決済システムはクレジットカード+α 誰もが買える環境を構築しよう
――決済システムにはさまざまな種類がありますが、自社ECの決済システムを選択する基準をお教えください。
決済システムを導入・拡充する際、まず意識すべきは「理論上買えない人がいない状態」にすることです。大きく分けて「クレジットカードを持っている人」と「持っていない人」、この両者に対応できる決済システムを揃える必要があります。
クレジットカード決済については、デフォルトで有効となっているECプラットフォームが多く、すでに導入している事業者が大半を占めるでしょう。追加で導入すべきは、クレジットカードを持っていない人に対応する決済システムとなりますが、「コンビニ決済」「代金引換」「銀行振込」「後払い決済」などがこれにあたります。
これらの決済システムの中でどれを選択するかは、各事業者がターゲットとする顧客層に合わせて考える必要がありますが、割合としてはコンビニ決済か後払い決済を導入しているケースが多いです。最近では、コンビニ決済で入金がされないリスクを回避するために、後払い決済で代用する事業者も増加傾向にあります。しかし一方で、後払い決済では高額商品など金額によっては利用できない場合があり、コンビニ決済に一定のニーズがあるのも事実です。こうしたリスクやニーズを踏まえ、自社の顧客層との親和性を考慮して適切な決済システムを選択しましょう。
――「理論上買えない人がいない状態」にした上で、新たな決済システムの追加導入を検討する必要はあるのでしょうか。
まず、リアルの小売店をイメージしてみてください。同じ商品・サービスを提供するふたつの小売店がある場合、顧客は自身がよく利用する決済システムの導入店舗を選択します。これは自社ECも同様で、決済システムの選択肢を拡大することは他社への顧客流出防止に有効だと言えます。
ただし、商品・サービスに魅力があれば、決済システムの選択肢が顧客行動に及ぼす影響は少なくなります。たとえば現金しか使えない飲食店でも、同店でしか食べることができないものがあれば、それを食べたい顧客にとって決済方法は二の次となるでしょう。決済システムの拡充は、あくまでも顧客満足度向上を補う手段のひとつだと考えてください。
これを踏まえた上で決済システムの追加を検討する場合は、以前の記事でも紹介した「Amazon Pay」や「楽天ペイ」「d払い」などID決済サービスの導入がお薦めです。私は、前出の理由からこれを必須とは考えていませんが、自社ECの決済では個人情報入力の煩雑さが離脱を招く場合もあります。とくに競合が多いジャンルの商材を扱う大手企業では、わずかな購入率の差も売上金額に大きく影響するため、こうした課題を少しでも解消するために、自社の顧客層に適したID決済サービスを導入しておくと良いでしょう。また、海外比率が高い事業者の場合は「PayPal」の導入もお薦めできます。
なお、ID決済サービスを利用する際は、ひとつ注意すべきことがあります。それはギフト発送など、注文者情報と配送先情報が異なる場合に生じるのですが、ECプラットフォームによってはID決済サービスで呼び出せる情報が配送先情報のみ、というケースがあります。こうした状況は今後改善していくとも想定できますが、現状ギフト需要が高い商材を扱う事業者はこれを把握した上で、自社のECプラットフォームとID決済サービスの連携に問題がないか確認しておきましょう。