マスから個、モノ売りからコト売りへ デジタルマーケティングの変化
――御社ではさまざまな企業とお付き合いがあると思いますが、デジタルマーケティング界隈で何か変化は感じていらっしゃいますか。
吉元 いわゆるナショナルクライアントと呼ばれるような規模のお客様においては、著名人を起用して大々的にプロモーションを行えば売れるといった時代があったと思います。それでうまくいっていたこともあり、なかなか「個」でお客様を捉えるという視点をお持ちではなかったのかもしれません。
しかし最近では、それでは時代に取り残されると考える企業様も多くなってきたように思います。デジタルマーケティングにおける最大の利点は、「個」に対するターゲティングにあると言えますが、それを最大限活用しようという機運が高まっているのを感じます。
――デジタルマーケティングにおいて、昨今のキーワードである「カスタマージャーニー」を重要視されているということですが、それはどういった理由からでしょうか。
吉元 我々はよく「デザインシンキング」というセッションを実施するのですが、その際に、ペルソナを作ってカスタマージャーニーを描くということを必ずやります。ひとりのお客様を想定し、その人がどういった日常を過ごしているのか、自社製品とどういった接点があって、いつ感情が高ぶったりストレスを感じたりするのか、といったところまで細かく想像していくと、これまで漠然としていた「自社の顧客像」がはっきりと見えてきます。そういった体験をしていただくことで、自分たちができることやお客様にとっての最善策を考えられるようになると思います。
濱本 顧客が購入に至るには、文脈が重要ですよね。Hybrisではコンテクスチュアルマーケティングと言っています。ひとことで言ってしまえば「モノ売りからコト売り」となりますが、今までモノを売ってきた企業も、今後はデジタルを使ってコト、サービスを売る時代になっています。
ランニングアプリを例に挙げれば、スポーツメーカーはこれまで、デパートやスポーツ店に商品を卸していたため、顧客の情報をダイレクトに取得することは難しかった。それが今では多くの付帯情報を取得できているのはもちろん、顧客に新しい体験と習慣まで生み出しました。私個人も、走るということよりも走った結果が見えるという体験を手に入れてしまったので、もうアプリを起動しないと走る気がしないし、何かの拍子にデータが消えてしまうと、自分が走った意味までなくなった気分になるほどです。
――最後に、Hybrisやオムニチャネルを検討されている企業の方にメッセージをお願いします。
吉元 Hybrisの本質は、コマースで言えばフロントエンドではなく、実はバックエンドの在庫や価格の一元化や整合性の担保であり、マーケティングで言えばメールやSNSの配信といったフロントよりもカスタマージャーニーを捉えるための顧客データの収集と解析なのです。
Hybrisは真のオムニチャネルを実現するためのプラットフォームを目指しています。ただ現実はデータをつなぐだけで精一杯で、効果的なオムニチャネルやマーケティングの施策が実現できずに困っている企業も多いように思います。
先日あるお客様がおっしゃっていたのが印象的でしたが、デジタルで一度失敗した企業はHybrisの良さが改めてよくわかるとのことでした。しっかりとした土台を準備することは、遠回りのようで実は近道なのかもしれません。(了)
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