日本と米国で異なる動画×ECのKPIとは
──では、動画を活用したマーケティングにも違いがあるのでしょうか。
Jerry そのとおりです。米国と日本で、大きな違いは3つです。
まず、米国ではお金をかけて外部に動画制作を依頼する企業が多く見られます。それに対して、日本では店舗スタッフなど社内の人が動画を制作できるように、内製化が求められます。そのためFireworkは、日本の企業に向けて自走までサポートしています。
また、好まれる動画の手法にも違いがあります。米国の企業において重要なのは、動画の影響力です。つまり、どれだけ多くの人に動画が届くのかが重視されます。こうした背景から、TikTokのように拡散されやすい縦型ショート動画の活用がより進んでいるといえます。
一方、日本ではインプレッション数以上に“関係構築”の優先度を高く設定している企業が多いように感じます。顧客と近づきたい。コミュニケーションを取りたい。そんな意識が強い様子がうかがえます。ある意味、情報発信よりも接客に近いのではないでしょうか。
最後に、これらの違いによって、効果の測り方にもそれぞれの特徴があります。米国では多くの場合、どの程度の人が動画に接したかがKPIです。日本よりもEC化率が高いため、オンライン上のやり取りを効率的に行おうとする傾向があると思います。実施したマーケティング施策が、しっかりと売りにつながっているかに重点を置いている。だからこそ、動画の成果を可視化し、PDCAを回す“データドリブン”にこだわるのです。
それが、日本の企業が動画を活用する場合、売上が目的というよりもブランディングの側面が強いように感じます。顧客を理解する手段の一つと捉えているのでしょう。その上、UI/UXにこだわり、いかに一人の顧客の体験を良くするかに着目しています。米国と比較してEC化率が低い現状が、背景にあるからかもしれません。
田島 日本の企業の多くが、“お客様との関係性”や“ブランド体験の質”を大切にしています。それだけに、動画を単なる販促ツールではなく、接客やファン作りの手段と捉えているのです。
私たちFireworkは、こうした日本独自の価値観に寄り添いながら、テクノロジーと創意工夫で“温度感のあるデジタル接客”を実現するパートナーでありたいと考えています。 今後も、企業と顧客の距離をもっと縮めるために、動画×データ×UXを軸に、ローカルに根ざした支援を加速させます。

──日本ではオンラインでも接客体験が重視されるのですね。そうすると、相互コミュニケーションが可能なライブコマースも効果的なように思えますが、なぜ日本では中国ほど浸透していないのでしょうか。
Jerry 中国のライブコマースは特殊な事例です。日本以外の国を見ても、中国ほど一般化しているケースはほかにありません。Fireworkが重視しているのは、ライブコマースではなく動画コマースです。ライブコマースは一機能。目的や商品カテゴリーに応じて使い分ける必要があります。
たとえば、当社では自社ECサイトと動画コンテンツの連携を支援しています。多くの場合、商品詳細ページはテキストと画像で構成されていますよね。しかし、それだけでは不十分です。だから顧客は、SNSに様々な情報を探しに行くのでしょう。そこで、スムーズな導線を設計するために、SNS上のショート動画などを自社ECサイトに組み込める機能を提供しています。これにより、CV率が20%~30%向上した事例もあります。