MAはバズワードではなく、必然的に定着したマーケツール
――「MA」という言葉がだいぶ定着してきたように感じます。
「MA」という言葉が一般的に使われるようになったのは、ここ1~2年の印象があります。ただし、BtoC向けのMAは1990年代から少しずつ日本でも導入されていて、キャンペーン・マネジメント・システムと呼ばれてきました。BtoB向けと区別するためにクロスチャネル・キャンペーンマネジメント(CCCM)と呼ぶこともあります。今、日本で急速にMAが広がっているのは、MAそのものというより、MAが実現する「One-to-Oneマーケティング」が必要とされているからです。
ECで言えば、メルマガを送るだけで売上が上がる時期もたしかにありました。しかし、多くの事業者が大量に配信することによって、それが鬱陶しいと感じるユーザーも出てきました。これまでどおりのメルマガ配信では、送り手のメッセージが届きにくくなっているのが現状です。顧客1人ひとりに最適なタイミングを計り、配信する必要が出てきた。そのタイミングで、MAツールを保有する大手海外ベンダーが国内に流入してきたのです。
MAと言うと、とかくバズワード的に思われがちですが、このように必要とされる背景があるわけです。マーケティングの流れそのものが、顧客中心、カスタマーセントリックな方向に向かっているということではないでしょうか。
――「MA」にはどのくらいの分類があるのでしょうか。
まず、BtoBとBtoCでは利用目的が違うので、分けて考えたほうがいいと思います。BtoC向けで今、国内でMAと呼ばれているものは、大まかに3種類あるのではないかと思います。
ひとつめは、1990年代から「キャンペーン・マネジメント・システム」という名称で国内でも導入されてきた、主にオンプレミス型のものです。メール配信などは、既存のメール配信システムを接続して実施します。高度なデータ処理によるセグメンテーションが得意で高機能ですが、オンプレミスなので導入や運用の負荷が高い印象があります。
ふたつめは、ここ数年で上陸してきたグローバルベンダーの製品に代表される、クラウド型のMAです。多くはEメールマーケティングのソリューションだったものがシナリオの自動配信機能を備え、メール以外のチャネルにも対応してMAと呼ばれるようになりました。最近話題に上るMAは、このタイプのものが多いです。
3つめは、ある程度機能を絞って提供しているもの。チャネルをメールだけに限定したり、ECでのカート放棄フォローメールや、購入者フォローメールのような「鉄板施策」だけに機能を限定していたりします。拡張性や自由度は限られても、手軽に導入できるというコンセプトです。
ただ、MAをそれ単体で語るのは難しくなってきていて、最近の大手グローバルベンダーは、MAを核にして分析ツールやレコメンドエンジンなど、さまざまなマーケティングツールをまとめて「マーケティングクラウド」として提供するようになっています。さらに、そのマーケティングクラウドは、店舗運営の仕組みや営業支援、コールセンターなどのシステムとも連繋して、オムニチャネルで一貫した顧客体験を実現しよう、という動きになってきています。