薄利多売でも売上は作りやすい!家電ECの特徴とは
――家電ECの特徴を教えてください。
本連載の集客をテーマにした記事にて、扱う商品が「型番商品」か「非型番商品」かによって集客方法は異なると述べました。家電ECは「型番商品」を扱う王道のECと言えます。基本的には、企業の資本力が勝敗を左右します。薄利多売の価格勝負になるため、利益率はかなり低めです。
家電D2Cのようにブランド力で訴求するECも出てきていますが、他社の商品とスペックで比較されることは避けられません。数年前に「ホームベーカリー」が話題になりましたが、あっという間にさまざまなブランドから類似商品が登場しましたよね。独自商品の開発を行った場合でも、ひとつの商品の寿命が短くなりがちなのも家電ECの特徴です。こう言うとネガティブにとらえられがちですが、スペックがさらに良くなった新商品が発売されたら、旧型をキャンペーンで売るといったことができるため、在庫コントロールをしやすいとも言えます。
資本力が勝負と言いましたが、実際にはさまざまな規模の家電ECサイトがあります。小規模から始まったけれど老舗であることから良い仕入れルートを持っていたり、修理して中古販売が行える技術を持っているところは強いです。アフターサービス等を充実させて価格競争にしないというのもひとつの戦略です。
店舗の知名度がなくとも、売りかたの工夫次第でしっかりと売上を作ることができるため、新人店長にはECについて学びの多いジャンルだと言えます。メーカーによって商品のマーケティングが完了しているため、ユーザーはすでにその商品を認知していることが多い。販売するEC側が、商品ページを作り込んで丁寧な説明をする必要がなく、商品の需要と供給がはっきりしていて、「この商品はこの価格でしか動かない」というラインが明確に決まっています。
新規出店の場合であっても扱う商品は同じようなものになりますから、既存のECがやってきたことを真似する形でスタートすることになるでしょう。数字を細かく分析し、競合を調査するのが好きなタイプの人に家電ECは向いていると思います。ゼロから1を作るより、200を300に持っていく、マーケットインが得意な人には家電ECは面白いのではないでしょうか。
――家電ECはモールには出店するべきでしょうか?
楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど、複数のモールに出店するのが通常です。私は普段「モールごとのクロスユースはあまりない」とセミナー等でお伝えしていますが、実はめずらしく、家電ECは例外でモールのクロスユースがあります。在庫切れを起こしがちで、ユーザーがいちばん安いところを探してたどり着くからです。家電ECでは、モール戦略を立てることが重要になります。
取引がある企業しか出店できないのですが、大手家電量販店のモールもあります。携帯キャリアが運営するモールや中規模なモールでも、最安値を探してたどり着いてもらえます。面を広げる体力があるのであれば、三大モール以外に出店するのも有効です。
EC運営の戦略としては、横断してすべてのモールを見る存在が必要です。大規模な家電ECほど、モールによって同じ商品の価格を微妙に変えて商品登録しています。薄利多売な家電ECにおいて、モールの販売手数料、キャンペーンの影響などはとても大きいからです。何%単位で価格を調整し、利益をコントロールするわけです。私はこの微妙な価格調整を行っている店舗を見つけると、「ここはきちんとやってらっしゃるな」と楽しくなりますね。売るため・利益を確保するための価格コントロールは、小売の醍醐味ではないでしょうか。
競合価格調査やダイナミックプライシングのようなツールを用いることと、店長がモールごとの特性やキャンペーンを理解し目で見て調整すること、理想を言えば両方やっていただきたいところです。大規模な家電ECほど、商品数が多くなりロングテールで売るビジネスになります。人力だけではすべての商品を網羅できないため、ツールの有効活用は必須です。
いちばん安いところを探してGoogle検索からたどり着くユーザーが多いため、自社ECは重要です。自社ECだけ、ちょっとだけお得な価格にしているところもあります。自社ECの流入元となる「価格.com」の活用はキモになるでしょう。家電ECは、検索して調べ、比較検討して購入されるジャンルだと言えます。