2018年に誕生し、スポーツテクノロジーとクリエイティブを融合させたものづくりを行うD2Cブランド「TENTIAL」。アスリートの競技生活における「競技時間外」のコンディション向上に目を向け、インソールのみならず、リカバリーウェア「BAKUNE」やセミパーソナライズ枕「BAKUNE MAKURA」など、さまざまなプロダクトを発売している。
クラウドファンディングサイトなども活用しながら、着実に熱狂的なファンを獲得する同ブランドは、いったいどのような思想を持っているのか。顧客コミュニケーションにおいて意識していることやブランドの今 後について、株式会社TENTIAL 代表取締役 CEOの中西裕太郎さんに話を聞いた。
課題解決のためにメディア運営からD2Cへ
「スポーツと健康を循環させ、 世界を代表するウェルネスカンパニーを創る」をビジョンに、D2Cでブランド展開を行うTENTIAL。同ブランドを設立した中西さんは、学生時代にプロサッカー選手を目指してスポーツに打ち込んできた経験を持つ。高校時代に発症した病を契機に、別のキャリアを模索する中でITベンチャーの立ち上げに参画。デジタルの世界に魅了されながらも、自身がスポーツ人生の中で培ってきたコンディショニングのノウハウをどこかで活かすことができないかと考えたと言う。
「スポーツの世界は厳しく目標・成果を求められます。アスリートは競技中に最大のパフォーマンスを発揮できるように生活全体でコンディショニングをする習慣を持っていますが、IT業界で多忙に働く人々を見て、この意識をより広く根づかせる必要があるのではないかと考えました。ビジネスパーソンの人々も目標や成果を出すにはパフォーマンスを上げるための身体のケアが必須です。そこで、アスリートやスポーツドクタ ーが持つノウハウや知識を提供したいと考え、スポーツ・ウェルネスメディア『SPOSHIRU』を立ち上げました」
SPOSHIRUでは誰もが気軽に運動を楽しめる世界の実現を目指し、肩こりや腰痛など多くの人々が抱える身体の問題を取り上げてきたが、記事の反響や読者の声を聞く中で「足まわり」に悩みや問題を抱える人が多いことに気づいた中西さん。そこで、次のステップとしてLINE@(現 LINE公式アカウント)で専門医に相談ができる「足の相談所」を開設。大きな反響を得たが、同時に情報だけでは問題解決に限界があることを感じたと続ける。
「具体的なソリューションが必要だと考え、プロダクト開発の決断をしました。そして第1弾商品としてリリースしたのが、『TENTIAL INSOLE』です」
はじめは「アスリートの日常を支える」というコンセプトで商品を販売したが、外まわりで1日中歩く営業職や立ち仕事の多い医療や製造業従事者などビジネスパーソンにも役に立つという手応えを感じ、訴求対象を広げたところ売上が伸長。現在は日常用・革靴用・ゴルフ用・子供向け・ランニング用とバリエーションを増やしながら、足まわりの商材はソックスやサンダルなどにまでラインナップを拡充している。また、前出したコンディショニングの観点から、睡眠時に利用するリカバリーウェアや枕、アイマスクなどのアクセサリー類、睡眠サプリメントや入浴剤、プロテインなどさまざまなカテゴリーのアイテムを展開。既存のスポーツメーカーとは少し趣向を変えたアプローチを行う理由を、中西さんはこう語る。
「既存のスポーツメーカーの多くは競技中、つまり試合の間の数分もしくは数時間に最適化したものづくりを行い、各社がしのぎを削っています。当社はそこから少し離れたアスリートの日常生活に目を向け、さらにアスリート以外の人々が抱えている課題ともリンクさせることで差別化につなげました」