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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

押さえておきたい!ECトレンド図鑑

実店舗のサービスはピカイチなのにEC売上が上がらない理由 オンライン上で顧客を“おもてなし”する方法

 世界的にもサービスレベルが高いといわれる日本。実店舗では、丁寧かつ顧客に寄り添った接客が提供されているが、オンラインではどうだろうか。会員基盤がオンオフで分かれている、サービス品質に差異があるなど、いまだ「サービスの均質化」が進みきってはいないのが現状だ。今回は、カスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Dotdigital」を提供する、Dotdigital Japanのカントリーマネージャー 上崎理会子氏へ取材。Shopify Japan立ち上げメンバーの経験も有する同氏に、日本の事業者が抱えるEC運営の課題について話を聞いた。

日本の消費者は1度でも嫌な体験をすると戻ってこない

 オーストラリアを拠点に外資系企業へ勤めていた上崎氏は、2017年にShopifyの日本事業立ち上げへ参画し、EC業界のキャリアをスタートした。EC運営の経験はなかったものの、「Shopify Japanへの入社をきっかけに、その面白さに気づいた」と話す。

「eコマースの興味深い点は、一定の事業規模にまで成長すると、『こうすれば成功する』という正しいやり方がないことです。テック業界の一角で、変化のスピードも非常に速く、昨日の当たり前が次の週には当たり前でなくなっている可能性もある。変化の激しい領域で新規事業の立ち上げに携わりたいと思い、Shopify Japanに入社しました」

 その後は独立し、自身でEC運営のコンサルティングを行う会社を立ち上げた上崎氏だが、2023年にDotdigital Japanのカントリーマネージャーに就任。現在は、同社の日本市場への展開を進めている。

 海外での就業経験もある上崎氏が、日本の事業者の長所として評価するのがサービスレベルだ。

日本のサービスレベルは、世界と比べてもピカイチです。スーパーに並んでいる商品もきれいにパッケージングされていますし、カスタマーサポートも丁寧で素晴らしいです。レストランでも美容室でも、どこで何をするにもレベルが非常に高いと実感しています。だからこそ、日本の文化や商品には海外ファンが多いのでしょう」

 しかし、その一方で上崎氏は、「日本のサービスの良さがオンライン上に反映されていない」と指摘する。わかりやすいのは、メールによる情報発信だ。上崎氏はアパレルブランドを例に、日本の事業者が有する課題をこう説明する。

「たとえば、同じ実店舗でずっとブラックカラーの洋服を見ているのに、急にホットピンクの洋服を提案されたり、既に購入している商品と同じ服をおすすめされたりしたら、驚きますよね。オフラインの接客では通常起こり得ないことが、オンラインでは依然として存在しています

 こうした「違和感のあるサービス」は、メールの一斉配信や配信後の分析不足など、One to Oneコミュニケーションの不足から生まれているものといえる。普段から質の良いサービスに慣れている日本の消費者は、オンライン上でも質の高い丁寧なサービスを求める傾向にあるため、こうしたギャップはブランド毀損につながる懸念もある。

「海外では、サービスに嫌な点があってもあまり気にしない人が多いです。反対に、日本の消費者は少しでも嫌な思いをすると、最低4年は同じブランドで商品を購入しないと認識したほうが良いでしょう。対面の接客では、なんとなく空気を読んで顧客の求めるサービスを提供できますが、オンラインでお客様を理解するには、データで分析する必要があります

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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