トップサイトに見るパフォーマンスの重要性 必要なのは「主治医」を見つけること
表示速度が速くなるメリットとは何だろうか。SimilarWebが発表する「世界の上位ウェブサイトランキング」と、Chromeユーザーのパフォーマンスデータを分析した「CrUX(Chrome User Experience Report)」を見ることで、新たな視点を得ることができる。2019年6月に調査された前者のレポートによると、月間のトラフィックの総量はアメリカのGoogle(google.com)が1位となっており、YouTube(youtube.com)やFacebook(facebook.com)が後に続く。日本のウェブサイトでは、22位にYahoo! JAPAN(yahoo.co.jp)が入り、NTTドコモ(docomo.ne.jp)やAmazon(amazon.co.jp)などが100位に入っている。
CrUXによると、これら日本のサイトはほとんど4Gで閲覧されている。ページ内のテキストやグラフィックが表示される速さ(FCP:First Contentful Paint)の9割は平均以上であり、反応遅れ(FID:First Input Delay)も決して多くはない。しかし、表示完了時間を表すDOM Content Loadedや処理開始時間を表すOnloadは、広告計測タグなどの影響もあるのか、サイトごとに品質の差が生じている。
ここから読めることは、ふたつある。日本のサイトは、初速は速いが読み込みがやや劣るということ、そしてUXにしっかり取り組んでいるサイトはDelay(遅延)が少ないということだ。
上位サイトのように快適なウェブパフォーマンスを実現するにはどうしたらいいのか。一般的なベストプラクティスとして、HTTP/2やAMP、Googleタグマネージャー(GTM)、画像圧縮、LazyLoadや非同期処理のような読込遅延などのキーワードがよく聞かれる。IDOMでも、これらほぼすべてに手をつけたが、いずれもうまくいかなかったと言う。ここで村田氏は、ウェブパフォーマンス改善の際に検索キーワードで使う言葉が日本と海外で違うことを述べた。
「検索クエリを見ると、皆さん『Pagespeed Insights』や『Webpagetest』と検索しているようだが、本格的な改善を目指すなら、本来は『ウェブパフォーマンス』という視点に基づく必要がある。技術分野を調べる際に、検索キーワードを間違えてしまうというマーケターが陥りがちな傾向であり、エンジニアなら躊躇なく『ウェブパフォーマンス』と調べるはずです」(村田氏)
また、村田氏は「CrUXだけで打ち手を決めるのは危険」と続け、その理由として、CrUXの調査対象がChromeユーザーのみであることを挙げた。日本は、世界でも稀に見るApple優勢国であり、Safariユーザーが4割を占めている。そのような状況を踏まえ、「全体を見て考えないと、方向性を誤る可能性もある。『どうやるか』はもちろんだが、『誰と一緒にやるか』まで考え、全体を俯瞰できる人と組む必要があるだろう」と、パートナーの重要性を語った。
しかし、多くの企業ではインフラ構築からウェブコンテンツの制作まで、さまざまなベンダーと組んでいるはずだ。ウェブサイトの上流から一気通貫で診断を行うのは、なかなか困難とも言える。実際のところ、IDOMでもパフォーマンス改善の「主治医探し」に困っていた中でSpelldataと出会い、施策をスムーズに進められるようになったと言う。
パフォーマンス改善にあたり苦労した点として、村田氏は主治医探しの他にも改善体制の構築や施策の負荷軽減などを挙げ、「サイト運用は常に規律が必要」と強調した。