中国のEC最大手、アリババグループの会長ジャック・マー氏は、2016年秋の同社カンファレンスで、10~20年後にはECの時代が終わり、オンラインとオフライン、物流が融合した「ニューリテール(新しい小売)」の時代が来ると発言した。スマホを持って入店するだけでレジも通さずに買い物ができるAmazon Goは、この「ニューリテール」を象徴するような存在だ。
こうした流れを受けて、日本の小売業界にも大きな変化の波がやって来るだろう。そこで、ハンズラボ株式会社を起ち上げ、「小売に特化したITソリューション」に取り組んできた長谷川秀樹さんに、小売業界のこれからについて話をうかがった。
日本でも広がっていく無人店舗
2018年1月、「ニューリテール」時代の到来を告げるように、Amazon Go 1号店がシアトルにオープンした。Amazonの動きを受けて、日本でも無人店舗が広がっていくだろうと長谷川さんは考えている。実際に、工業用間接資材の通販を行っている「MonotaRO(モノタロウ)」が、バーコードスキャンで決済する無人店舗をオープンしたり、ローソンが無人レジ店舗の導入を計画したりといった動きが出始めている。「各リテーラーが一気に無人店舗のほうに行く可能性があると思います。 Amazon Goまではいかないにしても、アプリでスキャンしてそのまま決済するといったことは進むでしょう。よく考えてみれば、誰しもレジには並びたくないし、お金を払うのもめんどうなんです。単に小売業の都合だけであったのが、今後ぐぐっと変わっていく気はしています。ただし無人化にあたっては、レジの手間を消費者に押し付けているだけだと思われないように、人件費を削減した分をポイントなどで還元していくことが必要かなと思います」
無人店舗というと真っ先に懸念されるのが万引きなどの防犯上の問題だが、「対面販売でも万引きは起こるし、実際にはあまり変わらないだろう」と語る。
「何人かの店長と話してみても『スキャンだろうがレジだろうが、方式が変わっても悪事をはたらこうとする人はいなくならないと思う』と言っていて、確かにそうだなと。無人店舗に対して漠然とリスクを感じているだけで、実際に導入されればあとは慣れの問題でしょう」
たとえば、ECで普及している後払い決済もリスクは同じようなものだと長谷川さんは言う。未回収リスクがある後払い決済は代行サービスを利用する場合も多いが、自らリスクを取って導入するEC事業者もいる。それは、振込確認を待って発送することで生じる物流倉庫代や煩雑なオペレーションといったコストと、後払い可能なことによる売上へのプラスの影響、代行業者への手数料などをトータルで比較した結果、リスクを取ってでも後払い決済を導入したほうがよいと考えるからだ。
「以前は後払いなんて考えられなかったのですが、大手が導入しはじめてメジャーになっていくと広がっていく。無人店舗についても同じようなものだと思います」