エネルギッシュなカリスマ経営者の意外な一面も? ServiceNow 「Knowledge 2024」
最後に紹介するのは、ServiceNowの「Knowledge 2024」。同イベントは、米国・ラスベガスのThe Venetian Convention & Expo Centerにて、2024年5月7日から9日の3日間で開催されました。Adobeと同じ会場です。
ServiceNowのイベントに参加するのは、6年ぶりでした。動きが早いIT業界では、6年も間が空くとキャッチアップが必要ですが、私にとってのServiceNowもその通り。CEOが変わり、製品の幅も広がっています。来場者も、前回参加時は1万人台だったのが、今年は2万人。日本からは300人が参加していたようです。
同社は、ITサービスマネジメント(ITMS)として出発し、ITの運用、セキュリティの運用、 IT資産管理、クラウド管理などと対象範囲を拡大しています。土台となるのは「Now Platform」というプラットフォームで、これらの技術を利用してITサービス、調達、総務、資産管理、人事、顧客サービスなどの業務を効率化すると謳います。
今回のイベントのメインは、やはりAIです。2019年にCEOに就任したBill McDermott氏は、“プラットフォームのプラットフォーム”としてServiceNowを利用し、そこで提供される生成AIの機能を使うことで「ワークフローの自動化を進めることができる」と述べます。8,000社以上という同社の顧客だけで、年10億時間に相当する生産性改善が可能とのことです。
同社のプラットフォームが対象とするユーザーの幅の広さから、今回のイベントは「ビジネスのあらゆるところにAIをもたらす」というメインメッセージが掲げられていました。
発表の中で興味深かったのが、生成AIチャットボットの連携です。ServiceNowは「Now Assist」というチャットボットを提供していますが、同サービスとMicrosoftの「Microsoft Copilot」が統合され、目的に合わせてお互いを行き来できるようになります。様々なSaaSベンダーがチャットボットを展開する中で、こうした連携は顧客のことを考えた正しい動きといえます。Microsoft Copilotとの提携は、その後SAPが提供する「Joule」からも発表されています。
なお、基調講演には2023年のSnowflakeのイベントにも登壇していたNVIDIAの共同創業者兼CEO Jensen Huang氏がゲストとして登場。当時、ServiceNowの最高執行責任者を務めていたChirantan “CJ” Desai氏と対談しました。
Huang氏は、現在を「インストラクション(命令)主導のコンピュータのコーディングから、“意図”が主導のコンピューティングに移行した」と表現しました。コンピュータを操作するには、コンピュータが理解できるコードを書かなければなりません。それができる人は限られますが、生成AIでは自然言語で人間がコンピュータとやりとりできるようになります。
ServiceNowのイベントでは、McDermott氏へ個別取材する機会がありました。同氏といえば、かつてはSAPのCEOを務めるなど、カリスマ経営者の一人です。緊張しながら、時間より早く舞台裏にある取材場所へ。その時、同氏はステージで進行しているセッションを真剣に見入っていました。自身がステージに立つと実にエネルギッシュですが、インタビュー中は物静か。インタビューの最初と最後に、両手で握手をしながら頭を下げるという腰の低さに驚きました。