BtoBに強いからこその難しさも
アシックスのECサイトリニューアルに迫る
今回、リニューアルに携わった大石氏は、これまでゴルフダイジェスト・オンラインに在籍し、ECサイトを運営。アシックスには1年ほど前に移籍した。一方、スターバックスコーヒー・ジャパンでECを含めたBtoCサービスの企画・設計を手がけてきた小林氏は、3ヵ月前からアシックスにジョインし、同社の新ECサイトの主にインフラ部分を担当している。
大石 僕はEC推進部でデジタルコマースを担当しています。ECパッケージに商品の登録を行ったり、販売促進を手がけるなど、お客さんといちばん近いところの業務を行っています。一方小林は、ECシステム管理チームという名前で僕の下のレイヤーを担当し、プラットフォームの部分を見ています。ECを動かすにあたり、決済の仕組みを整えたり、基幹系システムやロジスティクスの仕組みと連動させるなど、表に見えない部分を下支えしているんです。
アシックスにおけるECサイトの歴史は、およそ5年ほど前に遡る。カタログ通販を行っていたアシックスは2013年にECサイトを開設し、消費者に対する直販を手がけていたものの、これまでの実店舗を基軸とした卸先向けの仕組みが強く、ECにおける売上は1%未満。しかし、本格的にDTCを販売チャネルとして成長させることを目標に掲げた同社では、戦略としてECの強化を図ることに。両氏は、そんな流れのもとにアシックスにジョインし、ECサイトの抜本的な改革を手がけたのだ。しかし、ECサイトのリニューアルは困難を極めたという。
小林 もともと、アシックスは卸売に強い会社であり、どちらかというとBtoBを主戦場としてきた企業です。そのため、以前のECサイトでは、BtoB用のシステムからEC用の商材データを無理やり引っ張り出していたような状態。裏側のデータ連携はとても複雑だったんです。
大石 かつては、ECで販売している5,000点ほどの商品データの作り込みも手作業でやっていたし、公開のためのタイマー機能が付属していなかったために更新も手動で行うなど、膨大な作業が必要でした。感覚的には、リニューアルをしたことによって2〜3割は手作業の割合が減っていると思います。今後、さらに自動化することによって、これまで手で行っていた作業を半減、あるいは8割程度減らすことを目指していきたい。これまで、手動の業務に時間を取られて、ECのプロモーションなどにはあまり手が回らない状態だったのですが、効率的にECサイトの運営を行うことができるようになり、販促部分にも注力できるようになりました。