上場11年で初の配当、BEENOSの経営状況をチェック!
BEENOSの旧社名は、ネットプライスドットコム。Eコマース事業で出発し、現在は起業家支援、いわゆるインキュベーション事業も手がける。
ネット企業としてはよくあるパターンだが、同社が展開するEコマース事業は、仕入品を販売するというビジネスモデルとは異なる。
日本のECサイトで購入した商品を海外に転送する「tenso」や、代理購入サービスの「Buyee」を運営。tensoは国内約800サイトの海外発送をサポートしているように、業界の先駆け的存在であり、台湾では台湾ファミリーマートで受け取れるサービスもスタートさせた。米イーベイと提携し運営する「sekaimon」では、世界中の商品を日本に居ながら購入できる。”世界(クロスボーダー)”を意識したビジネスモデルといっていいだろう。
テレビCMで知名度がアップした「ブランディア(Brandear)」は、宅配便を活用してブランド品を買取り、メンテナンス後にネットオークションなどのチャンネルを通じて販売するというように、「CtoBtoC」モデルによるネット買取販売事業である。
インキュベーション事業では、インド、インドネシア、トルコなどの企業に注目、投資に見合う確実なリターンの獲得を目指している。
ただし、BEENOSの業績は、長らく低迷していたといっていいだろう。表にあるように11年9月期以降、利益剰余金が赤字で推移してきたことでも明らかだ。
BEENOS、過去5年の売上高、純利益、利益剰余金の推移
利益剰余金は、「資産=負債+純資本」で示されるバランスシートの「純資本の部」に計上される。いわゆる、内部留保と呼ばれるものだ。必ずしも現金や預金での保有ではないが、創業からの利益の蓄積を示しており、企業業績を知る重要指標のひとつである。
事実、JAL(9201)やスカイマークが経営破綻に追い込まれたときの利益剰余金は赤字。およそ1兆8,000億円まで利益剰余金の黒字を積み上げていた東京電力(9501)は、福島原発事故をきっかけに赤字に転落したままである(16年3月期は黒字に転じる見込み)。
15年12月末現在、東芝(6502)は約1,000億円の赤字。同時期、240億円の黒字だったシャープ(6753)も、金融機関などから2,250億円の金融支援を受けたためであり、それがなかったら大幅な赤字だったはずだ。 BEENOSの場合も、売上高の減少にともない赤字体質が続いたことで、利益剰余金はマイナスで推移。14年9月期は9億円弱の赤字にまで落ち込んだ。
BEENOSの場合、借入金が少なく財務体質が比較的良好なこともあって、利益剰余金の赤字転落が経営問題に直結することはなかったが、好ましい状況でなかったことはいうまでもない。
それが14年12月期、15年3月期、15年6月期と3か月決算ごとにマイナス幅が減少し、15年9月の本決算では久しぶりに利益剰余金が黒字に浮上した。同期間、増収増益に転じたからである。
BEENOSの反転攻勢を支えたのは、子会社デファクトスタンダードが手がけるブランディア事業であることはいうまでもない。10年9月期の同事業の売上高は21億円。以後、29億円、34億円、43億円、63億円と右肩上がりで推移し、15年9月期は86億円まで伸張した。
そして販、売増につながった最大の要因といえば、冒頭で触れた効果的な広告宣伝だろう。同社の収支を1,000円の販売にたとえた表を見てもらいたい。