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都道府県別の送料の表示などがGoogle Merchant Center Nextでも可能に
前回の記事で紹介した、Googleが進める「Google Merchant Center Next(以下、ネクスト版)」への自動アップデート。田中氏が「Google Merchant Center(以下、クラシック版)」と比べて不足する機能として挙げた、フィードのルールや補助フィードなどはまだ実装されていないものの、一部の事業主向けに都道府県別で送料を設定できる機能が追加された。
「ただし、同機能は『5,000円以上は送料無料』といった金額別や『離島を除く』といった配送先別の条件設定ができません。EC事業者が使いやすいと感じるレベルには至っていないのが実状です」
ネクスト版の開発が遅れる中、クラシック版のアップデートは行われている。Googleは2024年4月9日(米国時間)に商品データ仕様の更新を発表した。たとえば、「構造化されたタイトル」属性と「構造化された商品説明」を使用することで、商品タイトルと商品説明に生成AIで生成したテキストの設定が可能となっている。
ネクスト版とクラシック版のどちらを利用するにしても、こうした情報収集は欠かせない。Google Merchant Center ヘルプや公式Xアカウントなどを通じ、継続的に最新情報を追っておきたいところだ。
Googleの優先順位は広告よりも生成AIか
田中氏は、ネクスト版の開発が当初の予定より遅れている要因を「生成AIの開発を優先的に進めているからでは」と推察する。Googleは、AIブーム以前から、検索エンジンや広告運用、分析などあらゆる機能にAIを活用しているが、OpenAIのような新興プレーヤーの出現を受け、危機感を抱いている様子がうかがえる。
「OpenAIが『ChatGPT』を、Microsoftが『Microsoft Copilot』を発表するなど、数年前に比べて生成AI市場の競争は激化しています。この状況下では、Googleも生成AIに注力せざるを得ません」
実際、Googleは2023年12月に「Gemini」を発表した。その後も短期間でアップデートを繰り返し行うなど、生成AIの開発に積極的な姿勢を見せている。
「これまで検索エンジン(情報提供者)として中立性を保つなど、倫理的な観点から生成AIの取り組みにアクセルを踏めなかった部分があったと考えられますが、実際に万人が使えるツールとして提供する事業者が生まれ世に浸透すると、そうはいっていられません。
しかし、生成AIの開発やデータ処理には膨大なコストを要します。この約1年でGoogleが複数回レイオフを実施しているのも、投資費用を捻出するためではないかと囁かれているほどです。もしかすると、人員削減と開発における優先順位の変更を同時に行った結果が、ネクスト版の開発遅延につながっているのかもしれません」
広告収益が事業の大きな柱であるGoogleにとって、コストのかかるAIやLLMの開発・活用は、自社の事業にも役立てたいのが本音だろう。近年、世界的に問題となっている詐欺広告に対する自動審査の精度向上など、上手に使えば社会的な貢献度も大きい。しかし、こうした “守り”の施策は、すぐに収益につながるわけではない点で「Googleにとっては、いわば八方塞がり」と語る田中氏。
「生成AIへの投資を回収するには長い時間がかかります。広告収益の向上にも役立つ投資ではあるものの、そのリソースは、減少している広告収益から出さなければなりません。つまり、現在のGoogleは大きなジレンマを抱えている状況です」