楽天IDを使い、ECサイトや実店舗で決済を行えるID決済サービス「楽天ペイ」。2008年にEC向けのサービスを開始し、2016年10月には実店舗向けにアプリ決済の提供を始めた。2019年に個人間送金機能を追加するほか、将来的には楽天グループが手掛けるさまざまなサービスとの連携も視野に入れている。楽天は今後、楽天ペイ事業をどのように進めていくのか。楽天ペイが可能にする新しいお金の流れとは。楽天ペイ事業部でシニアマネージャーをつとめる諸伏勇人さんに話を聞いた。
楽天IDの利用範囲を“ECからリアルへ”
「実店舗向けに楽天ペイ(アプリ決済)を開始した目的のひとつは、 ECからリアルへ進出すること。それまでオンラインに限られていた楽天IDによる決済が実店舗でも使えるようになれば、楽天会員にとって買い物がより便利になると考えました」
ECからリアルへ──。それはつまり、“楽天エコシステム”の拡大を意味する。楽天は現在、EC、フィンテック、デジタルコンテンツ、通信など、70種類を超えるサービスを展開しており、楽天IDを軸にそれらを結び付けることで独自のエコシステムを作り出している。楽天がリアルへ領域を広げていくうえで、重要な役割を担っているのが楽天ペイだ。
楽天ペイは2017年10月時点で、ECサイトではおよそ5,000店舗が導入。実店舗(アプリ決済)では、コンビニ大手の「ローソン」や居酒屋チェーンの「白木屋」「魚民」「笑笑」、宅配の「PIZZA-LA」、紳士服チェーンの「AOKI」、アパレルの「Right-on」や「ANAP」といったブランドや企業が導入している。また、楽天市場に出店しているEC事業者がオフラインでイベントを行う際にも、楽天ペイ(アプリ決済)が使われている。
楽天ペイ(アプリ決済)を実店舗で利用する際には大きくふたつの方法があり、どちらも楽天ペイの専用アプリを使う。ユーザーがスマホの画面にバーコードなどを表示し、加盟店がそのコードを読み込むと決済が完了する方法。もしくは、店舗側がタブレット端末や紙で二次元コードを表示し、ユーザーがスマホで二次元コードを読み込む形である。
「2016年に楽天ペイ(アプリ決済)を開始してから、加盟店のニーズにマッチしたサービスを提供してきました。店舗がコードを読んで決済するためには、スキャナーやPOSレジなどが必要になりますが、中小規模のお店ではそれらを持っていない方も多かった。そのため、そういった加盟店さんにはタブレットで二次元コードを作っていただき、それをユーザーが読むという形で提供していました。ですが事業者さんの中には、ご高齢でタブレットが重いと感じる方やタブレットがないという方もたくさんいらっしゃった。そこで2017年の10月に、二次元コードを紙で表示し、ユーザーに読み込んでもらう方法をスタートしました。キャッシュレス化が進む中国に何度も足を運ぶ中でこの方法が求められていると学び、取り入れたやりかたです。加盟店が読み込むか、ユーザーが読み込むかは、加盟店のニーズに合わせて選んでいただいています」