余剰在庫が多すぎる ロジカルに考え適正に
オープンロジでは面倒な物流業務をウェブ上の管理画面から倉庫会社に委託管理できるプラットフォームを提供しているが、9月在庫分析が行える新機能をリリースする予定だ。まずは、過去の販売実績をもとに計算し倉庫にあと何日分の販売在庫があるのかを見る「在庫日数」からスタート。今後も、指標を増やしていく予定だ。伊藤さんは、クライアントの在庫管理の様子を見聞きするにつけ、課題を感じていたと言う。
「過剰に在庫を抱えていらっしゃるクライアントが多い。その理由が知りたくてインタビューを重ねたところ、在庫についてロジカルな根拠があるわけではなく、前回の発注実績などを見ながらも結局は『なんとなく』なのだとわかりました。中小企業ほど在庫管理のリテラシーは、上げていく余地がまだまだあると思います。過剰在庫の問題を解決すれば、EC事業そのもののキャッシュフローを改善することができます。在庫を適正に管理することは、デメリットの解消にとどまらず、メリットも大きいのです」
具体的には、どのように改善していったらいいのだろうか。
「単純に考えると、メーカーや工場から次に納品されるまでの期間に、販売するのに十分な在庫があればいいわけです。つまり、次の納品が2ヵ月後なら、2ヵ月分の在庫数とキャンペーン等を実施する予定があれば、その分の安全在庫をプラスして確保すればよいことになる」
中小企業はリソースも限られているので、すべての商品を在庫管理するより、まずは「ABC分析」を行い、売上の大きい商品を重点的に管理するやりかたでもよいと言う。その際に見るべき指標は「在庫回転率」と「交差比率(在庫回転率に粗利益率をかけたもの)」のふたつだ。
「なんとなくの在庫管理をしている場合、販売金額だけ見て『この商品売れているから、たくさん発注しよう』という考えになりがちですが、その商品がどれだけ回転しているのか、粗利も含めて儲かる商品なのかを見ないと、ビジネスとして最適な判断ができません」
こうした指標に基づいて管理している専任の担当者は、中小規模のEC事業者にはほぼおらず、大手企業であっても、都度Excelで計算しているのが実態ではないかと伊藤さんは言う。オープンロジが管理画面に在庫分析機能を実装する理由は、在庫管理が行える適切なソフトウェアが見つからなかったというのも理由らしい。
「大手企業の場合、3PL側からサービスとして適正在庫を提案されることもあるようです。しかしそれは、毎週、毎月のように定期的な分析レポートが行われるわけではなく、あくまで無償のサービスの域を出ていないようです。さらに、委託されている倉庫の立場から見ると、『保管料』も重要な収入源のひとつです。それは在庫が多いほど増えるので、積極的に提案するところも少ない。こういった事情も、在庫管理のリテラシーが上がっていかないひとつの理由だと見ています」
なお、Amazonのセラーセントラルでは、在庫補充のアラートを自動で受信できるようになっている。伊藤さんはAmazonがロジカルに在庫管理を行う姿勢を評価し、自社のクライアントにも取り入れてもらうべく、今回の機能実装に至っている。最近では、AIによる需要予測というトピックスも出てきているが、「自社のデータでは分析できても、競合が急に新商品を出してくる場合もあります。実務で利用するのは相当まだハードルが高いのでは」と伊藤さんは言う。