「じゃ、ECで!」の前におさえておきたい
95%がリアル店舗で買っているという事実
インターネット、スマートフォンの出現により世界は変わりました。ユーザーは時間的な制約と空間的な制約を考えることなく、リアルとデジタルの世界を行き来することができるようになり、物を買うという行動自体も同じくシームレスになっている”はず”です。しかしながら、いまだこのシームレスを実現できている企業はとても少ないのではないでしょうか。
現時点での、小売業の状況を見てみましょう。経済産業省の統計「平成29年小売業販売を振り返る」によると、2017年の小売業全体はおおよそ142.5兆円です。
次に、Eコマースに限って見てみましょう。通販新聞社の「第68回通販・通教売上高ランキング」によると、EC事業者のトップはアマゾンジャパンで1.17兆円です。2位以下は、アスクル(BtoB)3,359億円、ミスミ(BtoB)2,590億円、ジャパネットホールディングス1,783億円と、Amazonのひとり勝ち状態です。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、BtoBも、BtoCも、EC市場は成長を続けています。リアル店舗が中心の小売業は、イオン、セブン&アイ、ファーストリテイリング(ユニクロ)と、錚々たる顔ぶれが並びます。これからわかりやすい成長が見えるのは、デジタルのほうかもしれません。しかしここで重要なのは、「じゃ、ECで!」と脊髄反射をしないこと。
たとえAmazonであっても、ユーザーにとっては、もしかしたらリアル店舗(それも、Amazon Goのようなハイテクな店舗ではなく、販売員のいる従来ながらの店舗)もあったほうがより便利かもしれません。「電子商取引に関する市場調査」を見ればわかるとおり、伸びているとはいえ、EC化率は5.79%です。つまり約95%は、いまだにリアル店舗を利用しているのです。
決してリアルかECのどちらかだけを選択したり、強化したりする方向には向かってはいけません。なぜなら、リアル店舗でしか買わない人はいても、ECでしか買わないという人はいないからです。
顧客視点に立ったときに、両方を好きなように使ってもらえる環境を用意する。ECが入ってきたことにより、「より楽しく」「より簡単」「より短時間」といったことのうち、お客様がどれを求めるのかは、扱う商品やお店によって異なります。事業者は、お客様の要求に応えていくだけ。そのために、リアル店舗もECも豊かにしていくという考えかたが重要です。
デジタルシフト、オムニチャネル……。すべての業界で騒がれている言葉があると思います。たとえば、「デジタルマーケティング」という言葉ひとつとっても、マーケティングの一部でしかありません。マーケティングがデジタル化してきているにすぎず、それをわざわざ分けて考える必要はないのです。大切なのはテクノロジーではなく、テクノロジーをどう使うかだと言えます。