ファッションに悩む顧客のエージェントとなることを目指し、2014年にパーソナルスタイリングサービス「SOÉJU personal(ソージュ パーソナル)」を開始したモデラート株式会社。カウンセリングを通して顧客の課題や要望を耳にする中で、「本当に顧客に合うものをお勧めしたい」という想いから2018年に立ち上げられたのが、アパレルブランド「SO ÉJU(ソージュ)」だ。自社ECのみで商品を販売し、店舗ではなくサロンという形で顧客接点を設けた理由や、シンプルな服の良さを多くの人に伝えるために取り組んでいること、2022年3月にビューティブランド「IMAI(アイマイ)」を立ち上げた経緯や今後の展望について、同社の代表取締役 市原明日香さんに話を聞いた。
CRM担当の経験から体験軸のサービス構築へ
モデラートを立ち上げる前は、ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社でCRMに従事していた市原さん。顧客に「自分らしい服を着てほしい」という気持ちを持ちながらも、いきなりものづくりに挑むのではなく、SOÉJU personalから事業をスタートさせたのは、「これまでのキャリアでお客様と強固な関係を築く大切さを感じていたから」だと語る。
「SOÉJU personalでは、お客様の課題をスタイリストがヒアリングし、白いキャンバスに絵を描くようにアイテムをセレクトしてスタイリングを行います。中立的な立場からアドバイスすべく、サービス開始当初は自社でアパレルブランドを立ち上げることは想定していませんでした。しかし、サービスを3年ほど運営していく中で『お客様の予算に合 うアイテムを見つけるのが難しい』『アイテムは見つかっても在庫が確保できない』といったことが生じ、お客様に満足いただくには理想とするアイテムを紹介でき、かつ在庫コントロールができる環境が必要なのではないかと考えました。これがSOÉJU立ち上げのきっかけです」
2018年にブランド立ち上げを決心した以降は、SOÉJU personalで出会う顧客からニーズを探りつつ、資金集めに奔走した市原さん。当初から顧客と直接接点を持つ場所は「店舗」ではなく「サロン」という形で、そしてものを届けるのはD2Cで、と決めていたそうだ。それはどういった理由からなのだろうか。
「私は立地とデータ収集の観点から、リアルの顧客接点を『目的来店』の場にしたいと考えていました。今は代官山の路地にオフィスとサロンを近接する形で構えていますが、店舗を運営しようとすると多くの人の目に触れる大通り、つまり賃料の高い場所にスペースを借りなければなりません。すると運営費がかさみ、商品価格を上げざるを得なくなってしまいます。SOÉJUでは上質なものをできるだけリーズナブルな価格でお届けしたいと考えていたため、このような形態を取ることにしました。
また、ふらっと立ち寄る場ではなく予約制という形を取ることで、お客様からデータを収集しやすくなります。オンラインで予約をいただく際に、比較検討したい商品や求めているアドバイスを記載していただくことでこちらも事前準備ができるため、ご来店時に最高の体験を提供することが可能です」
SOÉJU personal立ち上げ当初よりオンラインカウンセリングも取り入れていたが、「多くのお客様が対面でのカウンセリングを望んでいたことも、サロンを構える決め手のひとつであった」と言う市原さん。
「カウンセリングでは体型の悩みなど、センシティブなご相談も寄せられます。画面越しよりも目の前にいるスタイリストからアドバイスを受けるほうが安心できることも、対面を希望される理由なのではないかと想像しています。スタイリストとしても、話す際の雰囲気や佇まいも踏まえてアドバイスができるため、対面で情報交換やカウンセリングができる場は欠かせません」