前回の記事はこちら
トップの交代は、Google広告の方向転換を示すのか?
2023年11月末、長年Googleの広告部門を統括していたジェリー・ディシュラー氏が退任する旨が発表され、衝撃が走った。同氏は2005年に入社して以降、Googleの広告ビジネスの成長だけでなく、サードパーティCookieの段階的廃止などといったプライバシー関連の変更、機械学習やAIの活用促進などに貢献してきた。しかし、米国司法省がGoogleに対して起こした反トラスト法訴訟で、同氏は「広告価格の調整」を証言。Googleは同件と人事変更は無関係としているが、この動きは今後のビジネスの方針にも大きく影響するに違いない。
「ディシュラー氏に代わり、新たに広告部門のトップに就任したのは、ヴィダヤ・スリニバサン氏です。彼女はこれまでGoogle広告の技術チームを統括しており、検索広告とショッピング広告の見直しや、P-MAX、デマンドジェネレーションキャンペーンの立ち上げ、SGE(生成AIによる検索体験)を主導していました」
2023年はGPT-4の登場を皮切りに、AIを使った取り組みが世界的に大きく前進した1年となった。Googleも前出のSGEのみならず、会話型人工知能「Bard」や大規模言語モデル「Gemini」の取り組みを推進している。今回の広告部門のトップ変更は、こうした次世代に向けたビジネスモデル再構築を見据えたものという見方もあり得るだろう。
「スリニバサン氏に交代してすぐにGoogle広告の仕組みが抜本的に変わる、といったことではないでしょう。しかし、『こうした未来になるかもしれない』と心づもりをしておくことは重要です」
2024年1月4日より、Chromeウェブブラウザを利用する1%のユーザー(約3,000万人)に対してCookieの無効化が実行され、いよいよサードパーティCookieの廃止が具体化してきた。Googleはこの動きに対し、プライバシーの保護と広告の効率化を両立できる代替機能「プライバシーサンドボックス」を用意しているが、実際に計測とターゲティングの精度がCookie利用時と比べてどこまで担保されるかは、未知数だ。
「プライバシーサンドボックスは、業界関係者を巻き込んでエコシステムのようなものを作り、インターネットユーザーのプライバシー保護と充実したウェブ・アプリ体験の両立を試みる仕組みです。Google広告の運用に携わる方は、こうした動きを追いながらも、既に存在するP-MAXキャンペーンなどの仕組みを使って、成果向上に努めていきましょう」