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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

おさえておきたいEC・通販先進企業

多様なブランド展開で安定経営を実現するパルのEC戦略


 ジャンルにとらわれず多角的な事業展開を実現する株式会社パルは、若年層をターゲットとしたEC戦略に力を入れ、組織の成長を実現しています。この記事では、自社サイト「パルクローゼット」での取り組みやEC戦略、最近の動向などを中心に紹介します。

 株式会社パルは、若年層をターゲットとしたアパレル展開で成長を遂げてきた企業ですが、さまざまなジャンルの商品を扱うことで、安定経営を実現しています。

 この記事では、同社の概要や沿革、EC戦略をどのように実際の施策や制度に活かしているのか、などについて解説します。

株式会社パルの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社パルの基本的な企業情報や事業の内容について、確認しましょう。

株式会社パルの企業情報

 以下の表では、株式会社パルの基本的な情報をまとめています。

社名 株式会社パル
本社所在地 大阪府大阪市中央区道修町3丁目6番1号 京阪神御堂筋ビル10階
設立年月 2016年4月
代表者名 松尾 勇
株式公開 未上場
資本金 1億円
おもなグループ会社
  • 株式会社パルグループホールディングス
  • 株式会社ナイスクラップ
  • 株式会社マグスタイル など

株式会社パルの事業内容

 株式会社パルは、若年層をターゲットとした数多くのアパレルブランドを展開する衣料品販売企業です。10代〜30代をメインターゲットとしており、おもなブランドとしては「CIAOPANIC(チャオパニック)」や「Kastane(カスタネ)」、「mystic(ミスティック)」などが挙げられます。

 近年は生活雑貨の取り扱いを増やしつつあり、「3COINS(スリーコインズ)」や「Salut!(サリュ)」など、アパレル以外の商品を扱う店舗の売上も好調です。

株式会社パルの沿革

 以下の表は、株式会社パルの沿革を簡単にまとめたものです。

年月 沿革
1973年10月

株式会社スコッチ洋服店のカジュアル部門を分離し、株式会社パルを設立

大阪市中央区に本社を設置

大阪府堺市のダイエー中百舌鳥店にてジーンズショップ「パル青山」の営業を開始

1985年9月 アクセサリーショップ「パルコレクション」を大阪市北区の阪急三番街に出店
1994年4月 300円ショップ「3COINS」を大阪市北区茶屋町に出店(雑貨事業の出店開始)
1997年2月 ユーズド業態「CIAOPANIC USED」を大阪市天王寺区の天王寺MIOに出店
1981年5月 イタリア系インポートショップの店舗展開を事業目的に英・インターナショナル株式会社を設立
2006年3月 株式会社東洋産業商会の株式を100%取得
2015年1月 シンガポールに現地法人「PAL Holdings(Singapore)Pte.Ltd.」を設立
2016年9月 会社分割の方式により持株会社体制に移行(持株会社の株式会社パルグループホールディングス、衣料・雑貨事業会社の株式会社パル)

 元々ジーンズショップとして設立された株式会社パルは、創業当初より多角的なアパレル展開を進め、早期からユーズド商品や生活雑貨に特化したショップを出店してきました。

 1981年には同社初の海外法人を設立したほか、2000年代以降は吸収合併を進め、2016年には持株会社体制に移行しています。

 同社は現在、株式会社パルグループホールディングスの子会社として、アパレルブランドの運営に携わっています。

株式会社パルの強みやEC戦略

 大阪に本社を構えながら、全国エリアで強力な実店舗集客に成功している株式会社パルですが、近年はEC需要の増加に伴い、巧みなEC戦略を交えたビジネスモデルを構築しています。

株式会社パルのおもなビジネスモデル

 まずは、株式会社パルの基本的なビジネスモデルについて確認しておきましょう。

 同社ではハイファッション層、ベーシックファッション層、マスファッション層をコアターゲットに設定し、アパレルブランドの展開を進めています。

 アパレルはトレンドの波が激しく、流行次第で売上が簡単に傾きがちな業界ともいわれます。同社は特定の層に偏らない多角的なアパレル展開を進めてきたことで、トレンドが変わっても安定した業績を上げることができる仕組みを整えています。

 また、価値そのものに重きを置く「ライフスタイル提案型」のブランドを誕生させることで、トレンドや時代の波に左右されづらい事業形態を構築してきました。

株式会社パルのオムニチャネル施策について

 株式会社パルでは、前述の強力なビジネスモデルを支柱としながら、近年のEC需要増加に対応すべく、独自のオムニチャネル施策もスタートさせています。

 同社の強みでもある全国展開の実店舗とインターネット通販「PALCLOSET(パルクローゼット)」を融合させるオムニチャネル体制を本格始動させ、店舗とECで顧客データを統合し、積極的なデータ活用を進めています。

 具体的には、公式アプリやSNS、メールマガジンなどを駆使して顧客情報を可視化し、顧客体験を最大化するためのサービスを提供しています。また、顧客との接点創出やつながり強化に注力することで、オンライン・オフラインの相互長期利用を目指しています。

 さらに、若年層への訴求力を最大化させるべく、同社では社内インフルエンサー制度を採用しています。社員がインフルエンサーとなって、SNSを通じてターゲット層へ積極的にアプローチすることで、ECサイトや店舗への集客を促進することが目的です。

 インフルエンサーとして活動する社員には、インセンティブとして彼らのフォロワー数に応じた給与を支給するなど、同社ではSNS運用が重視されていることが伺えます。

 SNSは個人同士がつながるサービスと思われがちですが、パルのようにSNSを戦略的に活用する企業は増えつつあります。特に同社のようにターゲットが若年層という企業では、SNS戦略を重視する姿勢を大切にしたいところです。

株式会社パルの最近の動向

 ここでは、株式会社パルの最近の動向について、まとめて解説します。

CXプラットフォーム導入で直営サイト売上が4倍まで成長

 2016年より本格的なEC導入を進め、オムニチャネル化を実現した株式会社パルは、CXプラットフォーム導入から数年で、直営サイト売上を約4倍にまで成長させました。

 EC化を成功させるうえで大切なのは、ただECサイトを開設するだけでなく、実店舗と同様の顧客体験をECサイトでも提供することです。

 同社ではこの点を踏まえ、店舗スタッフがSNS上でコーディネートを積極的に発信したり、Web接客の仕組みを整備して顧客とのOne to Oneのコミュニケーションを重視したりと、主体的なEC活用を進め、成果につなげました。

パルグループ全体で2022年2月期に前期比約38%増の328億円を達成

 持株会社に移行した株式会社パルグループホールディングスでは、アパレルが不振と呼ばれる時代においても堅実な成長を遂げています。2022年2月期の売上は、前期比約38%増の328億円となっており、ターゲットの需要を的確に捉えた施策が功を奏したことが伺えます。

 売上増加の背景としては、自社ECの躍進だけでなく、「ZOZOTOWN」なども駆使した柔軟なEC活用が挙げられます。また、生活雑貨ブランドが衣料分野の落ち込みをカバーするなど、同社の強みであるブランドの多角化も、売上の底上げに寄与しました。

 そのほかにも、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたことによる反動も売上拡大の背景の一つとして考えられます。

 コロナ禍でデジタルシフトを着実に進めた同社は、ECが主役となる今後のマーケットにおいても確かな存在感を示すことになるでしょう。

バーチャル渋谷のハロウィンフェスでパルクローゼットが連携

 株式会社パルグループホールディングスと大手通信会社のKDDI株式会社は、2022年10月にメタバース空間「バーチャル渋谷」を公開しました。また、仮想空間上に自社EC「パルクローゼット」と連動させた特設空間も展開し、従来の平面的なECサイトとは異なる、メタバース空間ならではの来店体験を提供しました。

 さらに同イベントでは、パルグループが展開する25ブランドのおすすめコーディネートをまとったモデルの登場や、映画会社ユニバーサルピクチャーズとコラボレーションしたスウェットをまとったスペシャルアバターの提供、インフルエンサーによるライブコマースなど、さまざまな施策を実施しました。

 メタバース市場の潜在ターゲットである若年層は、パル株式会社にとってもコアターゲットであり、両者の相性を再確認できるイベントになったといえるでしょう。

株式会社パルの気になるトピックス

 そのほか、株式会社パルの気になるトピックスについては以下でまとめています。

2024年4月8日:パルの新物流施設「PRSC」が稼働開始 約50台のロボットにより従来比3倍の注文処理が可能に

 パル、アッカ・インターナショナル、Exotec Nihonの3社は、「PAL CLOSET」のフルフィルメント効率化および顧客体験の向上を目的とした施設「PAL CLOSET Robotics Solution Center」の稼働開始を発表。これまで複数サイトに分かれていた物流拠点を、大和ハウス工業の物流施設「DPL平塚」に集約する、約50台のロボットを活用するなどして、従来比3倍の注文処理を実現している。

2024年4月4日:パル、春のパルクロウィークで「NIAU AI」をリリース AIフェイスチェンジなどのサービスを提供

 パルは、2024年4月4日、公式オンラインストア「パルクローゼット」にて「NIAU AI(ニアウエーアイ)」のリリースを発表。インフルエンサースタッフを生成元とした200名を超えるスタッフの「ファッションメイト」が、ファッションに関する質問に回答する。

2024年3月1日:パル、ワズアップ!の新機能「店舗版 再入荷お知らせ」を先行導入 LINEで近隣店舗の商品入荷を通知

 パルは、ファナティックが提供するLINEの自動配信ツール 「ワズアップ!」 において、実店舗の再入荷商品や予約商品の入荷通知をLINEで配信できる新機能を先行導入した。これにより、ユーザーは近くの店舗に希望する商品が入荷した際にLINEで通知を受け取り、実際に商品を確かめてからの購入検討が可能となる。

2023年10月24日:パル、社内インフルエンサーを生成元としたAIスタッフによる接客「ファッションメイト」を開始

 パルは、AIを活用したInstagramのマーケティング支援を行うAIQ(アイキュー)とともに、スタッフといつでもどこでもデジタル上でユーザーとコミュニケーションを取れるもう一人の「わたし」を創出するスタッフDX「ファッションメイト」をリリースした。

2023年3月1日:パル、創業50周年を迎えコーポレートロゴを一新

 株式会社パル(本社:大阪府大阪市中央区道修町3-6-1 代表取締役社長 松尾勇)は、創業50周年を迎え、さらなる成長と新たな挑戦への決意を込め、コーポレートロゴを一新いたします。

2023年2月1日:【PAL CLOSET】メイクとファッションをトータルで提案する新コンテンツが公開

 パルが運営する公式オンラインストア「パルクローゼット」にて、ヘアメイクアップアーティストの松田未来さんが提案する春のお出かけメイク術を紹介した新コンテンツを公開した。

2022年11月29日:ファッション通販サイト「PAL CLOSET」に、新たに支払い期限1ヶ月の後払い決済『ゆるパル払い』が追加

 株式会社パルが運営する公式ファッション通販サイト「パルクローゼット」では、商品配送後に代金をお支払いいただく決済方法【GMO後払い】に、新たに支払い期限1ヶ月の後払い決済『ゆるパル払い』が利用可能となった。

2022年10月14日:【PAL CLOSET】子育てしながら楽しめるおしゃれ情報を提案する新コンテンツが登場

 株式会社パルが運営する公式オンラインストア「パルクローゼット」では10月14日より新コンテンツ【MAMA CLOSET ママクロ!】を公開。子育てしながら楽しめるおしゃれ情報を提案していく。

2022年10月13日:パルグループHD、アパレル回復 3〜8月期は過去最高業績

パルグループホールディングス(HD)の2022年3〜8月期連結業績は、売上高が前年同期比23.7%増の781億円、営業利益が同2.7倍の75億円、経常利益が同2.8倍の77億円、純利益が同3.3倍の48億円となり、すべての項目で過去最高を達成した。

2022年10月6日:奈良県下市町で地方創生プロジェクトをスタート 廃校予定の下市南小学校を利活用し融合型商業施設としてリニューアル

3COINS、CIAOPANIC、Kastane等のブランドを運営するパルグループホールディングスは、奈良県吉野郡下市町で2023年3月に廃校となる下市南小学校の利活用を行うと発表した。

2022年8月30日:【3COINS】ファッションブランド「THEATRE PRODUCTS」がディレクションするライフスタイルブランド「3C」を2022年9月5日(月)より販売開始

 雑貨ブランド「3COINS」(スリーコインズ)では、ファッションブランド「THEATRE PRODUCTS」ディレクションによる新ライフスタイルブランド「3C」を販売開始。

2022年8月16日:【PAL CLOSET】「似合う」がわかればおしゃれは楽しい!お洋服選びの参考になる骨格診断コンテンツを公開

 株式会社パルが運営する公式オンラインストア「パルクローゼット」では2022年8月12日(金)より骨格診断コンテンツを公開。

まとめ

 この記事では、株式会社パルの事業内容やビジネスモデル、そしてどのようなEC戦略を展開しているのかについて解説しました。

 関西に本社を構え、アパレルブランドや生活雑貨を全国で販売している同社は、実店舗のネットワークとECの集客力を巧みに融合させ、成果につながるオムニチャネル化を成功させた企業です。

 同社が培ってきた強みでもある多角的な事業展開は、アパレル不振の時代やトレンドの移り変わりが激しい現代の市場を生き抜く力として、今後も同社を強力に支えていくことでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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