新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界中で消費トレンドに大きな変化が生まれました。消費行動が回復する今でも、ライフスタイルに当時の影響は強く残っており、事業者もそれに合わせた施策が求められています。
この記事では、そんな新しい消費トレンドの一つでもある「おうち需要」に上手くフィットしたEC戦略を実行する、ホビー商品を手がける大網株式会社の動向について、具体的な施策とともに解説します。
大網株式会社の企業情報・事業内容の概要
まずは、大網株式会社の企業情報や基本的な事業の内容について、解説します。
大網株式会社の企業情報
以下では、基本的な大網株式会社の企業情報をまとめています。
社名 | 大網株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 東京都文京区小石川4-21-11大網小石川ビル |
設立年月 | 1971年6月 |
代表者名 | 代表取締役社長 金坂 夏樹 |
株式公開 | 非上場 |
資本金 | 3,000万円 |
おもなグループ会社 |
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大網株式会社の事業内容
大網株式会社は1906年に梱包資材問屋として創業し、現在はホビー商品の実店舗・EC販売や、セールスプロモーション業務、キャラクター商品の企画・制作・販売を行っている企業です。
制作したキャラクターのライセンスに関しても自社で取得しており、自社流通網を活かした直接販売や、リユース事業も手掛けます。ホビー通販サイトの「あみあみ」は自社運営のオンラインストアであり、Webコンテンツの企画やデザインなども全て自社で賄っています。近年は海外向けの越境ECにも注力し、成果を残しています。
創業から100年以上の歴史を持つ老舗企業ということもあり、ロジスティクス分野においても自社でネットワークを構築することで、安心の物流網を介した商品提供を実現しています。
大網株式会社の沿革
以下の表は、大網株式会社の沿革をまとめたものです。
年 | 沿革 |
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1906年 | 東京・日本橋に梱包資材問屋「大網商店」創業 |
1950年 | 改組し有限会社「大網商店」設立。セールスプロモーション業へ業態転換 |
1970年 | 改組し「大網株式会社」設立 |
1972年 | 台湾でノベルティグッズの海外生産を開始 |
1983年 | グループ会社「アミプロモーション株式会社」設立 |
1997年 | キャラクターマーチャンダイジング部門を設立 |
1999年 | ホビー通販サイト「あみあみ」運営を開始。EC事業に参入 |
2008年 | ライセンス取得によりアニメキャラクター商品企画製造を開始 |
2009年 | アメリカに関連会社「AmiAmi USA, Inc.」設立 |
2011年 | リユース事業開始 |
2014年 | 女性向けキャラクターブランド「amie」展開開始 |
2015年 | 大網物流センター2期棟竣工。動画番組制作・ネット配信事業を開始 |
2018年 | 中国・上海に関連会社「阿弥阿弥上海有限公司」設立 |
2020年 | アメリカに関連会社「AmiAmi USA, Inc.」設立 |
大網株式会社は、梱包資材問屋として1906年に創業し、1970年にセールスプロモーション事業へと転換しました。
その後、キャラクターマーチャンダイジング事業やホビー通販サイト「あみあみ」などを展開し、現在は国内外で多岐にわたる事業を手がけています。2020年には北米現地での販売事業を正式に開始し、2021年に設立50周年を迎えました。
大網株式会社が展開する国内外に向けたEC戦略
大網株式会社は、国内の顧客を主軸としながらも、近年は北米をはじめとする海外顧客に向けた越境ECも盛んに行っています。
同社が国内と海外でどのような変化をつけながらECを運用しているのか、ここで解説します。
コロナ禍では「おうち需要」を捉えECが伸長
国内向けの施策として近年成功した取り組みが、コロナ禍における「おうち需要」向けの販売です。
以前よりも家の中で過ごす時間がはるかに増えた消費者の生活動向の変化を捉え、増加するプラモデルの注文にも確実に応えた結果、2020年12月の受注金額は前年同月比1.3倍を記録しました。
消費が大きく停滞したとされるコロナ禍でしたが、実際には需要の変化によってそれ以前とは異なるお金の流れができていたことが注目すべきポイントです。
自社物流網の強化で国外配送需要に対応
コロナ禍を経て、大網株式会社では国内外のニーズ増加の動きが顕著となり、ここ数年で配送網の強化にも取り組んできたのが特徴です。メインで使用している物流拠点はもちろん、2020年から2021年にかけては出荷委託先や使用倉庫を臨時的に拡大することで対応していました。
その後同社では2拠点体制を本格的に確立し、商品のスムーズな手配に合わせ、感染リスクの管理にも注力しています。
また、越境ECの分野ではコロナ禍により物流網が停滞したことを受け、自社が主体となり新たに船便を開始しました。独自の物流網を整備し、急激に増加した需要へ上手く対処しています。
同社は配送ルートを独自に整備したことについて、品質向上による顧客満足度の改善はもちろん、他社との差別化にもつながるとしており、ロジスティクスを非常に重視している点もポイントです。
実店舗に見出す「販売店」以上の可能性
大網株式会社は自社ECサイトのみならず、秋葉原などに実店舗を設けていますが、コロナ禍においては決して良好な経営状況であるとはいえませんでした。
ただ、来店者が少ないことは強みにも活かせることに気づいた同社は、ホビー紹介などを扱うYouTuberに積極的に協力して露出を増やし、ファンの拡大や認知度の向上に取り組んだそうです。
今後は動画コンテンツを使った情報発信の強化やライブコマースへの参入なども計画しており、認知の拡大を進めていきたいとしています。
国内だけでなく、海外のインフルエンサーとのコラボ企画やWebで実店舗を再現した仮想体験ツアーなど、自社の強みであるコンテンツ力の高さを活かした企画を国内外で展開していくとしています。
大網株式会社の最近の動向
以下では、近年の大網株式会社の動向について気になったものを解説します。
通販売上高253億円 海外販売の伸長が顕著に
大網株式会社は、2022年5月期の通販売上高を前期比25%増の253億円にまで伸ばしました。
コロナ禍で停滞していた従来の物流網が回復したことで、海外向けの販売が急速に伸びたことが大きな要因としています。
海外事業の売上高は国内向けと同水準に達しており、なかでも高価格帯のフィギュアの売上が拡大したとのことです。特に北米やアジアでのフィギュア需要が高く、今後の成長にも期待が集まります。
不正注文被害防止に向けたシステム導入を実施。被害の激減に成功
大網株式会社は希少性の高いフィギュアなどのホビー商品を扱うため、かねてより商品の不正注文に悩まされてきた背景があります。イタズラによる注文や支払いの遅れなど、売上に顕著に悪影響を与える不誠実な注文が後を絶たなかったということです。
このような不正注文による被害は同社だけで数百万円規模でしたが、近年は不正対策の強化を実施し、被害を大きく減らすことに成功しています。クレジットカードの3Dセキュア認証の実装は、大きな効果をもたらしたということです。
システムを通じて、不正注文に関する情報をほかのシステム加盟店と共有できる体制を構築していることも、被害の減少に貢献しています。自社だけでなく、ほかのオンラインサイトと手を組んで不正注文被害の撲滅に向けた仕組みを整備することで、結果的には自社にとっても有益な結果をもたらすはずです。
また、本来であれば人間が手動でオンライン注文を行うはずが、プログラム化された自動購入ボットを使った不正注文が横行したことで、ボット利用者に商品が独占され、高値で転売されるという問題も各オンラインサイトなどで散見されます。
こういった問題への対処も、今後は求められるようになるでしょう。
大網株式会社の気になるトピックス
その他、大網株式会社の気になるトピックスを以下にまとめています。
2023年8月10日:『Gift 東方ふもふもぬいぐるみシリーズ15周年記念ショップ in amiami』が「あみあみ秋葉原ラジオ会館店」にて開催!
大網株式会社は、自社が運営するホビーショップ「あみあみ秋葉原ラジオ会館店」にて『Gift 東方ふもふもぬいぐるみシリーズ 15周年記念ショップ in amiami』を開催する。
2023年7月27日:ホビーショップ「あみあみ」のイメージキャラクター『あみこ』LINEスタンプ第2弾発売!
大網株式会社は、自社が運営するホビーショップ「あみあみ」のイメージキャラクターあみこのLINEスタンプ第2弾を、2023年7月27日に発売した。
2023年7月25日:1万円分のお買い物ができるポイントをプレゼント!『あみあみTwitterもうすぐ150,000フォロワーキャンペーン』を開催。
大網株式会社は、自社が運営するホビーショップ「あみあみ」のTwitterアカウントがもうすぐ150,000フォロワーとなることを記念して、キャンペーンを開催。
2023年7月6日:国内最大級のフィギュアイベント ワンダーフェスティバル2023夏に今年も「あみあみ」が『あみあみホビーキャンプ』として出展!!過去最大の50を超えるメーカー・ブランドが集合
ホビー通販大手の「あみあみ」は2023年7月30日(日)に開催されるフィギュアイベント『ワンダーフェスティバル2023[夏]』に、「あみあみホビーキャンプ」として出展する。
2023年1月24日:大網株式会社、サイシードのAI搭載型チャットボット『sAI Chat』を日本最大級のフィギュア、ホビー通販サイト『あみあみ』に導入
AIやLINEを使って企業のDXを支援する株式会社サイシード(本社:東京都新宿区、代表取締役:松尾陽二、以下 サイシード)は、大網株式会社(URL:https://www.oh-ami.com/ 本社:東京都文京区、代表取締役社長:金坂 夏樹、以下 大網)がAI搭載チャットボット『sAI Chat(サイチャット)』を導入したことをお知らせいたします。
まとめ
この記事では、ホビー商品を国内外向けに展開している大網株式会社について解説しました。同社では90年代よりオンラインストアを手掛けてきた経験があり、近年は自社物流網の整備や越境EC体制の構築も進み、多くのファン獲得を実現しています。
コロナ禍における需要拡大にも物流の整備によって乗り切り、2022年にはコロナ禍の成長に上乗せする形で大きな売上高を達成しました。決済システム周りの改善も行い、不正注文を解消して少しでも多くの顧客に正しく商品を届ける仕組みづくりも、功を奏しているといえるでしょう。