顧客体験向上とインセンティブ設計が鍵となる自社アプリ
セッション冒頭で「スマートフォンアプリは高いエンゲージメントツール」と語る神田氏。Sensor Tower社が発表した「Mobile Market Forecast 2021-2025」によると、2019年には1,160億であったスマートフォンアプリのダウンロード数が2020年には1,430億を記録、2025年には2,300億ダウンロードにまで増えると予測されていると説明する。
さらに神田氏は、スマートフォン経由で人々が現在オンラインにどれだけの時間滞在しているかを解説。ニールセン デジタルの調査によると、2019年には1日あたり3時間46分、そのうちの92%がスマートフォンアプリを経由したものだと言う。
「コロナ禍にはさらに利用時間が長くなり、2021年には動画やSNS、コミュニケーションツールを合わせた利用時間は5時間となっています」(神田氏)
コロナ禍において利用が増えたスマートフォンアプリのカテゴリーとしては、「小売ショッピング」がトップを記録している。
「回答者のおよそ3分の1が、小売ショッピングの利用が増えたと回答しています。ZOZOTOWN、楽天市場、AmazonといったECモールや、各ブランドが提供する自社アプリを活用して、外出せずにショッピングをする方が増えています」(神田氏)
神田氏は、増加の背景を「顧客がデジタルを受け入れるようになったこと、かつスマートフォンを活用したほうが生活が便利になることを認識したから」と分析。では、自社アプリを制作してリリースすれば顧客数や売上が増えるのかと言うと、それほど容易なものではない。
「自社アプリを使うことで生まれる価値は何なのか、とくに顧客体験の向上や自社アプリ利用によるインセンティブをきちんと設計しましょう」(神田氏)
実店舗やブランドの運営にかかわるスマートフォンアプリは、自社アプリだけではない。顧客とコミュニケーションを図るべくLINEやTwitterなどのSNSを活用するケースや、最初の接点を作るためにGoogle マップなどの地図アプリ、検索アプリなどで目に留まるような工夫も必要だ。
このように顧客の選択肢が多岐にわたる中で、自社アプリはどのような立ち位置で、どのような役割を担っていくべきなのだろうか。神田氏は次のように分析する。
「自社アプリ、SNS、ウェブの使い分けやそれぞれの位置づけについては、当社にもよくご相談をいただきます。自社アプリは『顧客と深くつながるためのチャネル』として考えていただくと良いでしょう。スマートフォンのホーム画面にアイコンがあれば、すぐにタップできます。直感的に来訪をうながすことができる点がポイントと言えます」(神田氏)
自社アプリは、顧客をロイヤルカスタマーに引き上げる目的で活用されることが多い。しかし、まず顧客に「ダウンロードしてもらう」というハードルが存在するのも事実だ。神田氏は「ウェブ検索から流入した新規顧客をどのようにして自社アプリ利用者に引き上げていくのか。ここに向けて施策展開をするのがポイント」と説明した上で、こう付け加えた。
「自社アプリ運用においては、適切なメッセージや有益な情報を届けることがとても重要になります」(神田氏)
アパレル・雑貨 タッチポイント強化に成功したYappli活用事例を紹介
続いて、神田氏は「Yappli」導入事例を5つ紹介した。
1. アンダーアーマー公式アプリ
アンダーアーマーは「タッチポイントの強化」と「会員証のデジタル化」を実現するために、Yappliの活用を選択。スマートフォンを肌身離さず持つ顧客の多さに目を向け、「ポイントカードを忘れてしまってポイントが付与できない」「ポイントカードを紛失してしまった」といったように、顧客にとって損となる事態を回避することが可能となった。
加えて、アンダーアーマーでは公式アプリをダウンロードした直後に特典クーポンがされる仕様となっていると神田氏は説明する。
「ダウンロード直後のクーポン配布は、店頭スタッフが接客訴求する際にアピールポイントとして作用します。また、顧客も『すぐに利用できる』というメリットがあるため、ダウンロードをうながす上では効果的な施策と言えます」(神田氏)
同ブランドでは、ダウンロード以降もブランドのストーリーを伝えたり、顧客が登録した属性に応じた商品紹介やショップブログ更新のお知らせを通知したりといった方法で継続的に接点を創出。ブランドに親しみを持ってもらえるような工夫を施している。
その結果、アンダーアーマーでは公式アプリ経由でのEC流入数がウェブ・SNS経由の9倍を記録。メルマガと比較した購入回数は1.2倍、顧客単価は1.45倍と着実に自社アプリの効果を発揮している。
2. AZUL BY MOUSSY公式アプリ
AZUL BY MOUSSYは、「実店舗とECの相互送客を活性化したい、情報発信を一元化したいという考えで自社アプリの導入を決断した」と神田氏は解説。自社アプリから行うプッシュ通知の開封率はおよそ40%を記録していると言う。
「メルマガを運用されている方であれば、この数字が驚異的なものであるとご理解いただけるのではないでしょうか。Yappliでは、開封してもらうための工夫や改善も管理画面から容易に行うことができるため、高い成果に結びついていると考えています」(神田氏)
3. SAC'S BAR(サックスバー)公式アプリ
バッグ・スーツケース・財布などを扱うSAC'S BARは、オムニチャネル化と顧客とのつながり強化を目的に公式アプリを導入した。コンテンツの提供はもちろんながら、実店舗・EC共通のポイントプログラムを整備することでアプリをハブとして活用。「STAFF START」との機能連携を活用することで、オンラインの集客向上にもつなげた結果、ユーザー数120%を達成している。
単品通販では顧客単価増 食品業界でも活用できる自社アプリ
4. DERMED(デルメッド)公式アプリ
福岡で化粧品の単品通販を行うDERMEDでは、顧客の商品購入を容易にするために自社アプリの開発を検討していたが、開発負担を軽減すべくYappli導入を決定。神田氏は「メイン顧客層が50代であったため、スマートフォンアプリ利用に不慣れな方もいると考え、まずはダウンロードするメリットを訴求するところから始めた」と同社の施策を説明する。
同社は限定の美容コラムを発信するなどコンテンツ強化に注力した結果、公式アプリ経由のリピート率を70%にすることに成功。購入単価も10%以上向上していると言う。
5. ピエトロ公式アプリ
ドレッシングやパスタソースなどの調味料を製造・販売するピエトロでは、「アプリを点在する顧客接点のハブにしたい」「ECを強化したい」「ピエトロのファンに使ってほしい」という思いから、公式アプリの展開を開始。2021年4月に公式アプリをリリースし、2022年1月からは実店舗・EC共通のポイントサービスを始めている。
外部システム連携、ユーザー単位の顧客分析、CRMも容易にする「Yappli」
こうした自社アプリの開発を容易にするアプリプラットフォーム「Yappli」は、クラウド型・ノーコードでアプリ開発ができ、さまざまな運用・施策展開ができる点が特徴と言える。
「多彩な機能から自社に必要なものを選択し、スピーディーにアプリローンチが可能です。年間200以上の製品アップデートを行っているため、常に最新の仕組みを活用できるほか、支払いもサブスクリプション形式となるため、大きな初期コストがかかるといった心配もありません。
『Yappli』では、現在API接続による外部システムとの連携に力を入れています。また、Yappli内に蓄積したデータの活用を推進するため、アプリ内の行動データや属性データをユーザー単位で分析できる機能『Yappli Data Hub』の提供も行っています。すでに皆様がお使いになっているサービスとアプリをつなげることで、より高度な施策ができるようになっています」(神田氏)
すでに同機能を活用している三陽商会では、「購入単価27%増、購入回数17%増、セッション回数16%増という結果が出ている」と語る神田氏。ヤプリは、ユーザー単位で分析したデータからより効果的なCRM施策につなげるべく、2021年10月にはノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」をリリースしている。最後に神田氏は同社のサポート体制について言及し、セッションを締めくくった。
「『Yappli CRM』で施策を実施する際の設定はノーコードで可能です。また、CRMの考えかたについてのトレーニングや勉強会も定期的に実施しています。専門チームが伴走しながらサポートしますので、ご安心ください」(神田氏)