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Googleは引き続きサードパーティCookie廃止を目指す考えか
2024年7月、マーケティングおよびEC業界に衝撃的なニュースが飛び込んできた。GoogleによるChromeのサードパーティCookie廃止の撤回だ。
同社は、これまでChromeにおけるサードパーティCookie活用の代替手段として、ユーザーのプライバシーに配慮した上でトラッキングや広告効果を測定する新技術「Privacy Sandbox」の開発を行ってきた。ところが、英国の競争・市場庁(CMA)が同技術の能力をテストした結果、個人情報保護の透明性やウェブ広告における競争への影響といった点で、基準を満たしていないと判明。田中氏は「Privacy Sandboxの開発が難航しているため、GoogleはサードパーティCookie活用の非推奨化を断念したのではないか」と分析する。
一方、GoogleがChromeのサードパーティCookie廃止を完全に諦めたわけではないという。ユーザー自身がプライバシー設定を選択・管理できる新機能の導入予定も発表している点で、同社は新たな代替案を探っている段階だと考えられる。
「現時点でGoogleは、サードパーティCookieの使用が可能かユーザー自身に尋ねるフローの導入などを検討しています。ただし、詳細はまだ明らかになっておらず、いつまでに発表するか期限すら設けられていない状況です」
国によって、プライバシーに関する法規制の内容は異なる。Googleには、どの国の基準に合わせて新機能を開発するのか判断が求められるだろう。その上、時間を追うごとに法規制は厳しくなる一方だと推測できる。田中氏は「法規制の厳格化に開発が追い付くのか疑問が残る」と話す。
「おそらくGoogleは、プライバシーに関する法規制が特に厳しいヨーロッパの基準に合わせて新機能の開発を進めるはずです。その結果、あまり法規制が厳しくない国々でユーザーのデータを取得しづらくなる懸念が生まれます」
とはいえ、「今回のGoogleの発表は、広告運用しているEC事業者にとって大きな影響はない」と田中氏は続ける。
「Privacy Sandboxに代わる新機能の開発を発表していることから、Googleがあくまでも将来的なChromeのサードパーティCookie廃止を目指して動いているのは、間違いありません。また、現時点では本格的な導入は難しいものの、Privacy Sandboxの開発を続ける意思も示しています。つまり、今と同じ状況が続くだけです。もちろん、今後の動向は注視すべきですが、過剰に反応する必要はないでしょう。押さえておくべきは、取得できないデータを取得する新たな方法を探すのではなく、『現時点で行える範囲で適切に予算を割り振る』考え方です」