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【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

石川森生氏と探る、これからのECとビジネススキルの磨き方

アパレル販売員から本部スタッフへ TSI岸氏が語る未経験の案件との向き合い方とスキルの会得方法

エイプ時代に身をもって学んだ“知らない知識”との向き合い方

石川 岸さんのキャリアにフォーカスすると、販売・営業・物流・EC・CRMとエイプ時代から既に幅広い経験をされていますが、それぞれの専門知識はどうやって身につけたのでしょうか。「再現性がない」と危機感を抱いて転職した岸さんのキャリアも、個人的には良い意味で再現性がないと思うんですよね(笑)。

 社内に詳しい人がいるわけではなかったので、「社外の詳しい人にとにかく聞きまくる」を徹底していましたね。

石川 さらっとおっしゃいますが、これもなかなか難しいことだと思います。

 最初の一歩は勇気がいるかもしれませんが、鮮度の高い情報を得るには「当事者もしくはできるだけ近しい人に直接聞く」が一番です。

 エイプからTSIに転職して3ヵ月ほど経った頃に、「デマンドウェア(現・Salesforce Commerce Cloud)を使ってECサイトを作ってほしい」と指令を受けたんですよ。デマンドウェアは当時日本に上陸したばかりで、事業会社に構築経験者はほぼいませんでした。そのときも、既にデマンドウェアでの構築経験がある人を探して直接話を聞いたり、最終的にプロジェクトに加わってもらったりしたので、このスタンスはずっと変わりませんね。社内でも「なんでこの施策をやるの?」と疑問を抱いたら、必ずメイン担当に聞きに行きます。そうすると裏事情や背景までわかるので、判断の解像度が上がるし間違えも少なくなりますから。成功体験を得る一番の近道だと思います。

石川 岸さんは探究心というか“分かりたい欲”が強いんですね。

株式会社RESORT 代表取締役CEO 石川森生氏
株式会社RESORT 代表取締役CEO 石川森生氏

 そうかもしれません。特にエイプにいたときは、社内にわかる人がいなければ外に聞きに行くしかなかったので、その欲がないと何も前に進められなかったなと思います。外部の人に「ECの帳票ってどう管理してるの?」と聞いて、それに倣ってレポートを作成してみるなど、試行錯誤の連続でした。

販売員経験があるからこそ意識した「mix.tokyo」移行時の優先順位づけ

石川 そういったアクションを起こす中で、販売員経験があってよかったと思うことってありますか?

 デジタルやECの世界って「テクニックさえあれば」と思われがちですが、僕は逆だと思っていて。たとえば、アプリで情報を届けるにしてもCRMを実践するにしても、そのリストは店舗での接客やSNSでの発信といった泥臭いアプローチから得たものじゃないですか。こうした働きかけで興味や関心をもってくれたお客様にどんな付加価値を提供すべきか、どういったタイミングや言い回しで情報を届けると良いかを判断するのは、商売人の感覚があったほうが良いと思うんですよね。アパレル企業に所属している以上、僕らが売るのは情報ではなく洋服(もの)ですから。

 たとえ手段がデジタルに変わって、データでお客様の動きやあらゆる情報が可視化できたとしても、仮説立てには“経験”が必要です。そもそも引き出しがなければ仮説も思いつきません。実際に社内で意見を求めても、販売員やCS経験者のほうが「たしかにそういう考えもあるな」と思うことをいってくれるんですよ。

石川 どんなに購買環境が進化しても購入するのは「人」ですから、テクノロジー活用ができても売り方が下手ならものは売れませんもんね。

 2025年2月に各ブランドのECサイトを「mix.tokyo」へリプレイスした際にも、「ここにお客様を集めてくれるのは店舗にいる販売員だ」と意識しながら、オペレーションの設計などを行いました。

 「時代はOMOだ」とよく耳にしますが、店舗あってのOMOです。実はmix.tokyoのリニューアルオープン当初はCMなど大々的な施策はあえて打たなかったんですよ。大規模な移行だったのでリスクヘッジの意味合いももちろんありましたが、それ以上に各ブランドのECサイトで購入してくださっていたお客様にスムーズに移行していただけるよう、店舗に対するケアやインセンティブを手厚くしました。店頭でのアプローチがスムーズにできるようなトークスクリプトも作って、各ブランドの店長会議に直接顔を出してお願いして……頭ごなしに説明しても動いてもらえないのは自分の経験からも理解しているので、ここは特に念を入れて準備しましたね。

石川 移行から半年ほどですが、手応えはいかがですか?

 上位顧客の90%以上は、既にmix.tokyoへの移行が済んでいます。購入回数が年に1~2回程度のライト層への訴求や売上創出にはまだ課題がありますが、今回の移行はグループ全体のコスト削減の意味合いも含まれているので、数字面はもう少し長い目で見ていきたいと思っています。

石川 ビジネスは総合的な判断が必要ですからね。Shopifyに移行して機能追加などもフットワーク軽くできるようになったと思うので、その面でも今後の展開が楽しみです。

 そうですね。いろいろなことがやりやすくなったとは思います。

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変化するアパレルの花形職種 OMO時代の販売員は“語り部”に?

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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