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季刊ECzine vol.06 定点観測

中国のニューリテールが示す 日本のオムニの進むべき道


 EC事業者がおさえておきたい、13のテクノロジー関連トピックスの「定点観測」。オムニチャネルコンサルタントの逸見さんに、オムニチャネルについて聞きました。※本記事は、2018年9月25日刊行の『季刊ECzine vol.06』に掲載したものです。

5月に上海視察 ニューリテール体験談

 5月に4日間、上海にニューリテール視察に出かけた逸見さん。アメリカ、ヨーロッパには定期的に視察に出かけていたが、2018年になり、「中国に行かなくては」と思うようになったと言う。たとえば、中国の老舗小売大手として知られる「百聯集団」は、データ分析やポップアップストアなど、リテールテクノロジー系のスタートアップ企業への投資を行ったり、生鮮食品を販売する無人スーパー「RISO」を実験的に展開したりしている。

「百聯集団さんにRISOを紹介していただいてまず驚いたのは、焼き立てパンのコーナーでした。中国で焼き立てパン?と思うかもしれませんが、中国の小麦輸入量は増えていて、パン食に切り替わっているんです。ほかにもこだわりの輸入食品があり、価格も安くはせず売っている。高級スーパーなわけです。こだわり食材のほか、スマホ決済できるイートインコーナーもあれば、ネットで注文が入ったら30分で宅配するサービスも行っています」

 上海の最近の特徴のひとつが、フードデリバリーが当たり前になっていること。オフィスに勤務する人たちは、ランチの際によく利用すると言う。配送コストが安いことも大きい。

「ランチデリバリーは、セキュリティの問題などもあり、オフィスの中にいる個々人に届けるのがたいへんですよね。だからオフィス側も心得たもので、1階に折りたたみ式のテーブルを置いておいて、お昼時にそれを組み立てて並べます。デリバリーで運んできた人は、そこに置き、置いたことをアプリや電話で伝える。注文した人はアプリの通知を見て、1階まで取りに行くという流れです。もちろん、決済はAlipayやWeChatPayなど、アプリで済ませています。サイトに掲載してある料理の写真もクオリティが高く、配送パッケージもこぼれないようにこだわっているんですよね」

 上海で逸見さんが感心したのは、「とにかく商売を始めてしまうこと」。無人コンビニの「簡24」視察では、当初訪問する予定だった1号店がシステムダウンして入れないため、3号店に行くことになったと言う。

「システムダウンした1号店では、スタッフがWeChatPayやAlipayで決済をしていました。『無人コンビニ』ではなくなっているという(笑)。3号店では、10人で入ったら全員を顔認証しきれずダウン。さらに、レジを通過しない商品があったので、スタッフの人に決済し直してもらったりしました。日本だったらありえないと思うのですが、上海では、お客さんも『そんなものよね』という具合に受け入れていました。こういった状態であっても、実際に商売の場で使ったほうがサービスの進化は早い。『無人』にフォーカスされますが、本来の目的はレジに並ばずにラクに買い物ができる店だということ。中国では、それほど高度な技術を使っているわけではありません。目的が達せられるなら、Amazon Goのような高度なセンサーはなくてもいいわけです」

 ちなみに、アリババも生鮮食品スーパー「盒馬鮮生」を展開。オーガニックを謳った食品が並び、生きた海鮮を購入するとその場で調理してくれ、イートインスペースを利用して食事をすることができる。ほかにもスターバックスコーヒーの実店舗では、豆の焙煎の様子を見せ、アプリで説明を補足していると言う。

「単にデジタル化しているのではなく、デジタルを活用して買い物の空間を作っている。ものの選びかた、買いかたが変わり、買い物を楽しめるようになってきているんです」

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