商材の異なる2社に共通する熱心なファンの存在
ヤマハ発動機とベースフードはまったく異なる商材を取り扱いながらも、熱心な顧客が集まるファンコミュニティを運営し、ビジネス成長につなげている点で共通している。
ヤマハ発動機は、オートバイや電動アシスト自転車、ボートなどの商品を通して「感動を創造する」ことを事業目的に掲げており、同社初のファンコミュニティにもその精神が反映されている。2022年に国内発表した新型スポーツバイク「YZF-R7」のオーナー向けに、コミュニティサイト「ヤマハモーターラボ for R7」を立ち上げた。現在は、主に40~50代以上の男性約900人が参加している。
同社の木下氏は、立ち上げた理由を「通常、プロダクトデザインは商品を作るまでが仕事だが、これからは発売後のお客様との関係もデザインしていく」と説明する。
木下氏いわく、その背景には時代の変化により「『モノを売って終わり』では勝ち残るのが難しくなった」ことが関係しているという。昨今は、多様化・細分化する顧客ニーズに対応するために、顧客との相互交流によるリサーチが必要になっているからだ。
また、顧客と直接やりとりし意見を聞くことで、エンゲージメントや企業ブランドイメージを向上するといった狙いもある。
一方、2016年創業のベースフードは、1食に必要な33種類の栄養素がすべて摂れる完全栄養食を開発・販売している。パンの「BASE BREAD」シリーズの他、パスタやクッキーを展開しており、現在、定期購入者は20万人以上に上る。この定期購入者を対象としたファンコミュニティが、「BASE FOOD Labo」だ。
BASE FOOD Laboでは、会員が「研究員」として商品開発やサービス改善に参加できる。ダイエットプログラムなど、会員同士で励まし合ったり交流したりできる仕組みもある。
ベースフードとしては、コミュニティを通じて顧客の意見を集め、すぐに開発や改善に活かせる点にメリットがある。
「ファンコミュニティは始めるのが難しいという声もありますが、当社は初期の段階から、成長を目指してコミュニティ作りに注力してきました。育てるのに時間はかかるものの、模倣されにくい『ストック施策』を中心に据え取り組んでいます」(ベースフード 吉田氏)
同社のストック施策には、アンバサダー制度や顧客の声を反映して商品やサービスの改善を続ける「カイゼン文化」の育成などがある。顧客の声を改善に役立て、それを顧客に伝えることを文化として根付かせる。これにより、信頼関係の構築を図っているのだ。