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年末のセール商戦、スタートが10月に前倒されるか?
2023年は、リアル需要の完全復活や物価高による消費者の買い控えに起因する影響もあってか、各モールでセールの回数が増える動きが見られた。特に羽田野氏は、2023年10月から11月の楽天市場のセールスケジュールと、Amazonが同年10月14日・15日に日本で初開催した「Amazon プライム感謝祭」に着目したいと言う。
「楽天市場は10月に、4日から9日、14日から17日、24日から27日と3回もお買い物マラソンを開催しました。これは珍しいケースです。
Amazonの『Amazon プライム感謝祭』も、当社が支援する事業者は事前予想よりもかなり良い売上を上げたケースが多く、例年ブラックフライデー、サイバーマンデー(以下、BFCM)から始まると言われていたセールシーズンの前倒しや、『セールは先手必勝』という考えが各社により浸透しているのではないかと思われます。この動きが2024年以降ヒートアップするのかは、注目すべきポイントと言えるでしょう」
従来の日本の商慣習では、小売店を中心とする年始の「初売り」を軸としたセールが盛んであったが、この10年ほどでアメリカからブラックフライデーの概念が輸入され、人々の暮らしにすっかり定着した。Amazonやイオンなどの大手各社が大体的にCMを打つなどの広告戦略も功を奏しているのだろう。
「ここ数年、『本当に欲しいものは、年末年始のセールより前にお得に手に入れておきたい』という思考の消費者がBFCMで動き出していましたが、10月にも大規模なセールが定着すると、さらに流れは変わるでしょう。BFCMが定着して『この時期はどこで買っても安い』という状況になったからこそ、『他社よりも先に』と考えるプレーヤーが出てくるのは想像にたやすいです。
ただし、セールによる購買喚起の機会が増えても、消費者の財布の中身は増えていません。決められたパイの中で売上を奪い合っていることには変わりないので、ただひたすら安く売るという消耗的な売り方は避け、きちんとした戦略を練る必要があります」