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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

モール型EC依存脱却に成功したベガコーポレーションのブランド戦略とは

 モール型ECは集客効果が期待できる反面、手数料の問題やブランド構築が難しいというデメリットもあります。今回は、インテリアEC「LOWYA」を立ち上げたベガコーポレーションがいかにしてモール型EC依存からの脱却に成功したのか、そして自社ブランドを不動の地位に高めていったのかについて解説します。

 EC活用のあり方は会社によって様々が、自社ECとモール型ECのどちらを重用するか、または両立させるか、といった判断は容易ではありません。

 人気インテリアECを手がける株式会社ベガコーポレーションは、モール型ECへの依存から脱却したことで売上を伸ばした企業の一つであり、その取り組みには多くの企業が注目しています。

 この記事では、同社がモール型EC依存脱却に至った道のりや、強力なブランド戦略について紹介します。

株式会社ベガコーポレーションの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社ベガコーポレーションの基本情報を確認します。

株式会社ベガコーポレーションの企業情報

 以下では、株式会社ベガコーポレーションの企業情報をまとめました。

社名 株式会社ベガコーポレーション
本社所在地

福岡県福岡市博多区祇園町7-20

博多祇園センタープレイス4階

設立年月 2004年7月
代表者名 代表取締役社長 浮城 智和
株式公開 東京証券取引所グロース市場
資本金 10億3,055万円
おもなグループ会社 なし

株式会社ベガコーポレーションの事業内容

 株式会社ベガコーポレーションは、自社オリジナルデザインのインテリアを取り扱うECサイト「LOWYA(ロウヤ)」を運営するEC企業です。

 また同社は、商品の開発や国内における販売はもちろん、越境ECプラットフォーム「DOKODEMO(ドコデモ)」の運営にも取り組んでいます。決済から物流、CSに至るまで、越境ECに必要な多くの機能を備えた独自プラットフォームの提供は、LOWYAのECサービスとともに同社の主要事業となりつつあります。

株式会社ベガコーポレーションの沿革

 以下の表では、株式会社ベガコーポレーションの沿革をまとめています。

年月 沿革
2004年7月 「有限会社ベガコーポレーション」を北九州市に設立
2004年10月 LOWYA Yahoo!ショッピング店オープン
2004年12月 LOWYA 楽天市場店オープン
2006年10月 LOWYA 旗艦店をオープン
2007年6月 株式会社ベガコーポレーションに組織変更
2008年10月

上海に「倍嘉上海有限公司」設立

タオバオに「LOWYA CHINA」出店

2010年1月

楽天市場「ショップ・オブ・ジ・エリア」受賞

Yahoo!ショッピングにて年間ベストストア22位を受賞(住まい・インテリア部門)

シンガポールにゲーム事業子会社「NUBEE PTE.LTD.」設立

2012年1月 ゲーム事業子会社「NUBEE PTE.LTD.」シンガポール法人をクローズし「株式会社Nubee Tokyo」へシフト
2012年2月 楽天市場「ショップ・オブ・ザ・イヤー2011」受賞
2015年12月 「株式会社Nubee Tokyo」撤退、越境EC DOKODEMO事業へシフト
2016年3月 東京支社・LOWYA東京ショールームを渋谷区恵比寿南に設立
2018年12月 港区北⻘山に支社移転
2019年2月 3Dモデルで部屋に試し置きができる機能「LOWYA AR」公開
2020年9月 LOWYA旗艦店を自社開発のECシステムにフルリニューアル
2020年11月 LOWYA旗艦店にて他ブランド販売開始
2021年10月 LOWYA旗艦店総会員数100万人突破
2021年12月

台湾大手ECモール「比比昂株式会社(bibian)」と連携、台湾向けにLOWYA販売開始

2023年2月 DOKODEMO会員数100万人突破
2023年4月 初の直営店を福岡市西区九大新町「いとLab+」内に開業

 2004年に誕生した有限会社ベガコーポレーションは、当初Yahoo!ショッピングと楽天市場という、国内大手のモール型ECを活用したインテリア販売を強みとしていました。2007年に資本金を増資して株式会社となった同社は、創業から4年後には中国市場へ進出し、オンラインの強みを活かして現地での顧客獲得を進めています。

 2010年には自社のITにおける知見を活かし、シンガポールにゲーム事業会社を立ち上げましたが、2012年にシンガポールから撤退。2015年には子会社をたたみ、越境ECプラットフォーム「DOKODEMO」の育成にフォーカスを置きました。

 モール型ECに支えられてきたLOWYAブランドですが、2020年には自社ECサイトをフルリニューアルし、自社開発したECシステムの稼働を開始しています。2021年にはLOWYA旗艦店総会員数が100万人を突破し、台湾への公式販売もスタートしました。

 最近では、2023年にLOWYAブランドとして創業初の試みである実店舗の直営店を福岡にオープンするなど、インテリア販売のあり方を模索し続けています。

株式会社ベガコーポレーションが実践する強力な国内外ECの運用方法

 株式会社ベガコーポレーションは、これまでECに特化した小売ビジネスで成長を遂げてきた会社です。国内はもちろん、国外向けのサービス展開も推進する同社では、どのようにECを運用しているのでしょうか。

モール型EC依存脱却に成功したLOWYAのブランド戦略

 株式会社ベガコーポレーションは元々、自社ブランドLOWYAのモールECにおける顧客獲得を進めていましたが、2015年以降は、自社ECシステムの整備とブランディング強化にも着手しています。

 同社がまず注目したのは、自社ECにおける売上要因の把握と改善です。同社では、急進的なブランドアピールと自社EC運用を平行して進めることは避け、旗艦店と称する自社ECの比率をモール型から少しずつスライドして増やしていく方法を選びました。

 モール型ECにおける順調な売上を確保しつつ、顧客ロイヤリティに勝る自社ECサイト利用者を少しずつ増やすことで、自然と売上が増えていくと予見したのです。

 具体的には、ネット広告の運用を一旦停止し、SEO対策やECサイト内のコンテンツ改善などを実行したのです。結果として、2020年3月期に売上高前期比約1.9%増の135億700万円、営業損益1億1,600万円へと黒字転換することに成功しました。

越境EC事業におけるDOKODEMOの活躍

 一方、越境ECプラットフォームであるDOKODEMOの活躍も、株式会社ベガコーポレーションの成長を語るうえでは欠かせません。

 同サービスは日本語のほかに英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語に対応しており、99ヵ国の国と地域にサービスを提供しています(2021年3月時点)。また、DOKODEMOではLOWYAブランドのインテリアは取り扱っておらず、プラットフォームによってセレクトされた日本製の良質な化粧品や薬、食品、雑貨などを海外に直送しています。

 DOKODEMOでは、「日本の優れた商品のみを世界に向けて提供するプラットフォームが少ない」という点に目を付け、海外戦略の強化を通じて売上を伸ばし、2023年3月期には売上高6億円超を記録しました。

 付加価値の高い製品に絞ることで、Amazonや楽天市場といったモールECとの差別化を図り、顧客ロイヤリティや知名度、売り上げの向上に成功した事例といえるでしょう。

株式会社ベガコーポレーションの最近の動き

 続いて、株式会社ベガコーポレーションの近年の動向について、おもなニュースをピックアップして解説します。

2023年よりLOWYAの実店舗を展開。EC+実店舗+卸売りの「OMO型D2C企業」へ

 2023年4月、株式会社ベガコーポレーションは創業以来初となるLOWYAの実店舗直営店「LOWYA九大伊都店」をオープンしました。

 コロナ禍では多くの実店舗がEC化を進めましたが、特に2022年後半以降は、オフラインでの経済活動再開も進んでいます。そのため、今後より重要視されるであろう、オンラインとオフラインが融合したビジネスモデル「OMO(Online Merges with Offline)」体制構築に向けた施策の一環として、今回の直営店開店を決めたそうです。

リスク保証型のスマホあと払い決済「AFTEE(アフティー)」がDOKODEMOで利用可能に

 台湾への進出も進める株式会社ベガコーポレーションは、同国の顧客ニーズをくみ取ったスマートフォンあと払い決済システム「AFTEE」を2018年12月に導入しました。

 DOKODEMOの配送実績の約30%を占める台湾では、クレジットカード利用率が低く、代わりに現金決済が多いのが特徴です。今回のAFTEE導入は、そのような決済ニーズに応えるためのソリューションの一つであり、同国におけるさらなる顧客満足度向上を目指す同社の意気込みがうかがえます。

LOWYAにてアプリ不要のハイビジョンARを実装

 LOWYA公式サイトでは、商品の精密な3Dモデルを使ったAR体験ができるレイアウトシミュレーションサービス「LOWYA AR」が利用可能です。同サービスでは、スマートフォンカメラなどを使って、部屋の中に実際の商品を実寸大で投影して試し置きすることで、レイアウトやコーディネートを確認できます。

 オンラインでは困難だったインテリアの具体的な購入イメージ提供を可能にする同サービスは、ECにおける家具・インテリア販売の可能性をより広げていくことでしょう。

株式会社ベガコーポレーションの気になるトピックス

 そのほか、株式会社ベガコーポレーションの気になるトピックスを以下にまとめました。

2023年5月25日:【期間限定】6月8日(木)からの4日間でLOWYAが「608 Home Party」を開催!

 ベガコーポレーションが運営する、家具・インテリアブランド「LOWYA」は、 毎年608(ロウヤ)の日に、ファン感謝祭を開催している。5年目を迎えるファン感謝祭では、ブランドとして初となる「608 Home Party」を、オンラインとリアルの2会場にて、2023年6月8日(木)より4日間開催した。

2023年4月14日:【複数店舗展開中】イオン茅ヶ崎中央店に3店舗目となるインテリア売場が誕生

 ベガコーポレーションは、自社が運営する家具・インテリアのECサイトLOWYAを軸に、3店舗目となる、卸売販売を開始することを発表。

2023年2月15日:【期間限定】中部・近畿・中国・四国エリアに初上陸!新生活に向けたコーディネートをご提案

 ベガコーポレーションが運営する家具・インテリアのECサイトLOWYAは新生活に向けた家具の展示を、中部、近畿、中国、四国エリアのイオンスタイルとイオン店舗にて順次開始することを発表した。

2022年11月24日:インスタLiveで商品会議!視聴者さまと一緒にカラー選定したソファが完成

 ベガコーポレーションが運営する、家具・インテリアのECサイト「LOWYA」は、 2022年11月24日(木)より「みんなで商品企画第1弾」として新商品のソファを3色展開で販売。

2021年12月16日:台湾へ向けLOWYA商品の越境販売をスタート台湾大手EC 、PChomeグループの比比昂株式会社(bibian)と提携

 ベガコーポレーションが運営する家具・インテリアのECサイトLOWYAは、台湾大手 EC モール運営会社 PChome Online Inc.のグループ会社、比比昂株式会社が提供する「BB チェックアウト」を導入し、台湾の顧客に向けてLOWYA商品の越境販売を開始した。

まとめ

 この記事では、LOWYAを国内外に展開する株式会社ベガコーポレーションのEC戦略について詳しく解説しました。

 同社はモール型ECへの依存脱却を実現した企業ですが、いきなりモール型ECと縁を切るのではなく、徐々に比率を自社ECへ傾かせるような穏便な方法で、強力なブランド力を獲得することに成功しています。

 また、越境ECプラットフォームであるDOKODEMOの売上と利用者数も着実に成長しており、日本のメーカーから信頼される、強力なサービスとして今後も利用されていくことでしょう。

 創業以来初となる直営店もOMO形態を実現するうえでの重要な役割を果たすと見込まれ、これからの動向にも期待したいところです。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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