「オフラインの数値計測の壁」を突破できるか?
筆者は、店舗から始まった企業で2000年からEC事業に取り組んでいます。リアル店舗の売り場では、販売員の販売スキルに頼ることが多く、顧客との接点において仕組み化がなされていません。ECの運用では当たり前に行っている数値管理を、リアル店舗の場に活かせないか?と考えるようになりました。
オフラインの数値管理は、施策の成果やオムニチャネルにおける人事評価においてはもちろん、オムニチャネルにおいて重要なUX(顧客の店舗での体験)を「売上を上げる」という視点で向上させるためにも必須だと考えます。
広告等のオンライン施策でリアル店舗に送客するO2O(Online to Offline)の視点では、2017年中頃から、施策の成果を計測することが可能になってきました。サイバーエージェント社が実施した「国内O2O広告の市場動向調査」によると、O2O広告計測は現在60億円程度ですが、2023年には1,600億円を超えるという試算が出ています。このように大幅な成長が見込まれる背景には、IoTなどテクノロジーの進化が大きく貢献しています。
現時点でのO2O計測は、まだ広告分野での活用にとどまっており、また、実数値との乖離がありその原因も明確になっていませんが、今後は改善され、精緻な数値が計測できるようになってゆくでしょう。
現時点でオンラインとオフラインをつなぐ施策の成果を計測するのに有効な手法は、以下の3つです。
- アクション計測方式
- インセンティブ計測方式
- アプリ計測方式
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アクション計測方式
ECサイト上に表示された実店舗の在庫を顧客がオンライン上で予約し、店舗で販売した際にPOSレジに登録、そのデータを基幹システムと連携することで計測する仕組みです。最近では、アパレル企業で非常に多く見られるようになりました。
この方法は、どこまでサービスをするかで実施難易度が変わってきます。実際のところは、「ECで店舗在庫のみを表示できる方法」「顧客の希望店舗で商品を移動させて手に取ることができる方法」が中心になるでしょうが、後者の場合、実施難易度は一気に上がります。理由は、社内の業務を行う関係者が増えるからです。
顧客の希望店舗で商品を手に取ることができるようにするためには、倉庫から店舗、A店舗からB店舗へといったように商品を移動させる必要が出るため、オペレーションがかなり煩雑になります。顧客、在庫店舗、受け店舗、コンタクトセンターなど、少なくとも4者がからむ施策になります。商品と顧客のステイタスをITで管理するのは必須となるため、比較的大きな投資が必要になるでしょう。
なお、コメ兵ではこの方式を採用しており、EC上で在庫店舗の掲出し、顧客が希望の店舗で確認できるような仕組みを取っています。