意見を求めると「こんなことできたら良いなと思っていました」といった声がすんなり出てくるので、それらを盛り込んでOMOを推進したほうがオンライン・オフライン双方から盛り上がって、ブランドとしても一体感が生まれます。

石川 現場から叩き上げてきた岸さんがいうと説得力が増しますね。

 キャリアの描き方としては、僕の時代はアパレルの花形といえばデザイナーやプレスでしたが、今はDX、OMO、サステナブル推進など、様々なポジションが生まれています。自分の価値観や感性を大事にできるロールがどんどん生まれているので、「アパレルで働くならこうでなければ」と固定観念に縛られるのではなく、フィットする場所を見つけていけると良いんじゃないかなと思います。

 そういえば、先日ちょうど「自分らしいキャリアを描く」をテーマにしたマネジメント研修を受けたんですよ。そこでも「正しく自分を理解することから始まる」と説明を受けました。思考の癖や能力的な不得手、何を幸せと感じるかといった人生観などを自認して判断をしていくってやはり大事ですよね。

 アパレルは個性が存分に生かせる環境なので、自認さえできればキャリアはどんどん広がっていくはずです。昔と比べたら自分でブランドを立ち上げるのも容易な時代ですから、販売員をしながら洋服も作れるし、MAISON KAPPAのようなコミュニティに所属して自分の得意をひたすら伸ばすのもありだと思います。

スーパーフラットかつ負けず嫌い だからこそ課題解決は熟考しても最短ルートで

石川 ちなみに岸さんは、ご自身をどんな人間だと認識されていますか?

 「勝ち続けたい」みたいな思想はあるのですが、スーパーフラットな人間だと思っています。今回自分のキャリアを振り返ってみて改めて感じたのですが、洋服が好きでたまたま入口がアパレルだったから今ここにいますが、時代や環境が変わる節々で物流、データ分析、システムと情熱的に向き合える“何か”に出会えていたんですよ。熱中したい課題があって、そこに必要なスキルを取りに行こうと動き続けた結果が今ですね。

石川 岸さんは青い炎ですね。情熱もあるし、野心的でもあるけど表にガツガツした感じがあまり出ていない。そのギャップがおもしろいです。

 負けず嫌いなところもあると思います。負けたくないので、お題そのものが正しいのかみたいなことも考えますし、大きな課題ほど決断には時間をかけます。ただし、動き出したら最短ルートを選びたいタイプです。だから人に聞く。あと、勝てるならその場における自分の役割は何でもいいと思っているところもありますね。

石川 その話を聞くと、様々なポジションを経験されているのも納得です。僕も似てるかもしれない……負け試合で楽しめるほど大人になりきれないんですよね。よく「失敗から学べ」なんていいますが、そもそも「勝つまでやめなければそれは失敗じゃない」と思ってしまうタイプです(笑)。

 共感します。負けは認めないでやり続ける(笑)。

岸氏と石川氏

石川 同じ挑戦の延長線上で成功を目指したほうが、アプローチの方法を変えながら試行錯誤するので、失敗する確率も減りますしね。

 一見すると成功する方法が見えない課題の場合も、闇雲に前に進むのではなく、「まずはここまで前進しよう」とゴールに段階を設けるようにしますね。その中での最短ルートを選べば起こすべきアクションが明確になるし、結果的に最終目的地までの道のりも短くなると思っています。

石川 最終的なゴールを見据えながら前進すれば、点での施策にはなりませんからね。岸さんの思考の癖づけは、今日からでも始められる非常に再現性があるもののように思えました。本日はお話いただき、ありがとうございました。

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/17063 2025/08/28 07:00

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