流通・小売企業の業務効率化の手段としても注目が集まっているRPA(ロボティック・プロセス・オー トメーション)は、定型業務を代行するソフトウェアロボットで、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれている。RPA黎明期よりデジタルレイバーの可能性にいち早く目をつけ、RPAサービス「BizRobo!」シリーズを提供するRPAテクノロジーズの創業者 大角暢之さんに、RPA導入のメリットや検討時のポイント、RPAが秘めている可能性などを聞いた。
間接部門の業務改善を目指しBizRobo!を開発
大角さんは1995年、新卒でアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。ITが重視され ていく時代の流れのなか、SEとして業務改善支援に取り組んだ。2000年に独立し、オープンアソシエイツ (現 RPAホールディングス)を設立。新規事業支援などを行うかたわらソフトウェア開発を進め、2008年に BizRobo!の提供を開始した。2013年には事業を子会社化し、ビズロボジャパン(現 RPAテクノロジーズ) を設立。2016年には一般社団法人日本RPA協会を設立し、RPAの普及活動にも努めている。
BizRobo!開発の背景には、SEとして働いていた頃から大角さんが抱えていた問題意識があったと言う。
「間接部門で業務効率化に取り組むには、根本的には『人的リソース削減』か『ITシステム導入』のふたつ しかないんです。しかしITシステムは、初期費用に加え保守・運用コストがかかります。また変化に弱く、業務ルールや環境の変化に柔軟に対応できません。そのため、戦略的投資や大型のイシューはITで解決されても、現場の少量多品種型のイシューは解決されず、人の力でなんとかしようとして現場が疲弊する。そこに限界を感じていました」
こうした問題意識を抱えていたとき、大角さんはブルーカラーとホワイトカラーの業務構造の違いに思い 当たる。ブルーカラーの現場では、人間とITとの間に職人技を代行する産業用ロボット(FA:ファクトリーオートメーション)があり、3層構造で効率的な製造を可能にしている。一方のホワイトカラーには、人間とITの2層しかないと気がついたのだ。
大角さんは自身の経験から、テスト自動化ツールに着目。そのレコーディング技術、マクロ技術を応用することで、ブルーカラーのFAに相当するものをホワイトカラーでも実現できると感じたと言う。紆余曲折を経て開発に成功し、RPAという言葉もまだない2008年にBizRobo!をリリースした。
「RPAは『新しい働き手』です。現場で頑張っている方々の多数のイシューの解決とウィッシュを実現するため、このレコーディング技術を『デジタルレイバー』として、全国誰でも使えるような形にしていきたいと考えています」