ターゲットの決め方は「属性」だけではない 視聴者の声から得た気づき
コンスタントな発信を積み重ね、大きな成果を獲得した同チャンネルだが、実はYouTubeチャンネル自体は2011年に開設されている。当時は、商品ページやSNSに掲載した短尺動画のアーカイブ置き場として活用していたそうだが、2018年4月に配信を開始したオリジナルドラマ『青葉家のテーブル』が「動画との向き合い方を変える一つのきっかけだった」と、田中氏は振り返る。
「『青葉家のテーブル』を公開した後、視聴者から多くの感想が寄せられるようになりました。これにより、良かった点や共感できた点などがわかり、視聴者の心に響くメッセージや次に生かせる要素が見えてきたのです。
それまでは数字が主な成果で、再生された理由や改善点は自分たちで推測して見つけなくてはなりませんでした。定量データも参考にはなりますが、具体的な方向性を示してくれるわけではありません。視聴者の声は、次により良いコンテンツを作る大きなヒントとなります」
1ヵ月に6本から7本、多い月には10本のコンテンツを制作する動画チーム。すべてのディレクションにクラシコムのスタッフが関わりながらも、企画によっては外部スタッフとともに制作するケースも存在する。外から手を借りるのはアウトプット数の担保という側面では有効だが、ブランドのイメージや世界観など抽象度の高い要素をすり合わせる上での苦労などはないのだろうか。
「たとえば、動画を見て直感的な違和感があった際には『ここは心がザワザワするから変えたい』と都度言語化して伝えるよう心がけています。単なる発受注の関係ではなく、同じ感覚を共有しながら率直に意見を交わせるパートナーさんを見つけられたのは幸運で、本当に心強いです。『クラシコムのスタッフ』『社外のスタッフ』といった区別なく、チームとして良いものを作る体制が築けました」
こうしたクラシコムの“同じ感覚を共有するスタンス”は、視聴者に対しても同様だ。しかし、その方向性はあるコンテンツの視聴者傾向に気づかせてもらった部分もあったという。
「『あさってのモノサシ』という番組では、40代後半の店長 佐藤(友子氏)のこれからの不安を軸に企画し、トークドキュメンタリー仕立てで今後の人生について考えるきっかけを提供しています。このコンテンツは、佐藤と同年代の方に共感いただけると思っていたのですが、20代や30代の視聴者も意外と多く、ありがたい感想をいただいています。年代といった属性軸だけでなく、趣味嗜好や望む生き方など、切り口は多々あるのだなと発見するきっかけを与えてくれました」