ECのなんかうまくいかないモヤモヤに PL作成のススメ
ーーリアルビジネスが主流だった企業でも、ECに求められる売上や企業における立ち位置が大きくなってきました。要望に応えていくために、EC店長がレベルアップする秘訣を教えてください。
EC店長の仕事は、大きく「攻め」「守り」のふたつに分けることができます。攻めの代表はマーケティングで、テクノロジーの進化もあってメディアでもよく取り上げられています。守りはカスタマーサポート、物流といったバックヤードの仕事です。これらのツールだけでも数えきれないほどありますよね。EC店長には、個々のツールや業務をある程度理解したうえで全体を統括する、オーケストラの指揮者のような役割が求められています。
企業内で存在感を増すEC店長の仕事にぜひ加えていただきたいのが、予実管理、PL(損益計算書)の作成です。EC事業のマネージャー職には必須のスキルだと考えています。コマースメディアでは、さまざまな企業様にECコンサルに入らせていただいていますが、EC事業のPLを作成している方にはなかなかお会いできません。よって、当社でお手伝いして作成するところから進めていきます。
現状のECにいくつか課題がある背景には、EC店長の仕事が経営に近いレベルになってきているにもかかわらず、企業経営者がECのことをあまりご存じないため、EC店長に丸投げしているという実態があります。EC店長は、デジタルに強いといった資質から抜擢されることが少なくないため、経営に近いレベルの仕事をする準備が整っていない場合が多いのです。上流工程に未整備なところがあるため、現場に課題が散見してしまっているのがECの現状です。
ーー多忙さと権限やスキル不足などがネックになりそうですが、PLの作成までEC店長ができるものですか?
私たちがECコンサルに入らせていただく場合は、かならず「利益」までコミットします。そのためには、広告費、物流費、人件費などかかっているコストをすべて書き出し、PLを作る必要があります。それがないと、次に何をするかが見えてきませんから。
「とにかく売上をあげてほしい」とご相談いただいたものの、PLを作ってみると売上は上がっているけれど利益が出ておらず、まずは赤字をなくすことから始めるというケースもあります。コロナ禍でECが企業にとって重要な事業になったことで、これまで野放しになっていたEC事業にテコ入れが入るようになってきたとも言えます。
経営者は数字の根拠があれば納得するため、PLがあれば共通言語ができます。「こういうツールを導入したいのに、承認が降りないんです」というご相談をいただくこともありますが、数字をもとにした説得ができなかったのではないでしょうか。最強のEC店長とは、「今月のECの利益いくら?」と聞かれて即答できる人です。