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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

エービーシー・マートのオムニチャネル施策 独自の店舗力をECに展開

 シューズ販売を手掛けるエービーシー・マートは、今や日本全国に店舗を構える企業ですが、独自の店舗力を自社ECにも活用している点が注目されています。今回は、同社の店舗事業とEC事業がどのように相乗効果を発揮しているのかについて解説します。

 日本全国でシューズ販売を手がける株式会社エービーシー・マートは、近年のEC需要拡大に伴い、独自の店舗力とブランド力を生かしたデジタル戦略を展開している点が特徴です。

 この記事では、同社がどのようなデジタル戦略を手がけているのか、具体的な施策とともに解説します。

株式会社エービーシー・マートの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社エービーシー・マートの基本情報について確認します。

株式会社エービーシー・マートの企業情報

 以下の表は、株式会社エービーシー・マートの企業情報をまとめたものです。

社名 株式会社エービーシー・マート
本社所在地 東京都渋谷区道玄坂一丁目12番1号渋谷マークシティ ウェスト19階
設立年月 1985年6月
代表者名 代表取締役社長 野口実
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 199億7,200万円
おもなグループ会社
  • ABC-MART KOREA,INC.
  • ABC-MART TAIWAN,INC.
  • LaCrosse Footwear,Inc  など

株式会社エービーシー・マートの事業内容

 株式会社エービーシー・マートは、自社ブランド「ABCマート」の実店舗と自社EC「ABC-MARTオンラインストア」などで靴の販売を手がける企業です。8,000人を超える従業員と1,000以上の店舗数を誇り、日本全国はもちろん、世界4ヵ国に展開するグローバル企業としても活躍しています。

 同社の成長は、以下4つの戦略を軸にした卓越した現場力の集積によって支えられてきました。

  • 店舗戦略
  • 商品・ブランド戦略
  • 運営戦略
  • 人材育成戦略

 店舗戦略においては、地域のニーズや商圏に合ったスピーディな出店や柔軟な対応力が強みです。

 また、商品・ブランド戦略では、自社ブランドの保持、強化、育成や海外ネットワークを活かした開発情報の取得による商品戦略、ナショナルブランドとの連携などに力を入れています。

 そのほか、オムニチャネル戦略やアプリサービス、IT投資などの運営戦略、現場経験やワークライフバランスの実現に重きを置く人材育成戦略なども、同社を支える戦略といえるでしょう。

株式会社エービーシー・マートの沿革

 以下の表は、株式会社エービーシー・マートの沿革をまとめたものです。

沿革
1985年 東京都に株式会社国際貿易商事設立
1990年

有限会社エービーシー・マート設立

上野アメ横、渋谷にABC-MART4店舗出店

2000年

1995年にHAWKINSの商標権を取得し、レザースニーカー、HAWKINS SPORTを展開

ジャスダック市場に株式上場

2002年

株式会社エービーシー・マートを吸収合併

卸売から小売へ業種転換開始

株式会社エービーシー・マートに社名変更

8月には100店舗達成

韓国法人ABC-MART KOREA,INC.設立、韓国にABC-MART出店

2005年 レディースブランド「NUOVO COLLECTION」誕生
2012年

米国LaCrosse社を株式公開買付けで買収し完全子会社化

国内初「Danner」アウトレット出店

2013年 国内初靴工場ABC SHOE FACTORY取得
2018年 都市型大型旗艦店ABC-MART GRAND STAGE刷新
2022年 株式会社オッシュマンズ・ジャパン買収

 1985年創業、1990年設立の株式会社エービーシー・マートは、卸売業を手がけつつ、アメ横エリアでのシューズショップ経営を開始しました。

 イギリスのシューズブランド「HAWKINS(ホーキンス)」の商標権を取得し、競合との差別によって活路を見いだした同社は、主軸を卸売業から小売業へ転換し、2002年に国内100店舗を達成します。同年には現地法人を建て、韓国への出店も実現しました。

 オリジナルのレディースブランド立ち上げや、アウトレット形態での出店も経験するなど、シューズ関連の事業を多角的に取り扱い、国内で圧倒的な販売力と流通ネットワークを獲得しています。

 2018年には大型旗艦店の刷新も図るなど、現在も実店舗のブランドを活かしたビジネスを継続しつつ、EC事業にも取り組んでいます。

株式会社エービーシー・マートが実現した、ECに店舗力をもたらすデジタル戦略とは

 圧倒的な店舗力で、瞬く間に日本を代表するシューズショップとなった株式会社エービーシー・マートですが、デジタルシフトに伴い、同社ではECの強化も進めています。

 現場力を重視する同社では、ECを展開するにあたってどのようなデジタル戦略を実践しているのでしょうか。

スマホアプリを中心としたオムニチャネル施策

 株式会社エービーシー・マートの近年のデジタル施策として最も大きな成果を挙げたのが、自社の公式アプリです。ECと店舗利用の促進を目指して2018年に自社アプリをリニューアルし、実店舗とECで共通ポイントが貯まる会員証機能やお気に入り登録機能などを追加しました。

 同アプリでは特に、ECで注文した商品を店舗で受け取ったり、店舗から直接自宅まで配送したりといったオムニチャネルサービスを利用することができる点が高く評価されました。リニューアルから約1年で350万ダウンロードを記録し、バックオフィスの在庫管理効率化や顧客満足度の向上などにも貢献しています。

商品と情報を届けるメディアサイト「ABC-MART GRAND STAGE ONLINE STORE」の開設

 デジタル市場におけるより大きなシェア獲得に向け、株式会社エービーシー・マートは同社運営のメディアサイト「ABC-MART GRAND STAGE ONLINE STORE」をオープンしました。

 既存のオンラインストアとは独立して情報を発信するメディアとして立ち上げられた同サイトでは、シューズのみならずファッションアパレルなども数多く取りそろえており、トレンド商品や流行を発信しています。

 同サイトにおいては、商品のラインナップやUI、UXは差別化しているものの、会員データは社内で共通化されており、商品の買い回りもシームレスに行えることから、顧客は同じエービーシー・マートのECサービスとして、ストレスフリーで購買が可能です。

 株式会社エービーシー・マートの強みは、独自の流通ルートと全国に店舗を構えていることです。同メディアをメディアコマース化することで、新しい顧客層の獲得を目指す取り組みといえるでしょう。

株式会社エービーシー・マートの近年の動向

 ここでは、株式会社エービーシー・マートの近年の動向について、事例をもとに解説します。

「デジタル基幹システム」実装でデジタルコマースを推進

 株式会社エービーシー・マートは2021年6月、フューチャーアーキテクト株式会社が開発した「デジタル基幹システム」を実装し、デジタル施策のさらなる強化に向けた環境構築を進めたことを発表しました。

 フューチャーアーキテクトの基幹システムでは、店舗やECサイト、スマホアプリなど、さまざまな販売チャネルからの受注データの一元管理が可能です。顧客の保有ポイントや店舗在庫、バックオフィスの受注・出荷といったデータをリアルタイムに連携できるため、実店舗と同じスピード感でデジタルチャネルを展開できるようになりました。

「TIG LIVE」を使ったライブコマースを開始

 2020年より、株式会社エービーシー・マートはオンラインでの接客や商品紹介を実施するライブコマースを開始しています。

 EC上でも店舗と変わらないサービスを提供するため、同社が導入したのが「TIG LIVE(ティグライブ)」と呼ばれるサービスです。管理システムと同サービスを連携させることで、ユーザーからのコメントやリクエストに適した商品を検索・紹介することが可能になりました。

 TV通販のような台本ありきのライブコマースではなく、その場の質問やニーズに応じた商品を、店舗在庫から検索して紹介できる点が最大の特徴です。

2022年2月期のデジタル売上高、約9%増の約224億円

 株式会社エービーシー・マートの2022年2月期のデジタル売上高は、前期比9%増でした。

 今回のデジタル売上高増の要因として、同社がアピールしたのはオムニチャネル施策の成功です。同社は具体的なデジタル売上高の数値こそ公表していないものの、国内販売におけるデジタル売上高構成比は、前期比0.3ポイント減の13.2%だったと公表しています。また、国内売上高は1697億7300万円だったことから、デジタル売上高は224億円と見込まれます。

株式会社エービーシー・マートの気になるトピックス

 そのほか、株式会社エービーシー・マートの気になるトピックスを紹介します。

2022年10月12日:東南アジア初となるベトナムへ進出、ホーチミンに出店

エービーシー・マートは10月12日、海外事業の4カ国目としてベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)に進出すると発表した。グループとしては初の東南アジア進出となる。

2022年7月28日:「店頭デジタルフロントシステム」構築、全1060店に導入

フューチャーアーキテクトとエービーシー・マートは7月28日、ユーザーエクスペリエンスの向上を目的とした「店頭デジタルフロントシステム」を構築し、6月にABCマート全1060店に導入したと発表した。

2022年6月2日:90周年を迎えたアウトドアシューズブランド“DANNER”が“アウトドアフィールドの楽しさを追求”をテーマにブランドとして初のイベント「DANNER CAMP」開催決定

 アメリカの名門シューズブランド〈DANNER/ダナー〉は、ライジングフィールド軽井沢にて“アウトドアフィールドの楽しさを追求”をテーマにしたブランド初のイベント「DANNER CAMP」を開催。

2022年3月31日:ABC-MARTとアシックスで共同開催!抽選でランナーにとって夢の舞台“国立競技場”で走れる「RUNNERS EXPO ABC-MARTマラソン」

 株式会社エービーシー・マートはアシックスジャパン株式会社と共同で、ランニングイベント「RUNNERS EXPO ABC-MARTマラソン」を開催。

2022年2月10日:オッシュマンズ・ジャパンを買収、アウトドアやスポーツ分野へ参入 

エービーシー・マートが、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)の子会社であるオッシュマンズ・ジャパンを買収すると発表した。

2021年3月26日:サッカー、バスケットボール、ランニング、フィットネス、ゴルフなどスポーツパフォーマンスに特化した新業態「ABC-MART ATHLETE自由が丘店」OPEN!!

 株式会社エービーシー・マートは、ファッション、アクティブをコンセプトとしたスポーツパフォーマンスのサポートショップとして、2021年3月27日(土)東京・自由が丘に『ABC-MART ATHLETE』オープン。

まとめ

 この記事では、株式会社エービーシー・マートのビジネスモデルや近年のデジタル戦略の成功について、具体的な事例を交えながら解説しました。同社はシューズショップとしての本格的な業界参入以降、徹底した現場主義を掲げ、強力なブランド力と顧客の獲得を実現してきた会社です。

 近年はECへの注目が集まるなか、同社が得意とする現場力をECでも発揮できるよう、オムニチャネル施策の実施やライブコマースの実践など、積極的なデジタル活用を推進しています。

 現場力が強みの企業はオンラインの時代では生き残れない、といわれることもありますが、同社は施策に工夫を凝らすことによって、EC市場においても競合との差別化に成功することができることを証明してきました。

 今後もECと店舗を融合させ、ほかの企業にはできない独自の強みを発揮していくことでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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