モールか自社ECか、ではなく、モールも自社ECもという発想
ーー2021年度は、EC開設でなく売上を作っていくフェーズになりそうです。
売上を作るためには、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなどのモールの活用は検討すべきだと思います。その際に注意していただきたいのは、誰に相談するかです。あるひとつのモールについて詳しいECコンサルタントは少なくありませんが、それぞれの特徴を踏まえ、自社の商材を踏まえて包括的に戦略を立てることができる人はそれほど多くないのが実情です。コマースメディアでは、特定のモールに固執せず「この商材なら、どこでどのように売れば良いか」を考えるところから始めています。
たとえば、当社でお手伝いしているゴーゴーカレー様の場合は、すでにリアルのスーパーやディスカウントストアで購入するスタイルが消費者の方々にも浸透しています。そのため自社ECでは販売しづらく、モールでの販売が適していると考えました。一方で、ブラックサンダーで知られる有楽製菓様の場合は、キャンペーン企画がお得意でいらっしゃるため、自社ECでの販売が好調です。
モールと商材の相性については、「型番商品」と「非型番商品」で分けて考えるのがいちばんわかりやすいでしょう。型番商品とはJANコードがあり一般流通しているもの、非型番商品はブランドがオリジナルで作っているものを指します。型番商品が売れるのはAmazon、オリジナルの商品を仕掛ける土壌が整っているのが楽天市場と言って良いと思います。もちろん、楽天市場で型番商品も売れますが、わかりやすく特徴を示すとそうなります。食品を販売する場合は、楽天市場を選ぶことが多いです。
――コロナ禍でこれからECを始めるという場合、モールと自社ECは同時に始めたほうがよいのでしょうか。
体力があり可能であれば、同時に始めたほうが良いと思います。EC売上のうち、6〜7割が大手ショッピングモールでの購入が占めるという調査結果もありますし、私の経験値では、楽天市場での購入率が5%とすると、自社ECは1%いけば良いほうという手応えです。手数料は取られますが、集客効率が圧倒的に良いのがモールです。
自社ECとモールの両方にお店を持つ、いわゆる「多店舗展開」をする際に注意していただきたいのは、それぞれのお店できちんとした運営ができていないと、ペナルティが生じてしまうこと。ペナルティが積み重なると、最悪の場合、モールから退店の処置が下される場合があります。そして一度退店になってしまうと、なかなか戻ることができません。
オリジナル商品ですでに独自の顧客網を獲得していたり、Instagram等で独自の世界観やファン層をつくり上げている企業であれば、自社ECから始めると良いと思います。リアルで例えるなら、ショッピングモールにお店を出すのではなく、まず路面店で勝負するということです。自社ECにしっかり取り組んでからモールについて考えるという順番で良いでしょう。