わずか1ヵ月で日清食品グループ専用のChatGPT環境「NISSIN AI-chat」を構築
日清食品グループは、全社活動テーマとして「NBX(NISSIN Business Xformation)」を掲げ、デジタル技術を活用した「ビジネスモデル自体の変革」「効率化による労働生産性の向上」に取り組んでいる。このNBXを推進していくため、経営トップからは全社員に対してスローガン「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」が発せられた。
「IT部門に任せきりにするのではなく、社員1人ひとりが自主的に業務を見直し、自らデジタル技術を身につけて活用する組織文化をつくっていく。そのために、社員全員が意識を変えていこうというメッセージです」
こうした背景から、日清食品グループでは、現場主導で様々なツールを活用した業務改善・デジタル化が進められているが、「飛躍的な生産性向上を実現するツールとして、次に注目したのがChatGPTだった」と山本氏は語る。
ChatGPTを活用するにあたり、日清食品グループが最初に取り組んだのがリスクへの対応だ。
「ChatGPTは新しい技術であるが故に、利用にあたってはリスクへの懸念がありますが、そのほとんどが『入力した内容の情報漏洩リスク』『二次利用に際する不適切な流用リスク』の2つに集約されると考えています」
「前者のリスクに対しては、Microsoftの『Azure OpenAI Service』を利用した独自の環境を構築することでOpenAIに学習されないようにしたほか、ユーザインタフェースに『Power Apps』を利用することで堅牢性の高いMicrosoft 365の認証機能を適用。日清食品グループ専用のセキュアな環境を構築しました」
NISSIN AI-chatの全体構成図を見てみよう。赤枠がコア部分であり、ローコードでアプリを構築できるPower Appsを介して、エンドユーザーが入力したプロンプトの回答を得る仕組みだ。インターネット参照は「Bing Search API」で実現されている。日清食品グループは今後、「社内情報参照機能」をリリースする予定で開発に取り組んでいる。
「『二次利用に際する不適切な流用リスク』は、ChatGPTに限らず、インターネット利用全般に当てはまる」と山本氏はいう。日清食品グループでは、その対策としてガイドラインの策定、説明会の開催、通報や社内報を通じた情報発信、システム上での注記喚起など、社員に回答内容を適切に扱うよう啓蒙を繰り返している。
「NISSIN AI-chatへの初回ログイン時には、CEOのメッセージが表示されるとともに、コンプライアンスに関する設問への回答を必須としています。2回目以降のログイン時は、毎回、チキンラーメンの『ひよこちゃん』が登場して注意喚起します」
日清食品グループでは、NISSIN AI-chatを活用するにあたって徹底したリスク管理を含む方針検討、専用環境構築、関係部署調整、周知・啓蒙を2023年4月中に実施。そして、5月以降の方針を「グループ全体を巻き込んだ取り組みを加速し、システムの高度化による飛躍的な生産性向上を実現する」とした。本講演で山本氏は、主に業務活用と効果検証の詳細を解説した。