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2022年8月30日(火)10:00~16:10

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コメ兵・藤原の「オムニチャネルの次の話をしよう」

覚悟を決めた「渋谷スクランブルスクエア」旗艦店とは 中川政七商店・緒方さんとお店の話をしよう


 コメ兵の藤原さんが、一見ECとは関係ないようにも見える人たちやECど真ん中の人たちとお話しすることで、EC、そして「オムニチャネルの次」を探そうという趣旨の対談シリーズ。第7回は、11月に渋谷スクランブルスクエアに日本最大旗艦店を出した中川政七商店の緒方恵さんが登場です。

中川政七商店・緒方さんと「つながり続ける」お店の話をしよう

藤原(コメ兵) 渋谷スクランブルスクエアのお店、行ってきましたよ。お店のつくりが迷路みたいじゃないですか。あれはわざとなんですか?

緒方(中川) はい、あれは創業の地である奈良の町をモチーフにしています。わざわざ言わないと伝わらないと思うんですけれど(笑)、真ん中にお寺のお堂をイメージした仝(おどう)という空間もあります。お店の作り全体で「この角を曲がったら何があるんだろう?」というワクワク感につなげたかったというのがひとつ。

また、「現代小売業に対する反骨精神」と言うと表現が強すぎるんですが、最近、お店がつまらなくなっているなと。「なるべくコストを下げよう」「レイアウト変更がしやすいように」というような流れが、ともすると、お店が楽しくなる場であるという濃度を事業者が相対的に薄めているのではと。その結果、来てくれた人に対して店側の覚悟が伝わってこないという一面もあると思っていまして、強い覚悟をもとにあえてこうした設計にしました。リスクを減らすという考えから覚悟は伝わるはずもありませんから、伝えるためにも積極的にリスクを取ることにしました。

藤原(コメ兵) 今のお店って、奥まで見えているのがセオリーですよね。それをあえて見えないようにして歩かせるようになっているわけじゃないですか。そのアイデアの出しかた、意思決定はどうなっているんですか? 普通の会社では、できないなと思ったんです。

緒方(中川)  渋谷店に関しては、経営層で喧々諤々しながら最初にコンセプトを煮詰めました。物事を考える際に使う、基本的なワークフレームみたいなものもあります。商品開発用に作った「組み立てシート」と呼ばれているもので、妄想を構想にアップデートする過程でおさえるべきことをおさえられるように、簡易的にでも間違えずにコンセプトなどを出せるようにしたものです。

お店やプロダクトって、世界観や雰囲気みたいなところから議論する場合も多いんですが、私たちはそれを絶対しないようにしています。入り口にまず、「志」がある。思いつき、社会的意義、問題意識などさまざまあると思いますが、最初のとっかかりは「志」にしようとしています。その後にそれを適切に伝えるための文脈設計があり、最後にトンマナや世界観。この3点がグルグルと循環するように考えられると、コンセプトは自然と浮き上がります。

藤原(コメ兵) 渋谷店の場合の意思決定の粒度はどのくらいですか? 会社が決めたことがほとんどなのか、現場に任されているのか。

緒方(中川)  渋谷店は、私たちの社運を懸けた旗艦店にするというのが大前提にありましたので、経営層が主導です。従来のお店は30~50坪規模がほとんどですが、渋谷店では「100坪くらいどうですか?」というオファーを頂戴して。「これから先、渋谷であれ以上大きい開発はしばらく起きないはず」という前提があっての100坪オファーでしたから、私も含めた当時の経営陣3人で「もうこれは覚悟を決める店だな」となりました。結果、130坪になっちゃったんですけれど。

最終的なお店のコンセプトは「日本の工芸の入口」なのですが、それを決めようという時にヒントになったのは、私たち「伝える」チームが既存の店舗で抱えていた「商品陳列×接客だけでは伝えきれない(理解してもらえない)場合がある」という実店舗と工芸の抱えるジレンマです。もっと幅広くさまざまな方に今の工芸の魅力や価値を知っていただきたいという思いを実現するために、これまでの店舗設計の考えかたを見直し、ゼロから「伝える」「理解のハードルを下げる」ためにできることは何か?を考え抜きました。わかってくれる人にはわかる、というところから抜け出したかったんです。

工芸好きということに限らず、お店にはさまざまなお客様が来てくださっています。「なんか良い店構えだな」みたいな、ばっくりとした良い匂いを知覚して近寄って、「気になる商品がある」とお店の中に入る。好きな世界観の共有とプロダクトのニーズがそこまでで一定量一致が取れているのに、価格と比較した時に、便益および情緒的な価値が伝えきれないと理解していただけないこともある。それは本質的な価値を自分たちで活かしきれていないということだと思っていて。基本的には実店舗におけるコミュニケーションの品質を上げる=工芸理解のハードルを下げることをとにかく考えたいなと思っていました。

藤原(コメ兵) そうするとECの役割は何になるんですか?

緒方(中川) 利便性の担保がひとつ。店舗とECでできることって、メリット・デメリットが真逆だったりするじゃないですか。実物が触れる/触れない、レジで待つ/待たない、動画が置ける/置けない。こういった相反作用を踏まえた上で、基本的には接客の品質を高めるためにECにコンテンツを置いていく、というのがもうひとつの役割です。

それから、お客様からすると、店頭で商品を見ていても「奥さんに相談しないと買えないんだよ」といったことがありますよね。そういう時には、再来訪が容易なECは便利です。それにECは、店では取れない流入が取れたりもするので、そういった役割も当然あります。

あとは、単純にEC下にコンテンツを入れておくと、社内教育に役立つというのがあります。新人に「まずECサイト全部読むべし」と言って教育コストがカットされるのが社内的な事情としてありますね。情報のターミナル的な役割も持っている。

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この記事の著者

株式会社コメ兵 執行役員 マーケティング統括部長 藤原義昭(フジハラ ヨシアキ)

2000年自社ECの立ち上げをし、物流からささげ業務まですべてを構築し、全社マーケティングを行いながらオムニチャネルを推進している。 現在はマーケティング部門を統括し傘下にシステム部門、マーケティング部門、EC部門、WEB事業部門、CtoC部門をおさめている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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