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生成AIがマーケティングにもたらす変化を提言 Adobe Summit
「Adobe Summit」は、2024年3月26日(現地時間)から3日間、米国・ラスベガスで開催されました。Adobeはマーケター向けの「Adobe Experience Cloud」と、クリエイター向け「Adobe Creative Cloud」を提供していますが、Adobe Summitはマーケター向けのイベントです。クリエイター向けのイベント「Adobe MAX」は、毎年秋に開催されており、2024年は10月14日~16日(現地時間)に行われる予定となっています。
2024年のAdobe Summitのテーマは、「Customer Experience Management(CXM) in the Age of Generative AI」。日本語に訳すと「生成AI時代の顧客体験管理」という意味です。生成AIを活用するとマーケティング領域はどのように変わるのか、Adobeのビジョンを披露するものとなりました。
Adobeの会長兼CEO Shantanu Narayen氏は、同社の顧客体験管理(CXM)はモバイル、クラウドなどの新しい技術を取り込みながら進化してきたことに触れます。新しい波が昨今の生成AIです。AIの時代に「CXMは再び変革を遂げる」と、Narayen氏は述べました。
同イベントでは、様々な発表や注目トピックがありましたが、目玉は「Adobe GenStudio」と「Adobe Firefly」でしょう。Adobe GenStudioは、マーケティング担当者の作業全体に生成AIを活用するもので、「ワークフロー&プランニング」「生成とプロダクション」「資産管理」「デリバリーとアクティベーション」「レポートと洞察」と、五つの分野を網羅しています。
同アプリケーションは、2023年秋のAdobe MAXに合わせて公開されました。そこからもわかるように、Adobe Experience Cloudだけでなく、Adobe Creative Cloudにもネイティブに統合されています。
そこに含まれるのが、前年のAdobe Summitで画像生成AIの「Adobe Firefly」です。Adobe Fireflyは、生成したい画像をテキストで入力すると画像を生成してくれるもので、発表から1年で既に65億のクリエイティブが生成されているとのこと。
イベント内では、Adobe Fireflyを含むAdobe GenStudioのデモとして、ソーシャルメディアを使ったプロモーションのクリエイティブ作成から配信までを実演して見せました。従来型のフローであれば数週間、もしくは月単位の期間を要する作業が日単位でできるようになるのは、効率性の観点では圧倒的な変化です。
一方で、生成AIの分野は著作権の問題が整理されないまま、技術がどんどん進化しています。技術を提供する側であるAdobeは、2021年にMicrosoftやBBCなどとデジタルコンテンツの信ぴょう性証明に取り組む標準化団体「Coalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)」を立ち上げています。同団体の成果の一つとして、OpenAIが画像生成AIの「Dall-E 3」にC2PAの電子透かしを導入するなどの動きがありますが、まだまだ啓蒙が必要です。セッションでは、こうした話も聞くことができました。