ビジネスモデルイノベーションを生む「X+O」とは
はじめに、SAPジャパン 代表取締役社長 福田譲氏が登壇。本イベントのテーマ『顧客起点の本質に迫る ビジネスモデルイノベーションを生む「X+O」』について、従来の顧客をマネジメントするという発想でなく、顧客が本当に求めているものは何なのか、瞬間ごとの感情をとらえ、顧客価値を最大化するという考えかたに変わるべきだと提言した。
今回のイベント「SAP CX DAY 2019」には、SAPが買収したクアルトリクスも登壇。福田氏は、クアルトリクスを「エクスペリエンスマネジメントの先駆者」として紹介し、80億米ドル(約9,000億円)もの巨額の投資は、今回のイベントのテーマにある「X」の部分を、クアルトリクスが担うからだと述べた。
「従来のシステムの多くは、業務遂行のためのシステムであり、発生するデータはそのオペレーションの結果の『O』データでした。たとえば販売管理システムであれば、『売れた』『売れなかった』という結果はわかるけれども、『なぜ売れなかったのか』はわかりません。お客様が買わずに離反された理由を示してくれるかもしれないのが、エクスペリエンス、つまり『X』データなのです。XとOのデータをかけあわせ科学的に検証することによって、『なぜ』がわかるのではないか。XとOの融合により、これまでITが踏み込めなかった分野にまで踏み込めると考えています」
これまでITが踏み込めなかった分野には、いま多くの企業が求められる「イノベーション」も含まれる。SAPでは、研究者のひらめきのような「インベーション」は難しくとも、イノベーションは科学的に再現可能だと考えていると言う。
「たとえば、フリーミアムやサブスクリプションなど、イノベーションに成功した企業には共通するビジネスモデルが多い。SAPとザンクトガレン大学の共同研究によれば、イノベーションには55の『技』があります。この技のうち、自分たちの業種業態では行われていない他業種のビジネスモデルを持ち込むと、イノベーションに成功する可能性が高いのではないか。SAPは、その55の技を『部品』としてクラウド上に用意しています」
さらにSAPでは、2月にオープンイノベーションのための協業スペース「Inspired.Lab」、8月には共創イノベーション施設「SAP Leonardo Experience Center Tokyo」を大手町に開設した。
「これらの部品とオープンスペース、XデータとOデータを組み合わせることによって新しい価値、新しい顧客体験を生み出すお手伝いをさせていただければと思います」
SAPのエクスペリエンス戦略「X+O」と最新イノベーション
続いて、SAP Customer Experience 最高イノベーション責任者(CIO) ユージニオ・カッシアーノ氏が登壇。重要なのは適切なイノベーションをどのような顧客体験で提供するかであり、カッシアーノ氏がSAP社内でどのようにイノベーションを起こしているのかを語ることで、来場者の参考になればと述べた。
下の図は、カッシアーノ氏が用いているイノベーション・タイポロジーである。横軸が市場、縦軸がテクノロジーの知識の度合いを表している。
イノベーションを起こす際には、「今」がどのような状況かを把握しなくてはならない。新しいプロダクトが今の市場に受け入れられるのか、またそのために顧客体験やビジネスモデルをどうするべきかを考える必要があるのだ。その際にはXデータを用いることが有効だとカッシアーノ氏。SAPでは「イノベーションセンター」「CXラボ」(タイポロジーの左上に位置)を設立、新しいテクノロジーのユースケースをテストし、市場に受け入れられるかを検討している。
一方、タイポロジーの右下に位置する「SAP.io」はスタートアップ支援プログラムだ。プロトタイプを短期間に作り上げてテストし、スケールアップできるようであれば商業化する。こうして、すでにSAPから、3つのスタートアップがスピンアウトしている。
SAPが一緒にイノベーションを起こした事例として、Levi'sを紹介。Xデータを分析すると、「店頭のスタッフは来店したお客様のことを知らず、はじめて会った人として接客しなければならない。行列に並んだお客様は、匿名の人間のように扱われていると感じている」という課題が見つかり、12週間で「Levi's Pocket Stylist」というサービスを開発。顧客は店舗でログインすることにより、さまざまなフィジタル体験が可能になり、店舗スタッフは顧客の情報を知ることができるようになった。決済の機能も持ち合わせることで、行列に並ぶ必要もなくなったのである。「これはSAPのエコシステムによって実現したイノベーションである」とカッシアーノ氏は言う。
すでにさまざまなスタートアップが参加しており、SAPのエコシステムは始動しているとのこと。そのうえでSAPの価値とはなにか。それは「エンドトゥエンドでの価値提案を補完すること」であるとカッシアーノ氏。来場者に対し、イノベーションを起こすパートナーを選ぶ際は、何かひとつに特化したテクノロジーではなく、エコシステムを選択すべきだとメッセージした。
最後に、イノベーションを継続するには「未来のCX関連テクノロジー」「戦略的なカスタマーエンゲージメント」「イノベーションのエコシステム」の3つが重要であるとポイントをまとめた。
サプライチェーン全体の顧客体験価値向上への取り組み
冒頭の福田氏の挨拶でも取り上げられた「X」を担当するクアルトリクスからは、カントリーマネージャー 熊代悟氏が登壇。同社が提唱し、SAPとともに新たなソリューションジャンルとして築き上げようとしているのが「エクスペリエンスマネジメント(XM)」だ。
まず熊代氏は、「顧客や従業員に対し最高のエクスペリエンスを発揮している」と回答したCEOが80%であるのに対し、顧客・従業員側で「最高のエクスペリエンスを体験している」と回答したのは8%という海外の調査結果が示す「エクスペリエンスギャップ」を紹介した。このエクスペリエンスギャップを埋めるのが、クアルトリクスのソリューションだと言う。
より良いエクスペリエンスを提供したことによって成功し、市場のシェアを獲得した例として、Uberや中国のモバイル決済を紹介。このような革新的なエクスペリエンスを提供するには「積極的にお客様・従業員の声を収集し、分析を行い、改善アクションの実行を日々の業務として行うこと」が重要だと言う。Qualtricsは、それを支援するサービスである。
Qualtricsは、主に「Research Core」「Customer Experience」「Employee Experience」「Product Experience」「Brand Experience」の5つの機能から成り立つ、調査プラットフォームである。 インテリジェンス分析機能IQシリーズにより、テキストや統計、予測分析を網羅し、即改善アクションにつなげられるのが強みだ。
クアルトリクスは2002年に創業し、その後しばらくは主に大学など研究機関を主な対象としていたが、大学を卒業した人たちが企業に入社してからも利用したいとの声を受け、2010年に一般販売を開始したという経緯を持つ。2015年にアジアへ、2018年に日本に進出したばかりだが、導入企業はグローバルで1万社、日本でもすでに100社を超えると言う。
今回のイベントテーマであるCXの視点で見ると、クアルトリクスの顧客の間ではNPSがブームになっているが、その取り組みには課題も少なくないと言う。
NPSのよくある間違い
- いち側面のNPSスコアのみ測定し、経営判断に至っている
- NPSのスコア値のみが、グローバルな社内環境でひとり歩きしている
- 全体のスコアを分析するが、改善アクションにつながっていない
- プログラム運用に企業の一部門のみしか活動していない
- 実際にお客様とタッチポイントがある従業員への結果報告が数ヵ月後でかつ、全体結果の共有でしかない
「実際は組織全体で測定・分析・改善アクション実行を運用し、お客様に対して、お客様のフィードバックが有効に改善されているかを、お客様自身に感じていただくことが重要だ」と述べ、QualtricsユーザーであるKDDI ソリューション事業本部 渡部友巌氏を紹介した。
KDDI 法人事業のCX活動は、TCS(Total Customer Satisfaction)を掲げ、2012年~2015年は「J.D.Power 1位」をKPIに、2015年末からNPSも加える運びとなり、2016年からJDP1位を「キープさせていただいている」(渡部氏)のが現状である。
NPSの推進にあたり、「調査手法の統一」「調査対象拡大」「お客さまフォローの導入」という3つの課題があった。ひとつ目の「調査手法の統一」については、TCSを掲げているからこそ、社内でさまざまな調査が進行していた背景から、リレーショナル(会社、人財、商品)調査に統一し、トランザクション手法を統一。「調査対象拡大」については、担当者が懇意にしている「聞きたいお客さま」から「すべてのお客さま」(除外対象者は除く)に変更。そして調査後の「お客さまフォローの導入」に関しては、批判的なお客さまにクローズドループを実施して徹底することになった。
次のステップとして「NPS経営へ」。だが、ここにもふたつの課題があった。ひとつは「NPS調査統合とクローズドループの仕組み」であるが、これはさまざまな調査機能を網羅し、改善のアクションを日々行うことを目的としたソリューションであるQualtricsの導入により、解決できたと言う。
ふたつ目の「経営陣に対するリソースを割く判断材料」については、NPSのスコアと売上・解約に明らかな相関関係があることを見える化し、幹部に提言。NPS推進を継続するべく、ソリューション事業本部長をトップとした体制も整えた。
その結果、KDDIソリューション事業のNPS評価の推移は、2016年度1桁、2017年度1桁が、2018年度はマイナス2桁に。これは主に、NPS推進における課題だった「調査対象拡大」を改善したことで、真の姿が見えるようになったからだと渡部氏は言う。2019年度は、さらにNPSを拡大していくため中期計画に「NPS経営」を掲げ、NPSの方針に「NPS調査対象拡大」「クローズドループを強化」を記載し推進中。
「サービスの提供開始時点から幸いなことにサブスクリプションモデルで行ってきました。これまでは獲得すること、社外調査課題を対策することに重きをおいてきましたが、これからは『守ること』についてはNPSをはじめとするデジタル施策で強化し、これまで以上にお客さま満足を強化していけたらと考えています」
コニカミノルタの目指すビジネスの変革とカスタマージャーニー
特別講演には、コニカミノルタ 常務執行役 仲川幾夫氏が登壇。同社は、2014年度から前中期経営計画「Transform2016」を掲げ、創業事業である写真フィルム・カメラ事業から撤退後、オフィスやプロフェッショナルプリント事業などB2Bビジネスモデルへの転換に成功、2017年度からは新中期経営計画「SHINKA2019」を掲げ、B2B2P(P:People, Professional)課題提起型デジタルカンパニーを目指し、邁進している。
課題提起型デジタルカンパニーの中核となるサービスが、複合機とオフィス内のITシステムを統合し、 働き方や業務改革を次世代へ進化させる統合プラットフォーム「Workplace Hub」だ。このWorkplace Hubの上市に向けて、コニカミノルタではカスタマージャーニーマップの再定義を行った。
「全社改善のリレーショナル調査は行ってきましたが、現場改善のリアルタイムなトランザクション調査が必要になると考えました。販売会社からは、なぜトランザクション調査が必要なのかという問いかけもありましたので、既存のお客様、離反したお客様へのオフラインのインタビューも行い、カスタマージャーニーを可視化していきました。あるトランザクションのペインポイントが離反の原因になっているという事実を明らかにし、販売会社の幹部を巻き込んで改善のアクションに結びつけていきました。トランザクション調査の調査回収にQualtricsを活用しています」
最後に仲川氏は、企業の持つ顧客データを統合・分析、カスタマージャーニーを可視化することで顧客中心の事業改革を支える統合データプラットフォーム「カスタマージャーニーDMP」を紹介し、将来的には働き方改革や地域活性化にもつなげていきたい考えを述べた。
顧客起点のエクスペリエンスを創るデジタルトランスフォーメーション
コニカミノルタ 仲川氏、SAP カッシアーノ氏をパネリストに迎え、SAPジャパン 富田裕史氏のモデレートにより、パネルディスカッションが行われた。
前の講演で、コニカミノルタが「Workplace Hub」のリリースをきっかけにカスタマージャーニーマップの再定義を行ったとあったが、イノベーションを起こす際にはやはり再定義が必要なのだろうか(富田氏)。
「ITサービスはお客様を獲得して終了ではなく、その後も利活用していただくことでお客様にとっては価値になり、我々にとってはベネフィットになります。さらにデジタルが登場し、マーケティングの手法も大きく変わりました。お客様と直に接している現場も巻き込んだうえで、使い続けていただくことも含めた、カスタマージャーニーマップを再定義する必要があったのです」(仲川氏)
「顧客の獲得でなくLTVに注目し、長期的に使い続けていただくことで売上アップを図ること。製品だけでなく、サービスを売るモデルにシフトしていること。自分たちの顧客だけでなく、顧客のお客様も視野に入れ、お役に立とうとすること。これらがコニカミノルタのようにイノベーションに成功した企業の共通点であり、そうした企業を私はCXリーダーと呼んでいます」(カッシアーノ氏)
イノベーションを起こそうとすれば、反対勢力も出てくるもの。そうした人たちも含めた、社内外の巻き込みかたとは(富田氏)。
「お客様とともに、イノベーション・ワークショップをやることもあります。時間と労力をかけ、お客様を巻き込んでいくことが重要なのではないでしょうか」(仲川氏)
「この仕事を始めた頃に、CIO(Chief Information Officer)に会いに行くと断られることが多かったのでやりかたを変えました。当時CIOは、財務面からリスクを軽減することを考えがちだったのです。そうではなく、スタートアップ企業のように一緒に創造するという姿勢にしたのです。ゼロリスクで20%程度の完成度のものを作り、テストし、うまくいきそうなら次の段階に進めるというものです。それを2年ほど続けると、反対勢力に抵抗されることも少なく、うまくいくようになりました。巻き込む相手には、価値を提案して感じてもらい、責任感を持ってもらうことが重要です」(カッシアーノ氏)
日本のものづくり企業は、モノの提供からサービスの提供に変わろうとしている。そのイノベーションは、誰がリードするとうまくいくのだろうか(富田氏)。
「Workplace HubはIoT機器の統合プラットフォームであるため、各事業を横断する『IoTサービスPF(プラットフォーム)開発統括部』を設置しています。プラットフォームはあくまでツールであって、それを使って事業で利益を出してこそですよね。トップからは『SHINKA2019』のようなストラテジーが出されるけれども、現場の仕事は、事業部とプラットフォーム開発側がいかに協力してやっていくかだと考えています」(仲川氏)
「国によって方向性が異なりますが、CDO(Chief Digital Officer)かCIO(Chief Innovation Officer)がその役割を担います。サイロ型ではなく、エンドトゥエンドで見ることが重要です。そしてイノベーションには変化を信じ、自由な権限を持つトップのコミットメントが重要です」(カッシアーノ氏)
ITにおけるエコシステムにおいて、外部パートナーとうまく連携するにはどうしたらいいのか(富田氏)。
「パートナー企業から見たコニカミノルタの魅力は、中小企業を中心とした顧客基盤。ぜひ一緒にやらせてくださいと言っていただけます。サブスクリプションで課金ができるモデルも、魅力に感じていただけるようです」(仲川氏)
「iPhoneを購入する際に、Apple Storeのような周辺のサービスも含めて購入しますよね。テクノロジーも単一のサービスを購入するのではなく、ネットワーク効果を期待してたとえばSAPのエコシステムを買うというふうになってきている。同一のエコシステムの上で同じターゲットに対して、たとえば小売とメーカーがチームで取り組むといったことで、万人にメリットがある形にすることができるでしょう」(カッシアーノ氏)
企業価値を変革するカスタマーエクスペリエンス(CX)の本質
BtoCパートの特別講演には、Mizkan Holdings 渡邉英右氏が登壇した。Chief Digital Officerとして、全社のデジタル化を推進、顧客中心の考えかたを全社に広めるのもデジタル戦略本部だと言う。
ミツカンの企業理念には「2つの原点」がある。ひとつは「買う身になって まごごろこめて よい品を」であり、顧客体験を重視した姿勢であると渡邊氏。もうひとつは「脚下照顧に基づく現状否認の実行」であり、古くからイノベーションを重んじる企業姿勢を示している。そしてもうひとつ、グループビジョン・スローガンには「やがて、いのちに変わるもの。」を掲げており、食品を製造する企業として、顧客に提供していく価値を示したものだと言う。
こうしたミッションを踏まえ、デジタル時代の、とくに製造業の顧客体験(CX)はどうあるべきか。渡邊氏は、次の3つの考えかたを提示する。
- 習うより慣れよ
- 顧客中心のカルチャー
- 顧客中心活動を支える仕組みとしてのプラットフォーム
まず、「習うより慣れよ」については、製造業は企画開発の段階で非常に考え込むが、デジタルの時代は作ったものを変更するのは難しくない。ひとの考えかたを、とりあえずやってみるというものに変えていくという。ミツカンの取り組みとしては、「未来ビジョン宣言」のサイトをリニューアル。A/Bテストを行うなどして、「とりあえずやってみる」の文化を浸透させていった。
次の「顧客中心のカルチャー」は、まさにCXに関することだ。従来、製造業と生活者のコミュニケーションは、マスコミュニケーションが中心だった。それがデジタルの時代になり、1人ひとりの生活者を向き合うことができるようになり、コミュニケーションの仕方もそう変えるべきなのである。ミツカンでは、デジタル戦略本部のメンバーが実際に街中に出かけて生活者を観察したり、デザインシンキングを取り入れ、さまざまな意見が出るようなカルチャーづくりに取り組んでいると言う。
そして、「顧客中心活動を支える仕組みとしてのプラットフォーム」だが、「顧客プラットフォーム」にしろ、「エンタープライズプラットフォーム」にしろ、個別最適だったり、ブラックボックス化しているという課題がある。それを生活者起点で、ミツカンの未来ビジョン宣言の考えかたを継続的に伝えるべく、自分の部署、自分の国だけでなく、全体最適のプラットフォームに変え、業務を標準化していくべきだと考え、設計・構築を進めていると言う。
最後に、企業として全社的に取り組むには、サポーターを増やすことも必要だと述べた。
BtoC企業のデジタルトランスフォーメーションを考える
パネルディスカッションは、アビームコンサルティング 本間充氏のモデレートで、デジタルトランスフォーメーション(DX)をメインテーマに行われた。ミツカン 渡邉氏、カッシアーノ氏のほか、パネリストとしてワークマンを同グループ企業に持つベイシア 竹永靖氏が登壇した。
まず、各社のDXの現状や取り組みはどうなっているのだろうか(本間氏)。
「入社してまだ10ヵ月ほどですが、はじめの半年はミツカンのこと、製品のことを理解し、仲間に入れてもらうことを優先し、DXについてはほとんど何も言わずにいました。当社の特徴として、オーナー企業であり、ミッションにデジタル化が明確に入っていることです。上からのサポートがあり、DXの推進に努めて報われないということはありません」(渡邉氏)
「ことCXに関することで言うと、小売の場合、一度は来てくださるお客様は多いのですが、リピートしていただかなければビジネスとして成り立ちません。いかに、2回目、3回目に来ていただくかを追求しています。取り組みの一例として、たとえば『工具とビール』のような意外な合わせ買いと、そういったお買い物をされるお客様をデータ分析で導き出しています。それをもとに、メーカーさんとコラボして商品を作ったり、メーカーさんとマーケティングデータを一部シェアするということもやっています」(竹永氏)
「GAFAやウォルマートなどの先駆者たちは、CXが完璧でなくとも、需要と供給をつなぐことがスムーズにできています。ネットサーフィンをしていて、これを買おうとサイトを開いたら、その商品の入荷は3日後になる、とあったらそこでドロップアウトしますよね。需要と供給をスムーズにつなぐことは、それほど重要なのです」(カッシアーノ氏)
いち企業を越えたDXとして、流通小売とメーカーが一緒に作るエコシステムは果たして実現可能なのだろうか(本間氏)。
「データによって顧客理解をするだけでは足りず、それを活かしてどうコミュニケーションをするかが重要ですよね。以前からある考えかたですが、ファンベースやアンバサダーがここに来てハイライトされています。もともとミツカンに対して満足度が高く、ロイヤリティが高い生活者にご満足いただき、リーチできていない新規顧客にいかにタッチできるかがキモになると思います」(渡邉氏)
「SAPが一緒に取り組んでいる企業は、ブランドのロイヤリティを高めようと、ゲーミフィケーションを取り入れています」(カッシアーノ氏)
「日本の成功例としては、トライアルカンパニーではないでしょうか。お店に行ってみると、高齢者の方もあのカートを押して、ポイントを貯めていらっしゃるんですよね。そのデータをメーカーに提供するのはもちろん、システム自体を小売業にも販売しようとしているのだととらえています」(竹永氏)
最後に本間氏は、BtoCの場合生活者のDXが早いため、渡邊氏が講演で述べた「生活者の観察」は重要ではないかと指摘。そして、本イベントのテーマであるXデータとOデータの組み合わせで新しいビジネスを作っていくことが重要であり、DXに終わりはないとまとめ、パネルディスカッションを締めくくった。
イノベーション&製造業のDXがわかる!資料ダウンロード
本イベント「SAP CX DAY 2019」にて、SAP ユージニオ・カッシアーノ氏、コニカミノルタ 仲川幾夫氏が講演した際の投影資料(抜粋版)をダウンロードいただけます。詳細・ダウンロードはこちら。