オムニチャネルは「売る」に限定せず「体験」まで考えるべき
前回はオムニチャネルの誤解を解くため、顧客はほぼリアル店舗で買っているという事実を、調査データとともに提示しました。
顧客が買い物をするのにはさまざまな理由がありますが、我々企業側は、どのような買い物であっても顧客のパートナーであるべきです。パートナーを支援するために、オムニチャネル化による購買体験の最大化が必要になります。ですから、オムニチャネルはパートナーである顧客を支援するひとつの手段であり、目的ではありません。
ただし、インターネットとスマートフォンの登場によって情報があふれ、消費者が選択しきれなくなっています。企業はオムニチャネル化にチャレンジしていかないと、パートナーとして選んでもらえなくなるといったことをお伝えしました。
今回は、オムニチャネルのひとつのキーとなる購買体験について書いていきます。
筆者はコメ兵において、「リアル店舗」と「EC」というふたつのチャネルを中心に、オムニチャネルを推進してきました。そのため本稿でも、このふたつを中心に話を進めていきます。ただし、本質的な部分は他のチャネルについても同じですので、エッセンスはお使いいただけると思っています。今回もどうぞ最後までお付き合いください。
オムニチャネルとは、顧客を中心にチャネルを統合することによって、いつでもどこでも好きな時に好きなものを購入できる状態だと言われます。しかし購入だけで考えてしまうと、それは物を売る「オムニチャネル・コマース」でしかありません。本来の目的は、事業をより大きくすることでした。
オムニチャネルをもう少し広く考えてみると、顧客を中心としたさまざまなチャネルで「商品を販売する」だけではなく、情報の提供や体験の提供まで含まれると言えるでしょう。
したがって本質は、購買チャネルの統合ではなく、すべてのチャネルでの一貫したブランドの体験を提供することです。顧客がその企業から受ける体験のオムニチャネル化であると言えます。