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靴は両足セット購入、そんな常識が覆るかも?ミズノの開発経験者が始めた新サービス「DIFF.」とは

 突然だが、あなたの足は左右同じサイズだろうか。「サイズが合わない靴を無理やり履いて足を痛めてしまった」「片方に中敷きなどを入れて対処している」「サイズ違いの靴を2足買い、片方は捨てている」といった人も、中にはいるだろう。実は今、こうした悩みの当事者がミズノ株式会社から独立し、新たな市場創出を目指して奔走している。今回は、株式会社DIFF. 代表取締役社長 清水雄一氏に、起業の経緯やビジネスを軌道に乗せるうえでの課題、テクノロジー活用などについて話を聞いた。

開発職採用から、気づけば新規事業を創出する側に

 2022年10月に創業し、左右別サイズ購入サービス「DIFF.」を運営する清水氏。自分に合う靴をオーダーメイドよりも短納期かつ安価に手に入れられる環境構築を目指して、同サービスは提供されている。

 両足セット販売が「常識」とされてきた靴を、なぜ片足ずつ販売しようと思い至ったのか。ここには、清水氏の経歴やこれまでの体験が関係している。

「学生時代はサッカー部に所属していたのですが、私自身、左は25.1cm、右は24.6cmと0.5cmのサイズ差があり、フィットする靴を見つけるのに苦労していました。その悩みから『サッカーシューズを作りたい』と考え、高専では機械工学、大学では人の身体の動きに関する研究を専攻し、技術職でミズノに入社したのですが、実際に夢がかなうまでには数年かかっています。

 ミズノには10年在籍していましたが、野球やゴルフの製品開発に携わったり、靴職人の暗黙知を形式化するプロジェクトを担当したり、新規事業公募プログラムの事務局側の仕事をしたりと、入り口は技術職でしたが興味から様々な業務を担当させてもらいました」

株式会社DIFF. 代表取締役社長 清水雄一氏
株式会社DIFF. 代表取締役社長 清水雄一氏

 DIFF. の源泉といえるアイデアは、「靴職人のこだわりに触れた中で生まれたもの」だと続ける清水氏。ミズノに所属している間に様々な調査データに触れ、左右の足のサイズが0.5cm以上違う人はおよそ5%いることもわかった。そして「足の悩みを抱える人、既製品の枠組みから外れてしまうマイノリティーに対してできること」に興味をもったという。

「自分自身、『靴を選ぶ体験がもっとスムーズになればいいのに』と感じていたので、現在のDIFF. とは異なるビジネスモデルですが、シューズの選び方をサポートする事業企画案をミズノの新規事業公募プログラムに応募しました」

 その案は残念ながら落選したが、清水氏は課題を深掘りする中で事業としての可能性を見いだした。社外のアクセラレーションプログラムや経産省のイノベーター育成プログラムに参加するために顧客の声を聞くなど、既存業務と並行しながらアイデアをブラッシュアップし、見えてきたのが現代のDIFF. のサービスだ。

「2020年にある大企業挑戦者支援プログラムでファイナリストに選ばれ、プレゼンテーションの場にミズノの役員を呼んだところ、終了後に既存業務と並行して検証を進める許諾を得ました」

 そこから本格的な事業化に向けて動き出したが、兼業状態では新規事業に求められるスピード感を発揮できず、もどかしさを感じていた清水氏。そんなタイミングで経済産業省とJETROが主催する「始動Next Innovator」に選出され、シリコンバレーの空気を体感した。ここで清水氏は「出向起業するか、ミズノのシリコンバレーでのイノベーション拠点を作って活動する」と決意を固めたそうだ。帰国後、社長に改めてプレゼンテーションした上で同省の出向起業等創出支援事業に応募し、採択。こうしてDIFF. は生まれた。

「ものづくりをしたくてミズノに入社した自分が、まさか事業責任者になるとは思っていませんでした。しかし、開発の現場を通して『別の手段もあるのかも』と気づけたので、DIFF. の創業は必然だったのかもしれません。

 メーカーの開発担当として仕事をしている間は、実はそこまで顧客の生の声を聞く機会がありませんでした。しかし新規事業を開発しようとすると、どこに行っても『顧客の声に耳を傾けよう』といわれます。課題を具現化できたのも、それを形にしたいと強く思えたのも、この体験あってこそのもので、私にとっては非常に刺激的でした」

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この記事の著者

景山 真理(カゲヤマ マリ)

フリーランスのライター。EC店舗、タウン情報誌制作会社、マーケティング支援企業などへの勤務経験を経て、ウェブメディアや雑誌をはじめとする紙媒体のライティングの仕事をしています。専門領域はデジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、ECのセールスメルマガ、仕事・働きかた、デジタルトランスフォーメーションです。 ウェブ●Mari Kageyama Writing Works

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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