創業70周年を迎え、新たな顧客接点創出へ
アダストリアは、「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」「niko and ...(ニコアンド)」「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」など30以上のファッションブランドを展開し、全国の商業施設を中心に約1,400店舗を構えているアパレルブランドだ。自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」では、全国約4,000人のスタッフがコーディネートを投稿する「STAFF BOARD」やライブコマースなどのコンテンツも提供。1,600万ユーザーを抱える大規模サイトとなっている。
実店舗だけでなく、オンラインでの付加価値創出にも積極的な同社は、2022年にメタバースファッション領域へ参入。同年10月には、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」で本格的な商品展開を開始した。「RAGEBLUE(レイジブルー)」で実際に販売されている商品を着用したオリジナルアバターの販売を皮切りに、「HARE(ハレ)」「JEANASIS(ジーナシス)」「Anui(アニュイ)」のメタバースファッションアイテムを販売。メタバースファッションコンテストといった参加型イベントなど、もの売りだけでない、ユーザーとつながるイベントも実施している。
同社がこうした事業を始めた理由は、成長戦略の一つに「デジタルの顧客接点、サービス」の創出・拡張を掲げているからだ。島田氏は、メタバース参入の目的として「新たな顧客接点づくり」「Web3.0領域で新しい収益、ビジネスをつくる」「顧客に対して新しい付加価値の提供」の3つを挙げた。
「1953年に創業したアダストリアは、今年70周年を迎えました。長年ものづくりに取り組んできましたが、ファッションを取り巻くシチュエーションは年々多岐にわたっています。そのため、商品をつくって売るだけではなく、ファッションを楽しむきっかけづくりにも取り組んでいます。メタバースもその一環です」
同プロジェクトでは、2022年11月にVRChat内のバーチャルショッピングモール「Carat(カラット)」へ「.st」のポップアップストアを出店している。店内には、メタバースアイテム(洋服・小物類)を展示し、鏡も設置。来場者はアバターに扮したアダストリアのスタッフとの会話を楽しみながら、アバターに商品を当てて試着。実際の店舗で接客を受け、買い物をしているような体験を提供した。
「プロジェクトを開始して1年強ですが、メタバース上で開催するファッションショーや新商品の展示会には実店舗への来店が難しい海外のファンも来てくれています。物理的な制限がないことは大きな強みです。メタバースをきっかけにブランドを知ったお客様とつながる、新たなコミュニケーション創出を重視しています」