中長期的なLTV向上を意識 顧客に合わせたアプローチを行うメルカリ
それでは、具体的にどのようにしてエンゲージメント構築を行うとよいのだろうか。ここからは、山梨氏が従来型の「結合された」マーケティングクラウドからメッセージを受け取った顧客が抱える不満を紹介した。実際に寄せられた声としては、「昨日実店舗で買った商品の割引キャンペーンがメールで送られてくる」「メールとプッシュ通知とLINEで一斉に同じキャンペーン内容が送られる」「在庫切れの商品の案内が届く」といったものがあるが、山梨氏は「Brazeはこれらの課題に対する解決策を持っている」と説明した上でこのように続ける。
「Brazeでは、顧客情報や在庫状況をリアルタイムで取得し、条件分岐を設定することで容易に最適なキャンペーンを案内することができます。各顧客が見ているチャネルを把握し、最適なチャネル、頻度、順番でメッセージを配信することも可能です」(山梨氏)
こうした対応を実現できるのは、Braze内に各チャネルがすでに標準実装されているからだ。ひとつのデータベースとして統合されているため、チャネルごとのデータの分断を防ぎ、各顧客に最適なチャネル選定を行えるようになっている。さらにノーコードで生産性の高いマーケティング施策が実行できる点も、大きなメリットと言えるだろう。
「管理画面を操作するだけで、あらゆるマーケティング施策の設計と実行が可能です。そのため、外部のSIerや社内のIT部門に依頼していた工数を削減するほか、マーケティングチーム内で施策の実行・収益貢献度の振り返りが行えるようになり、高速でPDCAを実現できます。顧客中心のエンゲージメント実現には、目的に合わせたテクノロジーが必要です」(山梨氏)
そして、Braze活用の実例として、メルカリの取り組みが紹介された。ひとつめは「リアルタイムな購買状況の分岐によるレコメンデーション」だ。
多くのECサイトが、カートに入れた商品が一定期間以上購入されない場合にメールなどで通知を送る「かご落ち施策」を行っているはずだ。メルカリもカートに入れた商品が2時間後にまだ販売されている場合は、プッシュ通知でリマインダーを送っている。その際、類似商品についても在庫の有無を確認し、存在する場合はリコメンデーションを加えた上で送付、存在しない場合はリマインダーのみを送付するといった分岐を設けていると言う。
同社はこまめな設定変更により「WHOとWHATを見極めた施策」を実行。プッシュ通知の開封率は業界平均の1.4倍以上を記録している。山梨氏は「グロースのプラットフォームとしてBrazeを活用し、顧客に響く施策を考えながら、数々の施策を素早く動かすことを心がけて積み重ねた結果、数字に反映された」とメルカリ担当者のコメントを紹介した。
加えて山梨氏は、メルカリが実践する顧客ごとに心地よい配信頻度を自動調整する機能を活用した施策を紹介。同施策では、「通知開封率の予測モデルを顧客ごとに構築し、Brazeと連携させることによって配信頻度を自動調整している」と説明した上で、このように強調した。
「ぜひお伝えしたいのは、短期的な売上や成果よりも中長期的なLTVを見据えることの大切さです。たしかに配信頻度を絞ることで、一時的に配信数や開封数といった絶対数は減ってしまいます。しかし、そうすることで顧客の反応率が劇的に向上し、オプトアウトも減少すれば中長期的なLTV向上につながります」(山梨氏)