チャネルをまたいだ顧客分析にフォーカス モール・自社データの連携が鍵
Amazon unBoxed on Tour:Tokyoでは、ファーストパーティーデータの活用にも話題が及んだ。Amazonは、個人情報を保護した上で同社と他社の保有する顧客データを連携して、広告効果の分析などが可能なソリューション「Amazon Marketing Cloud(AMC)」を提供している。その具体的な活用事例が、イベント内で紹介されたという。
「データの掛け合わせにより、定期購入を解約した顧客が実は同じ商品をAmazonで購入していると明らかになった例もあります。こうした状況が把握できれば、顧客に自社ECサイトでの再購入を促す『おかえりなさいキャンペーン』など、効果的な新施策を検討できるはずです。多くの顧客は、自社ECサイトとECモールの両方を利用しています。そのため、今後はチャネルをまたいだデータ分析が不可欠です」
そのほか、Amazonは広告の運用面の改善も進めている。具体的には、広告に使用する画像の生成やクリエイティブの細かな調整の工数削減を促進している。
「生成AIで広告用の画像を生成できる機能が提供されています。これにより、出稿に必要な素材の準備がスムーズになるでしょう。私が実際に活用したところ、想定よりもクオリティの高いクリエイティブが生成されました。商材の性質上、クリエイティブの素材が少なく広告配信を諦めていた事業者は、実際に試してみることをおすすめします」
楽天市場でも買い物中以外のデータ分析がキーワードに
Amazonの動向からわかるように、昨今は「複数の販売チャネルをまたいだアプローチ」が可能となりつつある。実際、楽天市場が発表した比較的新しいソリューションからも、その様子がうかがえる。
ここで羽田野氏が取り上げたのが、2024年9月より本格的に提供が開始された「Rakuten Analytics」だ。同ソリューションは、楽天市場のウェブサイトやモバイルアプリに訪れる顧客の行動・特性をデータで分析できる。楽天IDを活用することで、顧客の基本的な属性だけでなく、どのようにブランドや商品と接触しているのかまで把握が可能だ。
「Rakuten Analyticsにより、楽天グループ会員の楽天市場以外での行動が、可視化できるようになりました。同ソリューションは、徐々に楽天市場に出店する事業者の間で浸透していくと考えられます。AmazonのAMCと同じように、ECモールの枠を超えて顧客を理解しようとする考えが読み取れるアップデートです」